城南事件帳
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その夜、 すでに一粒種の子供もスイミングスクールに通わせているおかげで別室でぐっすり朝まで 寝入ったまま。しかるに、 梅宮家の寝室では、妻と二人きりの水入り状態。 いやいや、それは違う。水入りは相撲用語だ。大相撲で、両者がっぷり四つで互いに譲らず、さすがの行司もこりゃいかん、と関取たちに休みを与え、再度力水をつけさせて、元の体勢から、「はっけよい!」の掛け声とともに身体をポンと叩くことで試合を再開させることをいうのだ。だから、この場合は水入りじゃなくて、水入らず状態。
「ねえ、あなた~ぁん」
また、始まったよ。 もう、やだよ、 毎日毎日 これだもん。 こっちは足を棒にして歩いて疲れて帰ってきたっていうのに、 ねぎらうところか、またぞろお勤めさせられるんだから、たまったもんじゃないよ。 今度はあっちを棒にしろってか。ふざけんな。
この生活が毎日だもんなあ。ホント、死にたいよ、俺は。 こんな タフな女房 だと思わなかったよ、 結婚当初は。結婚するまでは3ヶ月で、接吻しかしなかったし、それ以上進もうと思っても、 伏せ目がちに、「ダメよ、ダメ、ぜったい」とまるで警察の覚醒剤禁止ポスターのような文句で 拒否してきたくせに。
初夜から三日と経たない内に本領発揮だもんなあ。 元来、 女としちゃあ、ガタイがいいほうだったから、雲竜型の土俵入りっていうか、とにかく、 自宅に戻ったって、相撲部屋みたいなもんで、 親方に稽古つけられてるんじゃないかってくらいで、 だから毎日、 なかなか起きられないんだよ。 会社にだって遅刻するはずだよ。 このカアちゃんがいけないんだよ。 ほんと誰か、助けてよ・・
そんな 夫の嘆きも知ってか知らずか、
「 ねえ、あなた、何をぼーっとしてらっしゃるの。いえね、お昼の ワイドショーで、すごいわね、 今は、 女性の落語家が真打ですって」
ああ、よかった。いきなり求められるんじゃないかってヒヤヒヤしたよ。 顔にこそ 出さなかったが、 夫は胸を撫で下ろした。「 そりゃ、いるでしょうよ。 女性の落語家 だって。こんな男女平等の世の中なんだから」
「それはそうなんですけどね。 とにかく、真打披露のニュースなの。品川亭飯盛娘さんの」




