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第一章 忍び寄る影

ヴァード大陸。


この大陸に五国在り。


美しい大自然が特徴的な国 オスティア王国。


ヴァード大陸一国土を持つ国 グリア帝国。


神への信仰を第一とする宗教国家 コーデリア聖国。


広大な砂漠が広がる国 アルハナ王国。


年中止むことのない雪が吹雪く雪山に(そび)え立つ孤高の国 スヴェナ帝国。


何百年も前まで、この五国は各地で争いを起こしていた。


しかし、グリア帝国から突然の戦争放棄の提案が各国に持ち込まれた。


初めは各国疑心暗鬼であったが、時間が経過するにつれて、スヴェナ帝国以外の国家が武力を少しづつ解いていった。


そして、この後何百年か経過し各国の軍隊は未だ放棄されてはいなかったが、各国休戦状態となっていた。


そしてグリア帝国はオスティア王国に平和同盟を持ちかけた。


この提案を素直に受け入れたオスティア王国はグリア帝国と同盟。


このまま、五国は完全なる平和へと歩んでいけるはずだった……









「ねーウィル。今日からわたしたち友達にならない?」



ウィルに会って間もないときに、幼い頃の私は彼にそう言った。


ウィルは私と同い年で、背は私より少し小さく、髪の毛は栗色だった。





「ひ、姫様!そ、それは出来ません。私は姫様の直属の部下であるようにと姫様のお父上、国王陛下様に頼まれているんですから!」


ウィルは戸惑いながら私に言った。


「あら?いいじゃない、別にそんなこと。私とウィル、ちょうど同い年なんだし」


「で、ですが、、」


「それとも、私のこと嫌いなの……?」


「そんなこと決してありません!」


「じゃあ、別に問題ないわよね?」


「そ、それでも、僕の父上と国王陛下様が許すはずがありません……」


俯きながら言ったウィル。


「──私には親しい友達がいないの」


「えっ?」


たまらずその言葉に反応し、顔を上げるウィル。


「お父様は毎日国の仕事で私のこと構ってくれないし、お母様は私が生まれるときに死んじゃった。他の人は皆、私よりもずっと年が離れているのに私のことを「姫様」で本当の名前を呼ばれたこと無いから。だから、せめて同い年のあなただけでも私のこと名前で呼んではくれないの?」


「姫様。しかし、僕なんかにはとても──」


「じゃあ、命令。私の友達になって。それで私のこと名前で言って」


あっさりとウィルに言った。


「・・・ ・・・やっぱり姫様には敵いません。けど、二つほど条件があります」


「条件?何、条件って。言ってみて」


「一つ目は姫様と二人でいる時だけお名前で呼ばせてもらうことです」


「……しょうがないわね。いいわ、それぐらい我慢してあげる。二つ目は?」


「二つ目は、友達とは命令でつくるものではありません。気が付いたらなっているものです。姫様が僕のことを友達だと思って下さるのならその時からが友達です。このことをずっと覚えていてください」


「ん~。よく分かんない。けど、友達になってくれるならなんでもいいわ。じゃあ今日から私たち友達よ」


「はい、姫様」


「……ウィル、さっきまでの話ちゃんと聞いてたの?」


「あ、すみません。では、セフィリア様、でよろしいですか?」


「普通友達なら、敬語なんて使わないわ。もう一回」


「で、では、・・・よ、よよよろしく、、、セ、、セセセ、、、、セフィリア、、、」


「あら、やれば出来るじゃない。じゃあ二人でいるときはいつもそう呼びなさい。ウィル」


「分かりました──じゃなかった。えっと、わ、分かっ、たよ」


「・・・ ・・・まだぎこちないけど、まぁいつかは慣れるわよね」






これがウィルこと、ウィリアム・ハーゲンとの幼い頃の約束だった。この会話から一ヶ月後に彼は私の前から姿を消した。















オスティア オスティア城内──。











「姫様ー。朝でございますよー」


ドアをノックする音が聞こえる。


その音にたまらずに起きたセフィリア。



(懐かしい夢を見ていたのに一体なにごとよ……)



眠たい目を擦りながら、体を起こす。


「はいはい。今行くから待ってなさい。」


扉を開けてみるとそこには一人のメイド、ローラが立っていた。


「あっ、姫様おはようございます。さっさ、朝ですから着替えて下さい。私も手伝いますから」


そう言ってローラはセフィリアの部屋に入り、着替えが入っている棚を開け着替えを探す。


「姫様、寝癖が出来てますよ。私が着替えを探している間に直して下さいな」


そう言われて鏡を見るセフィリア。たしかにすごい寝癖だった。印象的な金色の長い髪がぐしゃぐしゃだった。


「今日って、なんかあったっけ?」


鏡を見ながら寝癖を直しながらローラに言う。


「いえ、特に何もありませんよ」


「そう。じゃあ今日は暇ね」


「何言ってるんですか。王女としての勉強があるじゃないですか」


「え~、そんなの毎日やっていたら頭がパンクしちゃうよ。たまには息抜きが必要でしょ?ね、今日ぐら

いいいでしょ?ローラ」


「いけません、姫様」


「ローラのケチ~」


「何度そう仰っても私の気は変わりませんよ。さ、着替えを出したのでこれをお着替え下さいね。着替え

たら食堂にいらしてください。もうお食事は出来ていますから」


そう言ってローラは選んだ着替えをベッドの上に置いて部屋を出ていった。


ローラの選んだドレスに着替えるセフィリア。彼女は着替えながら今朝の夢をに出てきたウィルを思い出していた。






ウィリアム・ハーゲン。彼とは八年前に出会い、そしてその年に私の側から何も言わずに去っていった。


正確には私がこの国の反乱軍たちにさらわれて無事この国に戻ってきたときには彼は誰にも言わず、置手紙も無しに消えてしまった。


その八年前以降、彼の姿を見たものはいなかった。この私ですら見かけなかった。


一体彼は何処に行ってしまったのか。なんで黙って消えてしまったのか。あれ以来行方が分からなかった。







考え事をしながら純白のドレスに着替えたセフィリアは、自分の自室から出て行った。

















オスティア隣国、グリア帝国。


オスティアと同盟を結んでいる大国である。






そのグリア帝国の軍がオスティアから何十キロも離れた平原にいくつものテントを張り、陣取っていた。



「本当によろしいのですか?」


あるテントの中でスキンヘッドの男が言う。


「ああ、そう上からはそう命令が下っている。オスティアに侵国しろ。とな」


対する白髪混じりの男はそう言った。


「しかし、ガネッド将軍、陛下がそのようなを申されるとは自分にはとても思えません」


「私もだ。あの温和な陛下に何が起きてしまったのかは私には分からん。だが、何にせよ、陛下の命令は絶対だ。しばらくしたらここを離れて移動をするぞ、オウカ」


「了解しました。ガネッド将軍!」


スキンヘッドの男、オウカはガネッドのテントから出て行った。


「……、一体この戦に何の意味があるのですか。陛下…… 」


一人になったテントの中で、ガネッドはそう呟いた。











オスティア城内。









オスティア城内の庭園を歩くセフィリア。


彼女は食事をとった後、少し時間があったのでこの庭園に来ていたのだった。毎日朝食を食べた後にここに行くことが彼女の日課だった。


色取り取りの花が咲きほこっているこの庭園はセフィリアにとって、幼い頃より遊んでいた思い出の場所だ。


彼女は歩く、色鮮やかな花々の中を。


だが、彼女は突然歩みを止めた。目前の木の根元に人がいたからだ。いつもの時間は誰もいないはずなのに。





セフィリアは不審に思い近づいてみる。そこには長い黒髪を結わえた一人の青年が座っていた。全身は黒い服装で目は閉じていて眠っているようだった。


その彼の体の傍らには、鞘、柄ともに真っ黒な刀があった。


(珍しい刀ね……。見たことが無い。)


以前に彼女はオスティアの兵士の武器を見たことがあったがこんなに真っ黒な刀は今までに見たことが無かった。


そして、セフィリアはその刀を掴もうとした時、


「それに触れないほうがいい」


声がした。眠っていたかと思われていた青年の声だった。


たまらず出した手を引っ込めるセフィリア。


「ご、ごめんなさい。つい珍しいものだったから」


「いくら珍しいと思っても、これは人殺しの武器だ。あんたがそう易々と持っていいものじゃない」

青年は立ち上がりながら言った。


たった姿はセフィリアより十㎝ほどの身長に差があった。


「あなた、オスティアの兵士なの……?」


(こんなところにいるんだ。間違いない。)


そう思っていたセフィリアだったが、見事にその考えは外れた。


「いや、違う」


「じゃあ、あなた何者なの……?」


一歩後ろに下がり彼女は言った。


「安心しろ。敵でもない」


そう言うと、刀を右手で拾い上げ歩き去ろうとした。


「待って!」


セフィリアは立ち去ろうとする青年に言う。


「せめて、名前だけは言いなさい」







「……クロイド」


振り向かずに答えた青年クロイドは去っていった。






(クロイド・・・、一体彼は何者なの・・・?)


セフィリアはただクロイドが去っていく姿を見ているだけだった。













その夜、セフィリアは自分の部屋にいた。


ベッドの上であぐらをかいていた。一国の王女がする姿ではなかった。




「一体あの男はなんだったの……。全く分からない」


自室で彼女は昼間に会った青年のことを考えていた。


長い黒髪、黒い刀。今の所、彼女が知っているのはそれぐらいだった。


(はぁ、てっきりあそこにいたのはウィルかと思っていたのに……)


あの庭園は昔、セフィリアとウィルが遊んだ思い出深い場所だった。


だから、彼女はすぐにウィルかと思ったのだった。いつか戻ってくる、そう信じていたからだ。


しかし、違った。人違いだった。


クロイド、それが今朝見かけた青年の名前だった。彼自身曰く、敵でもなければ味方でもないらしい。


「また、どこかで会うのかな……」


そう彼女は呟いた。


すると、突然ドアを叩く音が聞こえた。


彼女は慌ててベッドの上で姿勢をよくして座った。


「はい、どうぞ」


扉を開けそこに入ってきたのは一人のメイドがトレイを持って立っていた。


「失礼します。お茶のほうをお持ちいたしました」


「あれ?私頼んだっけ?」


「はい、さっき頼まれました」


(頼んだ覚えはないけど、まぁ、いっか)


「じゃあ、そこに置いといてくれる」


セフィリアは、テーブルの方を指差した。


「かしこまりました」


メイドはその指定されたテーブルにトレイごと置く。


「では、失礼します」


そう言うと、メイドはセフィリアの部屋から退室した。


するとすぐに、セフィリアはベッドから立ち上がりテーブルへと移動する。


そして、テーブルの上に置かれた紅茶の入ったカップを持ち上げ、ゆっくりと飲む。








しばらくして彼女は余程疲れていたのか、その場で倒れてるようにして眠っていった──。













「うまくいったか」


一人のメイドに対してそう問う男の声。


アスティア城の一室。さっきセフィリアの部屋に入っていったメイドの部屋だ。


「は、はい、、う、うまく姫様のもとに運び込みました。……こ、ここ、これで、、よ、よろしいので

す、、よ、ね……?」


体中を震わせながら言う。姿の見えない男の声に向かって。


「そうか。なら安心しろ、お主はこれで自由の身だ」


「は、はい」



その声を最後に、男の声は聞こえなかった。物音一つもせずに。


メイドはそのままその場に座りこんだ。



「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい──」


泣きながら誰に対してかは分からないが、ずっとその誰かに向かってひたすら謝っていた……。








オスティア付近──。





「ガネッド将軍、準備が出来たようです!」


スキンヘッドの男、オウカがガネッドに向かって走ってきた。


「そうか……。引き続き、我らはここで待機だ」


「はっ!」


ガネッドはオスティアの遠い位置から、オスティア全体を眺めていた。


「……なぜこのような美しい国を我らが攻撃せねばならんのか」


独り言のように小さな声でガネッドは言った。







「──おやおや、その発言は裏切り行為ですかな、ガネッド将軍」


振り返る。そこには軽装で白髪の男が立っていた。


「コルテオ、か」


「なぜそのような嫌々な顔をするのですか?これは戦いですよ?戦争なんですよ?人をたくさん殺せるパ

ーティなんですよ!!?」


笑いながら、コルテオは言った。


「むしろ私がそなたに問いたいものだな。罪のない者たちをこれから傷つけるというのに、なぜお主はそのように喜べる?」


「決まっているじゃないですか。こういうときだけ、人を殺せる唯一の時なんですよ。腹を切り噴出す血しぶき、それと同時に苦痛な表情を浮かべ死んでいく、これこそが私が美しいと思う瞬間であり、私の美学なんですよ。私にとって人を殺すのは、戦場の中で美しい本当の赤を見ることの出来る唯一の場所なんです。これが嬉しくなくてなんと思えるでしょうか!!」


まぁ、あなたには理解できないでしょうがね──と最後に付け足してガネッドに言うコルテオ。


「まぁ、それでもいいです。私さえよければなんでもいいんですから」


「……そなたにとっては残念なことだが、我々はただ殺戮(さつりく)をしにきたわけではない。この国を占拠すればいいだけの話だ。だから先に言っておくが、積極的に人を殺すな。向かってくるものだけ倒せばよい。……話は以上だ」


ガネッドは自分から話を打ち切るとまたオスティアのほうを眺めていた。


「──わかりました。では」


コルテオはそう言い、この場から去っていく。


(あまいですよガネッド将軍、あなたは何も分かってはいませんよ、戦争とはどんなものなのか、を。やられる前にやる。それがこの世の理で、この世界は弱肉強食なんですから……)




ニヤリと笑いながらその場から去っていくコルテオだった──。





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