オスティアーの美味しい季節です。
料理代の代わりに魚を持ってくるアクエラさんとスクアロさんが魚のオマケにある貝類も付けてきた。
すっかり忘れてた…おでんもそうだけどコレもこの時期が美味しいんだよね。
コレに関する思い出といえば…子供の頃に翔と行ったシーフードフェスでアレを食べ次の日に凄い地獄を見て以来、僕や翔はコレを生で食べるのは絶対にしなくなったけど…。
でも、生で食べるよりも遥かに美味しい調理法を僕たち日本人は知ってるからノープロブレムなんだよね♪
「テイルス!今日の昼の賄い出来たよ!」
「あの…コレって何ですか?セレナさんがいつも注文するコロッケを少し小さくしたような料理に見えますけど…」
とある日のレストラン月光、現在の時刻は昼の2時半。
今は丁度テイルスの休憩の時間であり、輝はテイルスに明日から出そうと思っている新メニューを賄いとして出したのだ。
「コレはね…カキフライ。こっちで言えばオスティアーフライって名前になるかな?」
「オ、オスティアー!?…って、あの岩みたいな貝殻で覆われて中身は白黒でプルプルとした感じのするアレ…ですよね?」
輝が料理の名前及び料理に使った食材の名前を言うとテイルスはオスティアーの見た目を思い出したのか青い顔になりながらオスティアーの特徴を述べていく。
「そうそう。そのオスティアーに薄力粉を塗し溶き卵を付け…パン粉を付けて揚げた料理だよ。僕のいた世界の日本だとこの時期にこうやって食べる事が多いんだ。レストランとか定食屋でも期間限定メニュー…として出る位にね」
輝はテイルスの質問を肯定しつつオスティアーフライの作り方を簡潔に話すと同時に日本ではこの時期にオスティアーを使ったメニューを出す料理屋は多いのだと語る。
勿論、輝と元の世界で店をやっている翔の2人にとってはトラウマともいえる料理もこの時期にやっているのだが…。
「ま、そんな事は兎も角…冷めない内に一口食べてみてよ。一応試食はしたけど向こうと味は変わらないよ?」
「は、はい…。い、いただきます…(本当に食べられるんでしょうか…?ヒカルさんは今まで食べられないような物を作った事は無いからヒカルさんの言葉を信じるしかありませんけど…)」
輝は休憩時間も理由にしてオスティアーフライを食べるように急かす。
テイルスも輝の言葉に返事をしてからいただきますの挨拶をしてから箸でオスティアーフライを恐る恐るではあるが口に運んだ。
オスティアーフライを一口齧った瞬間、テイルスの口の中でサクッと揚げ物特有の咀嚼音を立てる。
さて、オスティアーフライはテイルスの舌には…
「………!お、美味しい!!確かに…コレはヒカルさんの国で期間限定メニューで出されるのも分かる気がします!」
「でしょ?」
どうやら好評だったらしい。
数回程咀嚼して飲み込んだ後にテイルスは開口一番に満面の笑みで美味しいと言い放った。
その証拠にテイルスのチャームポイント(輝曰く)である2本の尻尾もブンブンと大きく円を描くように動いている。
「因みに故郷ではフライの他にも…和食だと天麩羅とか茶碗蒸し…冬になれば土手鍋、洋食だとパスタにアヒージョ…兎に角バリエーション豊富なんだ」
「「………じゅるり…」」
「今オスティアーフライを食ってるテイルスの奴は兎も角アクエラ。口から涎出てんぞ」
輝はフライの他にも美味しい食べ方を知る限り述べていく。
それを聞いていたテイルス及びテイルスから少し離れた席で見ていたアクエラは口から涎を垂らしていた。
「………はっ!」
「袖で拭うなみっとも無ぇ。お前よくそれで歌姫が務まるよな…」
アクエラはスクアロの言葉で我に返ると自分が身につけていた服の袖で慌てて涎を拭うが、スクアロにその行為を咎められた上に歌姫としての威厳が無い事に関しての愚痴を零されるのであった。
「う…美味ぇ!これが水人族のみが食べる事を許されていたという殺人貝オスティアーの味か!」
「アタシも小さい頃に親父やお袋にオスティアーは死ぬから絶対に食うなって言われて今日まで口にしなかったが…しっかり火を通せば問題なく食えるんだな!」
(この世界にはノロウィルスって概念はまだ無いんだな…。だから水人族以外には毒とか言われて食べる事を忌避されていたって所か…)
輝がテイルスにオスティアーフライを賄いとして出した1週間後…何事もなくオスティアーを使った料理が期間限定メニューとして出るようになった。
最初は水人族であるアクエラやスクアロしか進んで食べる水人族以外の客はいなかったが、あまりにも美味しそうに食べる為に唐揚げを普段から食べていたラヴァンダは誘導されてオスティアーフライを注文し、少しづつではあるが人族もオスティアーを食するようになってきたのである。
因みにラヴァンダが食べているのはオスティアーフライでダヴィドが食べているのは料理酒で蒸したオスティアー数個をティレスとオルニオスライスと一緒にぬるま湯に漬けて柔らかくしたライスペーパーで包んだ生春巻きだ。
「イラストを見て気になったからこのナマハルマキとやらを注文したが…サラダのようであって別の何かだ!いや、寧ろエドアー様達王族の食べる料理で出されても違和感が無いと思うぞコレは…!」
ダヴィドは生春巻き1切れをポン酢とラー油をブレンドした特製タレに付けて口に運び、しっかりと味わってから飲み込んだ後に感想を呟く。
「あー…アイリス様達王族は毒味が済んで冷めてしまった料理が主だと昔言ってたっけ…。成程、元から冷たい状態で食べるビシソワーズとかの料理なら味も損なう事も無いかもね…(料理人の観点からは出来たてを美味しく食べてほしいけど…)」
「ビ、ビシソワーズ?話から察すると冷たい料理だと思うが…いったいどんな料理だ?」
「パターテのスープを冷やした物です。暖かい日や夏といった季節には相性は抜群かと…」
「ほぅ…。だが今は本格的に寒くなってくる季節だから次の夏にでもそのビシソワーズとやらを注文しようか」
「えぇ。その時はよろしくお願いします」
ダヴィドの呟きを聞いた輝はアイリス達王族にも毒味をして冷めてしまっても美味しく食べられる料理を瞬時に思いつくのであった。
ある意味ではこれも職業病なのかもしれない。
「むうっ!?これはビールと一緒に食ったら最高の肴になるの!」
「「「「分かるぞ!」」」」
人族以外にもオスティアーを食した客はいる。
ダヴィド達から少し離れたテーブル席でドワーフ親方達が揃ってオスティアーのアヒージョをビールグラスを片手に味わっていた。
最初はメガフライドパターテを注文しようとしたのだがオスティアーフェアのメニューの中にあったアヒージョを見て気が変わり、全員アヒージョに変更して今に至る。
メインであるオスティアーを1つ食べる毎に付け合わせのパンを切ってガーリックオイルに漬けてオスティアーや他の具材の旨味を吸い取ったパンを食べる…これがドワーフの一連の流れになるのは言うまでもない。
尚、アヒージョ等の料理は時間が経つ内にスキレットの中に満たされたオイルが冷めないように薄い魔法陣の描かれた熱を発するマットに置かれている為、丸1日が経とうともオイルの温度は一定に保たれる。
この魔法陣の描かれたマットのは本来の用途とはかなり掛け離れた使い方なのだが、月光の中では輝にとっても客にとってもこれが最良の使い方に該当するのだ。
「オ、オスティアーのグラタン…!美味しそうだけど9シルバ…!宿で食べるコロッケサンドを我慢してこのグラタンを食べるか、グラタンを諦めていつも通りコロッケを食べるか…悩ましいわね…!」
「「「…じっくり考えてくださいね」」」
尚、未だに新しいメニューを食べるかいつも食べている料理にするかを葛藤する客もいたりするのだが…これも料理屋だからこそ起こる現象なので輝とテイルスとリリィは暖かい目で常連の客であるセレナを見つめるのだった。
本日もご利用、ありがとうございます。
オスティアーを使った料理は意外と好評だったのは嬉しい物だ。
え?セレナさんは結局何を食べたかって?
あの後更に30分くらい悩んで…いつものコロッケにしたよ。
コロッケには満足したけどオスティアーは食べたかったと言いたげなのが目に見えてるから特別にコロッケサンドにオスティアーフライのサンドイッチも付けてあげました♪
勿論、僕からのサービスなので値段は変わらないよ?




