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第六章 グリア帝国

グリア帝国。この国は穏健な思想を持つグリア帝王が王の国家である。そんな似たような思想を持つグリアとオスティアは数年前からオスティアと同盟を結んでいた。しかし、グリア帝王の抱いていた思想はいつの間にか逆に変わり、グリアは少しづつ、軍事国家になっていった──。



オスティアとグリアの戦争が終わり、その結果。グレン達とその配下の部下、それにオスティアの生き残りの国民達はグリアに送られた。





グリア帝国、グリア城、王座の間──。





何人かのグリア兵に押さえられながら、グレンは、グリア国王の前に跪かされていた。


グレンは、跪いた状態でグリア帝王を睨みつけていた。


「ほう、そなたがオスティアのグレン、か。よくもまぁ、無駄な足掻きをしおって……。そのせいで我がグリアの兵が減ってしまったではないか」


グリア帝王は言う。


「……なぜ、なぜだ!!! なぜ、グリアはオスティアに侵攻した!! 同盟、同盟を結んでいたはずだ!!!」


グレンはずっと心の中で溜め込んでいたことを吐き出すように叫ぶ。


「同盟? はて、……ああ、そんなもの、……あったな」


とぼけるように言うグリア帝王。


「しかし、だな。オスティア将軍グレン殿。この際理由なんてどうでもいいとは思わんかね? 過去の話にとらわれていては前には進めないぞ」


「ふ、ふざけるな!!! 貴様らグリアは卑怯だ!卑劣だ!鬼畜だ! 貴様らはなぜ、どうしてこんなむごいことを平気で出来る! オスティアが一体何をしたというのだ!!!」


「……オスティアは何もしてはいないな」


「だったら──」


「あの土地がずっと前から欲しかった」


「…… …… 何だと……?」


「あの場所、オスティアは実に美しい場所だ。我にとって相応しい場所であろうな。同盟? そんなものこちらに都合がよければなんでもよかった。貴様らが油断していれば何でも良かった。──まさか貴様らがここまで思い通りに油断していたとは思わなかったぞ」


「き、っきぃさぁまぁああああああああああああああああああ!!!!!!!」


グレンの怒鳴り声が辺りに響く──。


「うるさいな……。でも、まぁ貴様らオスティアだって悪いのではないのか?」


「何だと?」


「油断をしていたのだろう? わざわざ、偽りの平和にただただ呆けていただけなのだろう? ただ寝て食って遊んで、そんなことをただ繰り返し、まともな戦闘訓練をしていなかった貴様らが悪いのではないのではないのか?」


「……くっ、……」


「良いことを教えてやろう。オスティア将軍、グレン。この世は弱肉強食であり、弱い者に生きる場所なんかない。そして、こうも言っておこうか。どんなに実力が良い者でも、隙を見せた奴はすぐに死ぬ。──この世は『弱肉強食』と『油断大敵』だ。実力がよく、隙を見せない者が生き残れる……それがこの世の理だ、グレン将軍」


「……その実力も悪く、隙を見せた我らどうするつもりだ? グリア帝王」


目は睨み付けたままで言うグレン。


「なに。私もそこまで他人に、敗者に厳しくは無い。──なぁ、グレン。そなた、このグリアで将軍として活躍しないか?」


苦笑しながら言うグリア帝王。


「ふざけるな。誰が祖国を亡ぼした憎きグリアの兵士として働くものか!」


「そうか……、それは非常に残念だな。そなたは随分と自己中心的な考え方をする若者だったのだな……。ああ、非常に残念だ。亡くなられたオスティア国王が見ていたらなんと思うかな……」


「戯言を。下らない事は言わずに、さっさと私を殺せば良いだろう!!」


「戯言……? ああ、そうだな。そうかもしれんな。だが、どうであろうな。だがそなたは何も考えてはおらんんようだな」


「何をだ」


「例えば、そなたの部下どもはどうなる? そなたが死んだらオスティアの民達も全員血祭りにあげさせてもらうが? ──それでもいいと言うのなら我は何とも思わんよ」


「……人質……か」


舌打ちをしながら答えるグレン。


「簡単なことだ、グレン。そなたが死ねば、オスティアの民達は死ぬ。そなたが生きていれば、民の命だけは保障してやろうか」


「……貴様は卑怯だ……」


「何とでも言うが良い。我はどちらでも良いのだぞ、死のうが生きようがどうでも良い」


グリア帝王はゆっくりと、グレンの元へと近づき言う。


そして、ゆっくりとしゃがみグレンの顔の位置まで自分の顔を下げて言う。


「さぁ、どうする?オスティア将軍、グレン・ハーゲン」


グレンはグリア帝王の顔を睨み続けていた──














オスティア領、辺境の町 オストン──……から少し離れた一軒の木造で出来た廃屋。







オスティア滅亡から早五日──。


クロイドとセフィリアはアラスク山を登るための準備としてこの町の近くの廃屋で身を潜めていた。









「まず、その服をどうにかしようか」









セフィリアが身に着けている真っ白なドレスを見ながらクロイドは言った。


「……なんで?」


キョトンとした様子で答えるセフィリア。


その様子に溜め息をしたクロイド。


「……あのな、あんたは一応逃亡している身だ。そんな高価なドレスを着て街中を歩いていたら即グリアに連行される。だから、まずはそのドレスから別の物を着てもらう。いいな?」


そう言い理解を求めたクロイドだったが、彼女の答えは──


「やだ」


たった二文字だった。


「……お前、俺の言ったこと理解してないだろ。だから──」


「理解したけど、やだ」


「随分と反抗的だな、……お前」


「だって、これお気に入りなんだもん! いいじゃない、服なんかどうだって。私はお気に入りがいいの!!」


そう言われたクロイドは頭を悩ませた結果、こう言った。


「──分かった、ああ、分かった。じゃあ、こうしよう。お前が気に入る物を選んできてやるからそこで待ってろ。」


「な、なんで、私が選んじゃ駄目なの!!?」


「……お前、本当にこういう時の理解が足りない奴だな……。いいか、店で選ぶ前にその今着ているそのドレスしかないんだろう。それで街中歩いていたら、すぐ捕まる。まずはお前のお気に入りとやらを買う前に俺が適当に選んできてやるから、そこで待ってろって言ってんだ」


呆れた様子でそう言ったクロイドはセフィリアを一人、この廃屋で待たせて、オストンへと向かっていった──。


かれこれ三十分後──。


クロイドは袋を片手で持って戻ってきた。


「買って来たぞ……って、お前な……」


クロイドは戻ってきたとき、セフィリアは寝ていた。


その様子を見て、クロイドは彼女の元にゆっくりと近づいて、セフィリアの寝顔を見る。


「……本当に、これが王女の寝顔なのか……まるで、どっかのおっさんみたいな寝顔じゃないか……」


よだれ垂らしているし……。


そう言って、クロイドは彼女の鼻を摘んだ。


すると、セフィリアの顔はだんだん赤くなっていき──


「何すんじゃああああああああああ!!!」


クロイドの左頬に向かって、お目覚めそうそうの左フックを浴びせようとするが、彼はひらりとかわす。


「なんだ。セフィリアか。てっきり、どっかの昨晩酒を飲みすぎてしまい、自分の家にも帰られずにその辺で寝ている親父かと思ったんだが」


「的確に言っても駄目!!ていうかあんた、悪意100%で行っていたでしょうが!!」


「まぁ、そんなことはどうでもよくて。買って来たぞ、ほれ」


そう言って彼女の元に軽く袋を投げるクロイド。


「ああ、そう言えば、そんなの頼んでいたわね。どれどれ……」


そう言いながら、彼女は袋を開け中の物を取り出す。


それは、フードのついた真っ白なローブだった。


セフィリアはそれを広げて、自分の体に合わせてみる。


「ふむ。サイズはぴったりみたいだったようだな」


そう眺めて言うクロイド。


「……なんか……可愛く…ない……」


いかにも嫌そうな顔をするセフィリア。


「……まぁ、気にするな。とりあえず、それに着替えておけ。……後で町で他の買えばいいだろう」


そうなだめるように言うクロイド。


「じゃあ、俺は外に出ているから着替えておけよ」


そう言って、扉を開け廃屋から出て行くクロイドだった。








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