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神は心に降りてくる


今日はカレー屋の日。

いつものように台所でカレーを仕込んでいると、タケシが顔を出した。

ふーっと鼻で息を吸い込んで、ニヤッと笑った。

「うまそう」

「食べる?」

「いや、店で食う。

馬車が直ってきたから」

「え。送ってくれるの?」

「おう」

「やったー」


今日、家に帰るという。

もう体調は良さそうだけど、ちょっとさびしいな。

「納期が迫ってるんだ。

それにこの馬車も整備し直す。適当に直しやがって」

そうだ。仕事しなきゃだよね。

「うん、頑張って」

店に着くと、開店準備を手伝ってくれた。

そして1番にカレーを食べ、家に帰って行った。

手を振るカツミをオモジイとクニオが眺めていた。

「久々のヒットだよねー」

「そうじゃな」


翌週、カレー屋の準備をしていると、タケシの馬車が通りかかった。後ろにもう1台馬車が繋いである。

「納品してから来るから」

「はーい」

そろそろ閉店だな。と思っていたら、やっとタケシが現れた。

「遅くなった、まだある?」

「うん」

はい。ちゃんと取ってありますよ。

食べ終えるとタケシは店の片付けを手伝い、馬車に荷物を積んだ。

「時間、あるよな」

「うん」

「ちょっと走ろう」

あ。ドライブデート?やったー。

御者台に並んで座る。

馬の鞍の上にカースケが止まって、時々羽根を片方広げる。

するとタケシはその羽根の方向に曲がる。

「優秀なナビだね」

「ああ。おれ方向音痴なんだ。

森で迷子になって、カースケに助けられた」

「迷子のおっさん?」

「いや、マジでもうアカンと思った。

それ以来やな、カースケナビ」


「なぁ」

「ん?」

「俺のとこに......」

「ん?」

「来てくれ」

「......うん」

「カァー」

「ナビ優秀や」

「きゅるん」

「あんたも優秀やで」






今日。宿を引き払う。

テラが来た。

「カツミちゃん、ちょっとこっちに来て」

「はーい」

部屋に行くと見知らぬ女の人。

その奥に、真っ白なドレスが。

「あなたね。これ着てちょうだい」

「え?」

「早く!お直しするから」

ピコン♪

*ウズメ*(天之鈿女命)

えー。テラさん、何これー。

「私達からのプレゼントよ。

ほらさっさと着て。ウズメがちゃんと合わせてくれるから」

そうだ、この縦ロールの髪。あの高そうな服屋にいた人だ。

「いいんですか?すごく高そうなんだけど」

「うちの服はオートクチュールよ。高いに決まってるじゃない」

「いいのいいの。ウズメ、早くして」

結局ドレスを着せられた。

「あら、いいじゃない、ねえウズメ」

「まぁ、馬子にも衣裳ね」

「カツミちゃん。きれいよ。

さぁ。王子様がお待ちよ」


宿の外には黒い馬車。

白いタキシードのタケシが恥ずかしそうに立っていた。

私を見て、ぱっと顔を赤らめたけど、私にはシルクハットのタケシが、本物の王子様に見えた。



ギルドに行くと、巫女姿のスセリ、そして鏡の前でこちらを向いている白装束のクニオ。

2人でクニオの前にひざまずく。


クニオが、静かに手を上げた。

「これより、契りの儀を執り行う」

いつもとは違う声。 空気がすっと変わる。

鏡が、ふわっと光った。

「神は、清き心に住まう」

クニオの声が、静かに響く。

「心をもって、契りとする」

スセリが、鈴を鳴らす。

ちりん、と小さな音。


「では、誓いの口づけを」

あれ?そんなのあったっけ?

「誓いの口づけを」

あ。クニオ笑ってる。

こいつ。元に戻ってる。

タケシが私の肩に手を添えた。

目をつぶった。


外に出ると、神様たちが集まっていた。

「おめでとうー」

花びらが舞う。サクヤだ。

オモジイが小箱を差し出す。

「カツミ、ワシからのプレゼントじゃ」

箱を開けるとーー。

ん?細いロープ?

「オモジイ何これ。また変なもの作ったの?」

「大丈夫じゃよ。ほれ、2人で端を持ってみい」

タケシとカツミがロープの両端をつまんでピンと伸ばすとーー

パァーッと一瞬光って消えた。2人の指、薬指にうっすら光る細いすじ。

「うむ。うまくいったな。

キズナじゃよ」

「オモジイ.......」

あかん。めっちゃ幸せやのにーー

泣いてまうやんか。










******



=天之鈿女命=


天岩戸に隠れた天照大神を外へ導くため、舞を踊って神々を笑わせ、再び世界に光を取り戻した。

芸能・舞踊の神とされ、場を明るくする力を持つ。


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