八章2
「ふむ、これはいったいどういう事なのかね?」
「私に聞かれてもねー」
「同じく」
桜花から連絡を受け、麗の部屋へと赴いたふたりは首をひねった。ここに来る前にロビーで金西と合流したのだが、彼には部屋の穴埋め作業に向かってもらうよう指示してある。一人では襲われる危険があるため、影里を同行させた。
薫を眠らせた容疑者として桜花が目を付けた麗が何者かによって拘束され、薫とは方法は違えど眠らされていたのである。
「確かに、茂野君はアリバイもない。この中で犯行できるのは彼女を除けは社長とサムさんぐらいだろうか。あと、木逆先生――薫君に言っておいてあれだが、本当に教師かね? 生徒が倒れているのに無干渉だとは。
話がずれたな。生徒会メンバーはそれぞれがアリバイの証人として成り立っている。旅館のスタッフも同じく。それ以外はかかわりを持たない旅客ばかり。もしかしたら、旅客の中にSKが混じっている可能性は否めないが……茂野君が眠らせられているところを見る限り、捨てきれなくなったわけだ。犯人探しの難易度は極端に上がってしまったのが現状か」
「……困りました」
「そうね。今日は一段とお客さん増えたものね。これもSKの作戦だったりするのかしら」
だとしたら厄介だ、と桜花は思う。
こうしている間にも薫は苦しんでいるというのに。私は何もしてあげられない。ずっと助けてもらってばかりだ。極度の人見知りである自分を、いつも助けてくれる幼馴染みであり、人生のパートナー。なのに、私ばかりが支えてもらっている。彼は何もないかのように過ごしているが、彼の身体は日常生活にも支障をきたす。そんなディスアドバンテージを抱えながらも、自分をそっちのけでわたしや月ちゃんを大切にしてくれる……だからわたしは薫の力になりたい。
これまでずっと秘めている思いを再確認すると、桜花は打開策を探ることにした。
「麗は何かを知っているから……口封じをされている?」
「そう考えるのが妥当だろうね」
「犯人の顔を見たとかね」
「それなら部屋に放置しておかないんじゃないかね」
「逆に連れていくと捜索の手がかりになるからじゃないの?」
「ふむ。そうとも考えられるが、このままでは堂々巡りになるのは目に見えるね」
「ええ」
「手がかり……」
おそらく、この事件の鍵を握るのは麗だろう。ならば、
「……ねえ、忍。麗ちゃんのは単なる催眠魔術?」
「おそらくね。薫君のような不可解な呪術ではないだろう」
御川は長瀬の問いに肯定する。
「じゃあ、サムさんに見せれば解けるのではないかしら」
「だろうね。とりあえず、真里亜。彼女を運んでくれるかね」
「私なの!」
「僕が運んでもいいが、あとが怖いのでね」
「別に悪いことをしてるわけじゃないのに……」
律儀というかなんというか。実は会長、ヘタレなのではと思う桜花だった。
「しょうがないわねー」
よいしょ、と長瀬は麗を一息で担ぎ上げた。
「じゃあ、行きましょ」
「「なっ――」」
「どうしたの?」
ほぼ同じ身長の人間を背負うのではなく、担いだことに二人は絶句したのだが、当の本人はきょとんとしていた
「う、うむ」
「う……ん」
「?」
三人は薫たちのいる部屋へと向かうのだった。




