04.リーズ・ローズ
教会の扉が開き一人の少女が入ってくる。
レミアによく似た綺麗な金色の髪を、左右で結びツインテールにした、高校生か中学生くらいの女の子だった。
凛とした目つきと佇まいに、整った目鼻立ちをしており、レミアのかわいらしい雰囲気とは違う、美人な少女といった感じだ。
「リーズおねえちゃん見て見て!」
レミアは俺の首に抱きついたまま、ツインテールの少女を嬉しそうに呼ぶ。
あ、やっぱり姉妹なのね。
しかしリーズと呼ばれた少女は、俺とレミアの様子を見て驚愕の表情を浮かべた。
直後、ものすごい速さでこちらに駆ける。
そしてレミアの服の襟を掴み引き寄せながら、真っ直ぐに俺を蹴り飛ばし大きく距離をとった。
一瞬の出来事だった。
リーズと呼ばれた少女はレミアを後ろに庇い、腰の剣を抜き俺に向ける。
あっ、これガチの不審者扱いだ。
女の子に全力で蹴り飛ばされたのも初めてだし。
なんかちょっと涙出てきた。
突然の出来事にポカンとしていたレミアは、蹴り飛ばされ座り込む俺を見て急に騒ぎだす。
そしてリーズの手を抜け、再び俺のもとに駆け寄り抱きついてきた。
「離れなさいレミア!!」
「イヤッ!」
「なに言ってるの!
種族はわからないけど、そいつ亜種よ!
殺されるわよ!!」
「そんなことない!この子いい子だもん!」
「いい子って何言って・・・
でも結界内にいるってことはこいつ誰かの奴隷?
でも奴隷は脱走できないはずだし・・・」
「レミアのどれい!さっき魔法かけたの。」
「え、あなたまさか奴隷化魔法を使ったの!?
なにやってるのよバカ!
その魔法がどんなものかわかってるの!」
「しってるもん!魔力を半分あげるんでしょ。」
「わかってるならどうしてそんな馬鹿なことしたの!
いいからそいつから離れなさい!」
「だって、そうしないとこの子ころされちゃうんでしょ!!
そんなの・・・かわいそうだよ・・・」
そこでとうとうレミアは俺の肩に顔を伏せ泣き出してしまった。
おいおい、なんだこれ。
俺まったく付いていけてないぞ。
ていうか殺されるところだったの俺?
とりあえず泣いているレミアの頭をポンポンする。
うん、かわいい。
「あー、状況がいまいち飲み込めてないんで、
よかったら説明してもらいたいんだけど・・・」
「ッ!あなた言葉が話せるの!?」
お、通じた。
どうやら言葉がわかるようになっただけではなく、話せるようにもなっているらしい。
「そうみたいだな、さっきまではさっぱりだったけど。」
「・・・」
リーズが俺を睨む。
と思ったら、急に彼女の姿が視界から消えた。
そして次の瞬間、俺はまたもや真っ直ぐに蹴り飛ばされ宙を舞う。
その上、床に倒れ込むと同時に組伏せられ、両腕を何か縄のようなもので後ろ手に縛られてしまった。
縄なんて持ってなかったよな?
これも魔法なのか?
「なら話が早いわ。
後で経緯を話してもらうから、とりあえず今は黙っておきなさい。」
リーズは俺を足蹴にしながら、脅すような声色でそう言った。
そんな様子を、レミアは何か言いたげな不安そうな顔で見ていた。
リーズもそれに気が付く。
「・・・わかってるわよ。
奴隷化しちゃったのならもう元には戻せないしね・・・
それにこんな大事なこと、私だけじゃどうするか決められないわ。
とりあえず、一緒に姉さんのところに行きましょう。」
「うん・・・」
そうして俺は、後ろ手を拘束されたまま、あのでかいお屋敷に連行されたのだった。