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隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

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第242話:照れ返しと、お揃いのキーホルダー

驚いて顔を戻すと、そこには顔を真っ赤にして、いたずらっぽく笑う凛の姿があった。

彼女は今、背伸びをして、俺の頬にキスをしたのだ。


「り、凛……? 今の……」


完全に不意打ちを食らい、俺は言葉を失って固まってしまった。

すると凛は、照れ隠しのように両手で自分の熱い頬を押さえながら、クスッと笑った。


「……いつかの、おでこにチューの、お返し」

「……おでこにチューって、お前、まさか……」

「うん。あの時、私、寝たふりしてたの。……朝陽くん、知らなかったでしょ?」


俺が以前、ベッドで眠っている(と思っていた)彼女のおでこに、こっそりとキスをしたあの時。

あの時、彼女は起きていて、俺の行動をすべて知っていたというのだ。


「っ……!!」


一気に顔中の血が沸騰するような恥ずかしさが押し寄せてくる。

「まじか……ずっとバレてたのかよ……」

俺はたまらず両手で顔を覆い、深くため息をついた。俺の密かな愛情表現が、最初から本人に筒抜けだったなんて。


「あははっ、朝陽くん、耳まで真っ赤! すっごく可愛い!」

「笑うな……! あー、クソッ、やられた……」


恥ずかしさでいっぱいだったが、それ以上に、こんな可愛らしい「お返し」を用意してくれていた彼女が愛おしくてたまらなかった。

俺は顔を覆っていた手をどかし、まだ笑っている凛の肩を抱き寄せると、その体をギュッと強く抱きしめた。


「きゃっ! あ、朝陽くん……?」

「……覚悟しとけよ。これからは寝たふりしてなくても、起きてる時でも容赦しないからな」

「〜〜〜っ! バカァ……!」


今度は凛が顔を真っ赤にして、俺の胸に顔を押し付けた。

二人きりのゴンドラの中には、いつまでも甘くて幸せな笑い声が響いていた。


頂上を過ぎたゴンドラは、ゆっくりと地上へ向かって降下していく。

俺たちは、先ほどの頬のキスの熱を分かち合うように、指先をしっかりと絡めて手を繋いでいた。


「……なんか、降りるのがもったいないな」

「うん……このまま、もう一周したいくらい」


地上の乗り場が近づいてくるのが、今はただひたすらに名残惜しい。

しかし、楽しい時間には必ず終わりが来る。


ガコン、と音がして、ゴンドラのドアがゆっくりと開いた。

「ありがとうございましたー!」というスタッフの明るい声と、遊園地の賑やかな音が再び耳に飛び込んでくる。


俺たちは繋いだ手を離さずに、ゆっくりとゴンドラから降り立った。

時刻はもうすぐ午後三時。

秋の風が、火照った頬に心地よく吹き抜けていく。


「さて、バスの集合時間まで、あと少しだけ時間があるな」


俺が言うと、凛は繋いだ手を嬉しそうにブンブンと振りながら、満面の笑顔を向けてきた。


「じゃあ最後は、お揃いのお土産、買いに行こっか!」

「そうだな。俺たちらしい、いいやつを探そう」


俺たちは歩幅を合わせ、楽しかった遊園地デートの締めくくりとして、カラフルな看板が立ち並ぶお土産屋さんエリアへと向かって歩き出した。


俺たちが入ったのは、パークの出口付近にある大きなお土産屋さんだった。

店内は同じように駆け込みでお土産を買おうとする生徒たちや一般のお客さんでごった返している。


「作戦会議で決めた通り、お揃いのやつ買おうね!」

「そうだな。何がいいかな」


凛は目を輝かせながら、陳列されたカラフルな商品を次々と見て回る。

お揃いのマグカップ、ペアのストラップ、お菓子の詰め合わせ。

色々あるが、どれもいまいちピンとこないらしい。


「うーん、マグカップも可愛いけど、学校に持っていけないし……」

「ボールペンとかはどうだ?」

「ボールペンもいいけど、もっとこう、『一緒!』って分かるやつがいいな」


真剣に悩む凛の後ろ姿を見守りながら、俺も棚に視線を走らせる。

と、ふと、あるコーナーが目にとまった。


「凛、これはどうだ?」

「ん? なあに?」


俺が指差したのは、少し小ぶりな動物のペアキーホルダーだった。

テディベアをモチーフにしたもので、一つはブルーのネクタイを、もう一つはピンクのリボンをつけている。

二つのキーホルダーの金具を合わせると、小さなハートの形になるという、いかにもなペアグッズだ。


「わぁ……! すっごく可愛い! 大きさもちょうどいいし、これならスクールバッグにつけても邪魔にならないね」

「ああ。これなら学校でもずっと一緒だろ」


俺がそう言うと、凛はパッと顔を輝かせて何度も頷いた。


「うんっ! これにしよう!」

「よし、じゃあお会計してくるから、少し待っててくれ」

「えっ、私も払うよ!」

「いや、これは俺に買わせて。……観覧車のお礼も兼ねてな」

「あっ……う、うん。ありがとう」


さっきのキスのことを持ち出すと、凛はまた少し顔を赤くして大人しく引き下がった。

秘密の交際をしていた頃なら、こんなあからさまなペアグッズを堂々と買うことなんて絶対にできなかった。

それが今、なんの迷いもなく選べる。その事実が、俺の心をじんわりと満たしてくれた。


お土産屋を出て、バスの集合場所である大駐車場へと向かう。

時刻は十五時十分。

すでに多くのクラスメイトたちが集まっていた。


「おっ、瀬戸! 冬月さん! お前らもギリギリじゃん!」

「大輝。お前らも今戻ったところか?」

「おう! 俺らは最後までジェットコースター乗り倒してたわ」


大輝や寺田さん、佐藤さんたちが手を振って迎えてくれる。


「冬月さん、観覧車どうだった?」

「すっごく景色綺麗だったよ! えへへ、楽しかった」


佐藤さんと楽しそうに話す凛。その時、寺田さんが凛の手元に鋭い視線を向けた。


「あれ? 冬月さん、その手の中にあるのって、もしかして……」

「あっ」


凛が手に持っていたのは、さっき買ったばかりのペアキーホルダー。

すでにパッケージから取り出し、自分のカバンにつけようとしていたところだった。

そして、俺のカバンにはすでにブルーのネクタイのくまが揺れている。


「うわーっ! お揃いのキーホルダーじゃん!!」

「まじかよ瀬戸! お前ら、完全にラブラブじゃねーか!」

「いいなー! 青春だねぇ!」


大輝たちが一斉に冷やかしてくる。

周囲のクラスメイトたちも「お揃いいいなー」「瀬戸くんたち仲良しだね」と、温かい笑顔を向けてくれた。


「ふふっ、まあな」

「えへへ……買っちゃった」


大勢の前で冷やかされるのは少し照れくさかったが、嫌な気は全くしない。

むしろ、堂々と「俺の彼女だ」と胸を張れることが誇らしかった。


「全員揃ったな! それじゃあ、出発するぞー!」


十五時十五分。

担任の先生の号令とともに、バスのドアが閉まり、ゆっくりと走り出した。

帰りももちろん、俺の隣には凛が座っている。


窓の外は本格的に夕暮れ時になり、オレンジ色の西日が車内を柔らかく照らし始めた。

行きはあんなに賑やかだった車内も、バスが高速道路に乗る頃には、遊び疲れた生徒たちの寝息と、かすかなエンジン音だけが響く静かな空間になっていた。


「……ふぁ」


隣で、凛が小さくあくびをする。


「疲れただろ。寝てていいぞ」

「うん……。朝陽くん、今日は本当に楽しかった。……ありがとう」


凛はそう呟くと、こてんと俺の右肩に頭を乗せてきた。

そして数分も経たないうちに、すー、すー、という規則正しい寝息が聞こえ始めた。


俺は少しだけ首を傾け、自分の肩で安心しきったように眠る凛の寝顔を見つめる。

彼女のスクールバッグにはピンクのリボンのくまが、俺のバッグにはブルーのネクタイのくまが、車の揺れに合わせて仲良く揺れている。


あの雨の日、ドアの前で倒れていた彼女を見つけた時は、まさかこんな未来が来るなんて想像もしていなかった。

秘密の交際を経て、みんなに祝福される公認のカップルになり、こうして堂々と遊園地デートを満喫している。


(……俺の方こそ、ありがとうな)


心の中でそう呟きながら、俺はそっと自分の頭を彼女の頭に預けた。

今日という最高の一日の余韻に浸りながら、俺もゆっくりと目を閉じた。

バスは夕日を背に受けて、俺たちの帰る街へと向かって真っ直ぐに走り続けていた。

第242話、ありがとうございました!

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