説得
「話をしよう。あれは36万・・・いや、1万4000年前だったか、まあいい、私にとってはつい昨日の出来事だが、君たちにとっては多分明日の出来事だ」
「は?」
この場をどうにか和ませようとして、あのネタを使ったわけだが…。
「まあ、こうなるわな。それを今言うのは無理があるだろ」
「じゃあ、何を言えばいいんだよ」
「ここはあれだろ。話せばわかる、だろw」
「その場合、問答無用って言われて死亡だよw」
「いい加減お主等ふざけすぎだぞ」
「「はーい」」
こうやってネタ話をしていてもあちらの警戒心は解けないわけで…。解けたら逆に問題か。
しかし、どうしたものか。話を聞く気のない奴らを説得する方法なんてあるのか?あったら教えてほしいな。マジで。
「アン。今すぐ街の警備の人を呼んできて」
「でも、レナやみんなを置いては…」
「いいから行って!」
おいおい、なんでそんな「序盤でめちゃ強い奴が現れて攻めてこいつだけでも逃がしてやろう」みたいな展開になっているんですかね?そんな強敵じゃないだろ俺達。ましてや敵意ゼロなんですがね。その辺くみ取ってくれませんかね?
「…わかった」
そう言ってアンはギルドを出ようとした。が、扉を開けようとしたときに誰かにぶつかって尻もちをついた。
「あら、ごめんなさいね。大丈夫かしら?」
そう言ってアンとぶつかった人はアンに手を差し伸べた。
「あ…あ…アイナ…様…?」
その時、ギルド内が急に騒がしくなった。
「そうだけど?どうかしたかしら?」
「あ、いえ。何もありません。その…ギルドに来られるなんて…びっくりで…」
「少し用事があってね…」
アンを立ち上がらせながらギルド内を見渡し
「……いた」
そう言ってこちらに近づいてきた。
「取り込み中のようだけど少しいいかしら?」
「こいつらは指名手配されている輩です。危険ですよ!?」
「そのことは知っているわ。まあ、それももうとけるでしょうけどね。ごめんなさいね。手配を解くには時間がかかるの」
「知ってるから安心してくれ。ここは不便だな。一々人が回らないと情報を共有できないんだから」
「そうでもないわよ?離れていても連絡を取る手段ならあるわ」
「あるんだ…」
俺とアイナの会話を不思議そうに、そして驚いたように見るレナ達。澤田とファフニールは静かに聞いている。
「で、何の用?」
「ええ。あなた達はギルドに登録したのでしょう?」
「今さっきな」
「だから、あなた達に依頼よ。内容は広暗の森の調査」
「それは昨日断ったろ」
「ええ。でも、ギルドの依頼としては受けてくれるんじゃないかってね」
「どっちも同じだよ。というかなんでその発想に至った?馬鹿なの?⑨なの?」
「⑨とはどういう意味だ?」
「バカって意味だけど。馬鹿なの?の後に言うとさらにバカにする感じになるな」
「なるほど。それは覚えておこう」
後ろで澤田がまたファフニールに教えている。交渉とか俺まかせだからって暢気すぎるだろ。
「バカとはどういうことだ!アイナ様に向かって!」
おう。この口調はどこかで聞いたことがあるな。レナ、お前もあいつと同類か?
「いいの。この人はこういう人だから」
「よくわかってるな。で、話の続きだが。俺たちはまず、薬草採取らへんでも受けようと思ってるんだわ」
「そう。それは残念ね。だったら私からその依頼を出すわ。ちょうど薬草が大量に欲しかったところだし」
「そりゃ助かるよ。字が読めなかったんでな」
「…役に立ててよかったわ」
そう言ってアイナは受付の方へと行った。




