ご縁は1日にしてならず
カフェの奥、ドスドスと足音を響かせてあらわれたのはーー
太い腕、長いくせ毛を無造作に束ねて、髭は三つ編み。
紛れもないドワーフ。
「バルクだ。よろしくな」
どっかと椅子に座った。
「カツミです。よろしく」
そこに私のオレンジジュースが運ばれてきた。
バルクに目をやる黄色いタギッチ。
「おー。ワシはいらん」
タギッチは会釈して下がっていった。
すごい。なんかわからん圧がある。
「あの、バルクさんはドワーフ?」
「そうじゃ。鍛冶屋をやっておる」
あ、あそこにあったな。結構大きかったな。
「職人は10人くらいおるな。城とも取引がある」
すご。
「まぁ信用じゃよ。腕と信用じゃ」
なるほど。なんか頼もしい。
でも
でも
じいさんじゃん!
ドワーフって、長命種だったっけ?
おいくつ?って聞きたいけど...怖い。
その時頭の中で黄色いランプが付いた。
あれ?これって。違和感センサー?黄色?
何だろう。
そう言うと、
ちょっと着てるものがしょぼくない?親方なのに。
ドワーフだよなー。
もしや。
「お酒、お強いんですよね」
「ガッハッハー。まぁ水みたいなもんじゃ」
あーやっぱり。
道理でちょっと酒臭い。
カフェでのお茶が一番似合わんタイプ。
これ...稼いでも呑んじゃうんだろうな。
まいったなぁ。
と思っていると、ドアの開く音。
「親方ー。ちょっとすんません」
「ん?なんじゃ?」
出ていったバルクは何やら話している。
どうよ、マシロ。
目で聞くとマシロは目を伏せた。
あ、戻ってきた。
「すまんが、ちょっとトラブル発生でな、店に戻らにゃならん。」
バルクが立ち上がる。
……でかい。
「代わりと言うてはなんじゃが」
ごそごそと懐から何か出した。
「これ、持って帰ってええぞ」
机に置かれたのは――
でかい鉄の塊。
「……何ですかこれ」
「試作品じゃ。重さは愛情じゃ」
「いらん」
「遠慮するな」
「いや持てませんて」
「ガッハッハー」
笑いながら去っていった。
ふー。なんか疲れた。
タギッチが来た。
そうだ、ついでに何か食べて帰ろうかな。
「ランチあります?」
「はい。今日はチキンソテーオレンジソースです」
あ、またオレンジ?
「うちのシェフ、オレンジが得意なんです」
得意って?オレンジ得意って。
まあいいか。
「じゃあそれお願いします」
あ、マシロがウルウル見上げてる。
「大盛りで」
ランチはとても美味しかった。
お会計の時にちょっと奥を覗くと、キッチンに男の人。
ピコン
*モーリー*(田道間守命)
あ。それでたちばなか。
垂仁天皇だっけか。
そっかー。
なんだかありがたいなぁ。
かしこみかしこみー。
帰りにギルドに寄った。
なんだか気が重いけど、報告しとかなあかん。
「あ、カツミさん。どうでした?」
カウンターにはスセリとクニオ。
私はクニオを睨みつけた。
「え。なんで?」
こいつ。やる気あるんか。
「頼りがい、パーフェクト♪」
「......」
「カツミさん、お気に召さなかったですか?」とスセリ。
「......」
「いいと思ったんだけどなぁ」
「......なんで爺さんなんだよ!」
しまった。また声がでかくなった。
「え、ドワーフですから。あれでもまだイケイケですよ」
イケイケって。
「とにかく、お断りします」
うん、ここは冷静に。
「じゃあ次の...」
「いえ、しばらく考えてからにします」
私はクルッと振り返りギルドを出た。
雑貨屋に戻ったら、オモジイは店番?いや寝てるわ。
「只今帰りました!」
「おぉ!びっくりした。そか、帰ったか。で、どうじゃった?」
椅子から転げ落ちながら平静を装うオモジイ。
「どうもこうも。ドワーフですよ。ドワーフのじいさん」
「あぁ、あやつか。ええやつじゃよ、仕事もできるしの」
「仕事できても全部呑んじゃうんでしょ」
「ほっほー、よくわかったな」
「初めてセンサー発動しましたよ。マジびっくりです」
「まぁそうよのぉ、あんたにはまだまだ無理かもなぁ」
「もういいんです。ちょっと婚活はお休みします」
「ま、それもよかろう」
そう言うとオモジイはまた居眠りを始めた。
宿で夕飯を食べていると、テラがやってきた。
「どう?少しは慣れた?」
向かいの椅子に腰を下ろすテラ。
あー。この人、天照大御神だった。
「テラさん、どうしてこんなに神様がいるの?」
「フフっそうねぇ。ここはね」
「まぁ気まぐれで作ったんだけど」
「気まぐれですか」
「あ、あっちの世界にもちゃんとつながってるのよ、私達は」
「神様ですもんね」
「うん。でもさーここ百年くらいかな、ちょっと暇になっちゃって」
「暇ですか?」
「いろいろと発達して、お手伝いすることも減ってきてね、ほら今なんてAIだっけ、そんなものまでできちゃって」
「はぁ。」
「でね、ちょっとこっちの世界のお手伝いしようかなって思って。そしたらなんだか後から付いてきて(笑)」
「あー。なんか分かる気がします。信仰心なんて私もないし」
「いいのよ、そんなこと気にしてないわ、神ですもの。」
「ただね、私達はいつもみんなのそばにいる。それだけよ」
テラはふっと笑って立ち上がった。
あ、私、なんだかここで生きていけそうだ。
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=田道間守命=
不老不死の果実を求め、常世の国へ旅立った神。
橘を持ち帰ったことから、菓子や食に縁のある存在とされる。




