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隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

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第227話:ぐうたらと、彼氏の学習リスト

日曜日の朝。

今日は、いつもより少し遅い時間に起きた。

焼いたパンと簡単なサラダで朝食を済ませ、リビングで向かい合ってコーヒーを飲んでいた。


「……なぁ、凛。最近、なんだかずっとバタバタしてたよな」

「うん、そうだね。休日に買い物へ行ったり、学校で色々あったり……」

「だから、今日は特に予定もないし、一日ゆっくり休もうと思うんだけど、どうかな?」


俺がそう提案すると、凛はカップを両手で包み込みながら、嬉しそうにふにゃっと笑った。


「賛成。今日は徹底的にぐうたらしようね」

「ああ、そうしよう」


こうして、俺たちの休日のまったりモードが決定した。


ぐうたらすると決めても、最低限の家事はしておかないと後で困ることになる。

俺は自分の部屋の洗濯機を回した。

凛の服も一緒に洗うのが最近のデフォルトになっている。

(もちろん、下着類は凛が自分の部屋で自分で管理しているが)


「よいしょ、っと……」


ベランダに出て、洗濯物をハンガーにかけて干していく。

ふと空を見上げると、秋晴れの空の端に、少しだけ薄暗い雲が見えた気がした。


ポケットからスマホを取り出し、天気予報のアプリを開く。

すると、今日の夕方以降の予報に、水色の傘のマークがついていた。


「夕方から、少し強めの雨か……」


今はこんなに晴れているのに、本当に降るのだろうか。

とはいえ、予報は予報だ。

せっかく洗った洗濯物を濡らしてしまっては元も子もない。


「しまい忘れないようにしないとな」


独り言を呟きながら、俺は最後のタオルを干し終えて部屋の中へと戻った。


洗濯を終え、時計を見るとまだ午前十時を少し回ったところだった。

さて、何をして過ごそうかと考えていると、ソファに座っていた凛が小さく欠伸をした。


「ふぁ……私、少しお昼寝しようかな。自分の部屋、戻るね」

「わかった。ゆっくり寝ておいで」


凛を二〇二号室へ送り出し、俺は一人になったリビングのソファに腰を下ろした。

テレビをつける気分でもなかったので、ふと部屋の隅の棚に目をやる。

そこには、俺の誕生日の時に凛が買ってくれた『現実世界の恋愛もの(ラブコメ)』のライトノベルが数冊並んでいた。


「そういえば、最近バタバタしてて全然読めてなかったな」


俺はその中の一冊を手に取り、ページを開いた。


――それから、わずか十分後のことだ。


『ガチャッ』


静かだった玄関の鍵が開く音がして、二〇一号室のドアが開いた。

ひょっこりと顔を出したのは、ついさっき自分の部屋に戻ったはずの凛だった。


「どうした? 忘れ物か?」


俺が本から顔を上げて尋ねると、凛はもじもじと身をよじらせながら、恥ずかしそうに視線を落とした。


「……ううん。なんか、寂しくて……寝れない」

「……寂しい?」

「うん。……朝陽くんのベッドで、寝てもいい……?」


上目遣いでそんなことを言われて、断れるわけがない。


「……仕方ないな。いいよ」

「えへへ、ありがとう」


俺が苦笑いしながら許可を出すと、凛はトテトテと歩いてきて、俺のベッドに潜り込んだ。

安心したのか、布団に顔を半分埋めた彼女は、数分も経たないうちにスースーと穏やかな寝息を立て始めた。

俺は再びソファでラノベを読み進めた。


物語は中盤。

作中の主人公(彼氏)が、ヒロイン(彼女)を後ろから不意打ちで抱きしめ、ヒロインが顔を赤くして喜ぶという甘いシーンに差し掛かった。


「……なるほど」


俺は本から視線を外し、天井を見上げた。

今まであまり他人と深く関わらずに生きてきた俺にとって、女の子と付き合うのは凛が初めてだ。

美味しいご飯を作って喜んでもらうことはできる。

でも、それ以外の「普通の男として、彼氏として、何をしたら彼女が喜ぶのか」という引き出しが、俺には決定的に不足しているのだ。


(女の子って、後ろから抱きしめられると嬉しいのか)


俺は本を閉じ、ベッドで眠る凛の横顔を見つめた。

もし機会があったら、今度やってみよう。

そんなことを思いながら、俺の脳内では密かに『凛にやってあげたいリスト』の作成が始まっていた。


一つ。後ろからのハグ。

一つ。俺があぐらをかいて床に座っている時に、俺の足の間に凛をすっぽりと座らせるやつ。(これは後ろからのハグの進化系のようなもので、密着度が高そうだ)。


「……こういうの、いいな。いつかやってみたい」


一人で小さく呟きながら、俺は再びラノベのページをめくった。

すると、次の章の終わりで、主人公とヒロインの『キスシーン』が描写されていた。

唇ではなく、ほっぺたへのキス。


(……キス、か)


俺はゴクリと唾を飲み込み、再びベッドで眠る凛を見た。

唇はさすがにハードルが高すぎる。

でも、ほっぺたにチュッとするくらいなら、あるいは、おでこにキスするくらいなら、今の俺でもできるんじゃないか?


(……寝てる間にしたら、怒られるかな)


無防備な彼女の寝顔を見ていると、ふとそんな考えが頭をよぎる。

でも、すぐに俺は小さくかぶりを振った。


(……ダメだ。やっぱりこういうのは、起きてる時にちゃんとしよう)


俺は本に視線を戻し、少し熱くなった頬を手のひらで冷まして自分を落ち着かせた。


本を読みながら、頭の中で彼氏としてのシミュレーションをして色々と思い悩んでいるうちに、時間が過ぎるのはあっという間だった。

気がつけば、時計の針は正午近くを指している。


「そろそろ、お昼にするか」


俺は本をテーブルに置き、静かに立ち上がった。

そろそろ凛も起きる頃合いだろう。今日のお昼は何にしようか。ぐうたらな休日にぴったりの、簡単に作れて美味しいものを。


そんなことを考えながら、俺は冷蔵庫を開けてキッチンに立った。

外の空はまだ明るいが、夕方の雨に向けて、少しずつ雲が広がり始めていた。

第227話、ありがとうございました!

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