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城南事件帳

 妻が夫の顔の前に突き出したスマホに映し出されていたのは、確かに年齢は38歳 かもしれないが、 まだ20代のアイドルと言われても、 ふうん、 そうなんだ、 と普通の男なら 納得して鼻の下を伸ばす であろうほどのルックスの良さ。顔は卵型で目は大きくて黒目がち、そうなると日本の男どもが好む幼な顔。

「可愛いじゃない。でもすごい名前だね。 飯盛娘って。 そのままじゃない」

「あれは江戸の頃は 飯盛女でしょ。 こっちは娘よ、娘。とにかく、その人、 ここまで来るのに苦労したんだって。 今38歳。 大学時代落研で、その後ミュージカルやって、 芝居やって、落語に戻って。今じゃこうやってテレビで取り上げられるようになったけど、 今現在も、 下積みの頃にやってた 司会のバイトとかを副業で続けてるんだって。ブロックチェーンとかね。 偉いでしょう」

 なに? ブロックチェーン・・  刑事としての センサーがオットピン状態になった。

「ちょっと待った、 それ 聞き捨てならないぞ」と居間に戻って ネット検索をかけようかと夫がベッドから腰を上げようとした瞬間、

「 いいじゃないですか、仕事なんて、明日で。もうあなたもお風呂入ったんだから、 あとは やること って言ったら・・横になりましょ」

  妻が無理やり 夫のパジャマの首根っこをぐいっと つかんで布団の中に引っ張り込もうとするもんだから、

「ああ、あぁぁああぁ」夫はなすすべもなく、背中からベッドの上に倒されてその上から 掛け布団が覆いかぶさってきた。


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