無理だからね!
馬車の停車場までの道のり、何故かジャラ男は私のすぐ後ろをピタリと付けて歩いている。
たまに匂いを嗅がれているような気がするのだが、気のせいだろうか。もう一人の冒険者、名前をケルビンというらしいのだが、彼は私の横やジャラ男の横を行き来して会話をしている。会話といってもジャラ男は一言も話していないのだが。
「なあ、何て名前なんだ?ほら、もし魔物が出た時に“あんた”とか“おい”だと連携が取りにくいだろ?」
「連携するつもりもないし、答える義務もない。」
あら~、つっけんどんな返事。
連携しないなら依頼受けないでよね。ただでさえ関わりたくないのに。もしかしてセレマの知り合いかしら。だとしてもあまりにも雰囲気が違い過ぎる。片やキラキラ上級職っぽくて片やザ・庶民ですもの。兄弟なわけないだろうし、ましてや親子でもないわよね。
「迷惑かけてるのは重々承知してるさ。でもこれから短いけど一緒に旅をする仲間だろ?私はさっきも言ったがケルビンだ。で、美人さんはアリスだよな。」
「あ、はい。アリスと申します。よろしくお願いいたします。」
「ここの領主の息子からの護衛依頼だなんて、アリスはどっかのお偉い貴族なのか?フードを被っててもただならない美人オーラが溢れてるけどな。カルロスがいなくて正解だな。」
カルロスとはきっとケルビンの相棒の名前だろう。
あの性病うつされた相棒ね。下半身に節操のない人はちょっとご辞退願いたいわね。ああ、エリオットのとこの護衛を思い出しちゃったわ、気分悪っ。
「君は魔族なのか?」
ジャラ男が唐突に話し掛けてきた。
目が怖いのよ~、睨んでるつもりはないんでしょうけど。神族と魔族ってこのゲームでは敵対関係なのかしら。正直に答えた方がいいのかな。でも姿を変えるなんて高等な魔法使うんだったら私の種族もバレてる可能性があるわよね。変に隠してねちねち絡まれても困るし。
「はぁ、まあ魔族ですけど。」
「では君はルシファーを知っている、もしくはその関係者か?」
何ですか?ルシファーって。
そりゃこういう界隈が好きならルシファーくらい知っていますとも。堕天使でしょ?色んなお話が創作されてるし、大概イケメンで描かれることが多い人物よね。でもこのゲームに出てきたかしら?天使なんて見たことないし、セレマくらいしか思いつかない。でも絶対にセレマじゃないよね。あれがルシファーだったら色んな方面からクレーム来るでしょ。
「知らないです。」
そう答えたけど、めっちゃ見てくるじゃん。
嘘なんかついてませんよ。
「そうか。」
何この沈黙。
話を広げなさいよ。コミュ障か!
「ねぇ、あなた名前は?どこから来たの?」
ジャラ男は“エル”とだけ答えて視線を外した。
なんですか?コードネーム?本名?別にどっちでもいいけどさ、この絶対神族のジャラ男ことエルと関わっていいのかしら。なんかややこしい方向に話が進んだりしない?それか仲間になってくれて私の代わりに戦ってくれるとか?それか一時的な加入キャラなのかもしれないわよね。だって断るっていう選択肢がなかったように思うもの。
Bランクの冒険者とそれと同等の力があると思われる神族とのパーティー。
これはもうなんか次の街に行くまでに強敵と戦うっていうフラグなんじゃないの?イベントのための強制的なパーティーって感じよね。こういう時のキャラってめっちゃいい装備持ってたり、すごい技持ちとかが多いよね。
私はそれとなくケルビンを見た。
あ、読めないんだったわ。なんか数字しか分からない。7、7、6、8。何かのスキルのレベルなんだろうけど、それがわからない。装備だってきっと耐久値しか分からないんだろうし。ダメ元で振り返ってエルを見た。
何にも見えない。意識して見ようとすると頭がズキズキする。腹黒の時と同じだわ。ちなみに服は無限マークだった。スバルさんと一緒かい!チート野郎め!
そうこうしているうちに停車場に着いた。
商家の馬車がほとんどで、出るに出られないといったような状況ね。しかしその中には数人の護衛らしき者をつけている馬車もある。きっとうまい具合に冒険者を雇えたか、もしくは個人で護衛を雇えるくらい儲かっている事業主だろう。なんとも物々しい雰囲気だ。
そして乗り合いの馬車は一台だけしかない。あれが私たちの乗る馬車かな。無理に出させたと言う割には女性と子供、二人の男性が乗り込んでいる。冒険者が同乗するから安心だとでも思ったのかしら。危険には変わりないでしょ。
「エリオット様が言ってた冒険者ってあんたたちか?」
御者の方から私たちに近づいてきた。
ハンチング帽を被って髭を蓄えた初老の男性だ。頑固そうに見える。魔物に遭遇した時に言う事を聞いてくれるか心配だわ。
「私はケルビンと申します。シルバーの街までよろしくお願いします。」
ケルビンは深々とお辞儀をした。
うん、なかなか好感度高いじゃない?礼儀正しいのはいい事ね。私も続いて頭を下げた。で、エルは絶対に頭下げないわよね。もう目が彼らを蔑んでいるもの。慌ててエルの腕を引っ張って背中を押した。めちゃくちゃ抵抗されたけど、なんとか挨拶を済ませ馬車に乗り込む。まさかこんな形でこの街を去るとは思わなかった。
先が思いやられるわ。
正直全く知らない人たちと何時間も同じ空間にいることですら苦痛なのに、この不愛想な神族のお守までしないといけないの?
次の街の名前がシルバーだって言う事も今初めて知ったのよ。そしてシルバーの手前のビルっていう小さな宿場町で一泊しないといけないってことも。私一人で宿とか取れるの?宿帳に記入してくださいとか無理だからね!
第四章はここまでです。
読んでくださって、ありがとうございました。
次の章も少し書き始めていますが、まとまってから投稿する予定です。
しばらくは、別のお話の執筆をしております。
4月には投稿予定ですので、よろしければそちらの方もよろしくお願いします。




