八章3
「サム君、君も少しは休みたまえ。そんなに煮詰まっては解決策など浮かんでこないだろう?」
薫が倒れてからかれこれ五時間が過ぎ、外はもう暗闇に満ちていた。光量を落とした部屋に月明かりが差し込んでほんのりと照らしていた。総一郎に話しかけられたことで、サンドールは昼から何も食べていないことに気が付いた。一度意識してしまうと、逃れることのできない欲が襲ってくる。
「では……そうします。帰ってくるまでの間、彼のことよろしくお願いします」
「ああ」
そういって、サンドールは部屋を出ていった。
「……」
総一郎はサンドールの足音が聞こえなくなるのを確認すると、薫のもとへと振り返る。
「そろそろ、いいのではないかね、薫?」
横たわる薫に総一郎は声をかける。
すると、いままで反応もせず、寝ていたはずの身体がびくりと痙攣する。そして、彼はうっすらと目を開いた。視界が満足に確保できないのかしばらくぼんやりとしていたが、一分ほどしてようやく焦点があったようでこちらを向いてきた。
「――どれくらい寝ていました?」
身体全体は汗にまみれているが、意識ははっきりとしていることを目で訴えてきた。
「ざっと五時間くらいかな。予想以上に長かったね?」
「ええ、表面上にかけてくるのかと思ったら、浸食型で来るんですもん。これは僕も予想外でしたよ」
そういって薫は起き上がろうとするが、力が入らないのか身じろぐだけに終わった。
「まだ寝ていたまえ。意識が戻ったことを今、悟られたくない。
で、お前をこんな目に合わせたのは誰だ?」
先ほどまでとは打って変わって、真剣な表情に切り替える。
「予想通り……麗を使ってきました。主犯はわかりませんが、獏型の魔獣を使役しています」
「それは桜花から聞いているよ。
――そうか。なら、俺の推測は間違いないかな。
薫。あと、どれくらいで動けるかね?」
「一時間以内には回復すると思います」
総一郎の問いに薫は即答した。
「わかった。くれぐれも無茶はしないでくれよ? お前が傷つくと、あいつらに顔向けできねえからな」
「了解です」
そういって、ようやく二人の顔に笑みが浮かんだ。
「じゃあ、寝てな。そろそろサムが戻ってくるころだろうし」
「ではあとで」
そういって、薫は再び眠りについたのだった。




