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第234夜 鎮守

 “浮雲番(フンバ)”を先導に楓達はあやかし“紫鳳”の残した足跫を辿っていた。黒いサングラスはまるでゴーグルの様にゴムが付着しており、彼は後頭部にそのゴムを引っ掛けサングラスを掛けてる次第だ。何しろ彼の両耳は視えない。一応、両側頭部にそれらしき耳穴はあるが他動物の様に耳を象徴するモノは無いのだ。故に彼はサングラスをゴーグルの様に装着しているのである。そしてそれを掛け、ひょこひょこと2足歩行しながら紫色に発光する狼の足跡を辿っているのであった。

 「やっぱあの山に向かってるっス!」

フンバが言うと葉霧が言う。

 「狼の姿を手放したんだよな?紫鳳は。なのに何故足跡は狼なんだ?」

 「それはアッシには解らぬことです。」

フンバが言うと葉霧の隣を歩く鎮音が言った。

 「幻世(うつせ)の“整形技術者”?を捕まえて聞くしかあるまい。私らが此処で疑問を投げ掛けても答えは出んよ。」

 はぁ。と、鎮音は溜息を溢した。

 「まぁ、そりゃそーだな。姿を変えられる医者みてーのが居るって事だろ?ソイツに会ってハナシ聞くしかねぇだろ。知りてぇなら。❨俺は最早どーでもいい。❩」

 灯馬である。そう言って軽く溜息吐いたのは。

そんな中……楓は葉霧の横でとても険しい顔をしていた。

 (得体の知れねぇ力を使う奴等が居る……。そんでそんな奴等がゴロゴロ生きてるのがあやかしの世界“幻世(うつせ)”。何が潜んでるのかは解らねぇし、退魔師がその世界で通用するかも正直……微妙だよな。何故なら?退魔師一族が幻世に行った証拠はねぇ、しかも最強と言われた“螢火(ほたるび)皇子(みこ)”が死んだのは幻世から這い出て来た闇喰いとの死闘の末。つまり、皇子は幻世の奴等に勝てなかったと言うこと。死ぬ間際に幻世と現世の通り穴を封印するのが精一杯だった……。)

 カッ!!

楓の思考を煽るかの様に目指している三連の山には稲光が落ちた。楓はそれを見据えながら更に思う。

 (………つまり?退魔師は誰も幻世を壊してない。いや……壊せなかったのかもしれねぇ。けど、オレが封印されて千年以上の時が流れてるが……、現状維持だけをして来た可能性もある。てことは?)

 楓は、はた。と、気付く。

 (退魔師は知ってて放置して来た可能性がある。何故なら?螢火の皇子が死んだのは幻世から這い出て来た闇喰い。その死を知ってる血族は絶対に居た筈、つまり幻世の事も知ってる筈。だけど、螢火の皇子についての文献はほぼ遺されてなかった。だから葉霧は知らなかった。幻世を、皇子の詳しい事を。後継者なのに。なんでオレは気付なかったんだ!退魔師は……ずっと放置して来た。元凶を知りながら。)    

 『その先駆者はお前ら退魔師一族だ。ずっと奪取して生きて来た、しかもその理由は“欲”。自身の富裕を熱望し、玖硫一族と言う名を使い退治と言う名目で金稼いで生き永らえて来たよな?そのお陰でお前達はあのデカい土地構えて富裕層として生きてる、で、俺達は同じ様に搾取して来ただけ。自身の欲望を満たす為に人間を喰い殺して来ただけ、何が違うよ?玖硫一族。や?退魔師。』

 政宗の言葉が楓の脳裏に走った。

 (ああ………。)

と、、、楓は落胆した。

 (元凶を知りつつ敵わないと知ってるから………、無知の人間達を言い包めて”退治“を名目に困ってる人達から搾取して来た……。その代償に今の玖硫一族がある。と、、、アイツは言いたかったんだな。)

 はぁ。と、楓は溜息溢した。

「楓?どした?疲れた?ずっと戦っていたから。」

「!」

 隣を歩く葉霧からの言葉に楓は顔を上げ、彼を見つめた。心配そうな顔をしている。

 「や?なんでもねーよ。うん。つか、、、戻れる方法を探さねぇとな。」

 楓は無理矢理だった。笑顔を作り上げそう言った。

 (でも……葉霧は悪くねぇ。何も知らなかったんだ。“力無し”、“能無し”と言われて来たぐらいコイツはあやかしに遭遇する事すら無かったんだから。オレと出会ってから力に覚醒めたんだ。しかもオレを助ける為に無理矢理……覚醒した。負担を顧みず。)

 楓は葉霧から目を反らし、ぎゅっと右手を握り締めた。

 (ダメだ。確かに力は欲しい。アイツら、幻世の奴等をブッ倒せる力は欲しい、けどこのまま離れたら葉霧はどーなる??もしもばーさんの言う様に憑いて来たとしてオレは葉霧を護れるか?や?ムリだ。今のオレじゃ。確かにこの前は元の力を使えたけど、それはオレの意志じゃない。勝手になった。元の力を使えるか解かんねぇ状態で未知の世界に葉霧を連れて行きたくはねぇ。)

 ………………。

楓は山に向かい歩きながら先導するフンバ、そして葉霧に肩ぐるまされて運ばれるお菊を見上げた。

 (2人を連れて行ったとして……護れる保証はねぇ。あー!!オレは頭に血が昇り過ぎてた!くそっタレだ!)

 葉霧はお菊を肩ぐるまし、その両足を支える様に掴みながら楓を見て言った。

 「楓?大丈夫か?なんか………犬みたいに唸ってるけど………?」

 「えっ!?」

楓が驚いて聞き返すと、葉霧の赤み掛かった茶髪の頭に両手乗せながらお菊は言う。

 「うぅ〜〜って言ってた、楓がわんこになったのかと思った。」

 「は??わんこではねーな。」

楓が言うと、くすくすと葉霧とお菊は笑った。

 「いや?わんこだろ。」

 「わんこだよ。」

2人はそう言って笑顔を向けたのだ。

 「〜〜〜〜っ。」

楓はむぅっとしつつも、、、何だかホッとしていて、顔を真っ赤にしながら俯いた。

 (くそっ!こーゆう何気ない感じがほっこりして………、しかもむっちゃ嬉しいんだ………、こーゆうのをもっと欲しいと思うし、オレもしたいと思う。だから離れたくねぇと思っちゃうんだよ!)

 嬉しいのにイラ立つ………。

楓は俯きながらそう思っていた。

 すると、雷鳴轟く三連の山の麓に辿り着いた。

 「楓殿!着いたっス!!」

フンバの声に、ハッとして楓は目を向けた。

 カッ!ドォォォオン……!!

稲光と雷光が三連の山に落ちる様に光り、更に雷轟が轟く。

 「………うわ……なんかヤバそー………。」

夕羅が怯みながら言う。

 空は赤紫。雲は無い。なのに雷は鳴り響き稲光は空から降り注ぐ。不気味な光景に誰もが山の入口に立ちながら不安を滲ませていた。

 ふぅ。と、1つ息を吐き鎮音がくるり。と、振り返る。

そして不安一色の表情をしている面々に右手を向けた。

 「なんだ?ばーさん。」

灯馬が聞くと鎮音の右掌がポゥと白い光を放つ。

 「お前達に“鎮守”を施す。」

 「……ちんしゅ……??」

灯馬が聞き返すと鎮音は言う。

 「悪しき者から護る防護壁の様なものだ。が、楓、フンバ、お菊。お前らには施せぬ。お前達はあやかしだから。」

 鎮音の言葉に楓、フンバ、お菊は少し険しい表情をした。フンバはするり。と、サングラスを外し首に掛けた。

 「………まぁアッシらはそれなりに跳ね返せるんで。」

フンバは言うと肩ぐるまされてるお菊を見上げた。うん。と、お菊は小さく頷き楓を見た。何も言わぬが楓はお菊、フンバを見つつ言った。

 「ばーさん、オレらの事は気にすんな。」

そう言って鎮音を見た。

 「………すまぬ。お前らは私らを護ってくれるのに、私ら退魔師はお前らを護る力は無い。滅するだけ。」

 鎮音は少し悲しそうな顔をした。

 「……………!」

葉霧はそれを聞き、ハッとした様に目を見開いていた。けれども、言葉も思考も何もであった。

ハハっ。と、楓は軽く笑う。

 「そりゃそう。退魔師はあやかしを滅する為の存在。なんで人間護るのは当然だろ。」

 彼女が言うと鎮音は何も言わず灯馬達を見据えた。白い光を放つ右手を向けながら。

 すると、水月が口を開く。躊躇いながら。

 「………あ……えっと……なんかすっごく嫌な気分になるんだけど、でも……私達には力が足りないから、楓ちゃんの負担にならない様に鎮音さんの力を有難く受け止める。ごめんね?なんて言っていいか解らないけど……、私は楓ちゃん達の枷にはなりたくない。出来たら護りたいと思ってる。烏滸がましいけど。」

 ふわっとしたマロンクリーム色のロング髪をした少女はそう言った。髪型同様にその気質もふわふわっとしており優しく楓を包む娘である。水月の言葉に楓は、はははっ。と、笑う。

 「バカだな、水月は。枷?んなワケあるかよ。オレはお前らにすっげぇ救われてる。だって葉霧を一緒に護ってくれる仲間だ、それにオレの事もフンバ、お菊の事も否定しねぇし拒否らねぇ。寧ろすっげぇ大事にしてくれる。なんでオレはお前らに感謝しかねぇよ。」

 「…………楓…………。」

 夕羅はうるっとしたのか、、、その目元を指で拭って笑う。

 「当たり前じゃん!あたしらが楓達を拒否るなんてナイ!友達なんだから!」

 その言葉に水月がうん。と、頷いた。彼女もまた鼻を少し啜り言う。

 「そうよ。だから楓ちゃんが行くならあたしも行くからね?幻世。楓ちゃんはあたしの大切な友達なの。初めて出来た“親友”だから。」

 「え………?」

楓が驚いたところに鎮音が言う。

 「盛り上がってるところ悪いが放つぞ?先を急ぎたい。」

あ。と、、、女子達は鎮音を振り返った。楓は苦笑いする。

 (こーゆうとこ……むっちゃ葉霧そ〜っくり!)

鎮音は何もかもお構いなしで白い光を放つ右手を向けて言う。

 「“鎮守”!」

 カッ!!

それは爆風だった。

 うわっ!!と、、、灯馬達はその白い光の爆風に煽られながら目を閉じていた。正に突風だったのだ。

 が、その白い光は葉霧、灯馬、秋人、夕羅、水月を包み発光する。鎮音は風に煽られ光に包まれる彼等を見ながら右手を降ろした。彼女の手から白い光は消えていた。

 「…………!」

 (すげぇ………物の見事にオレらあやかし全スルー………。葉霧に肩ぐるまされてるお菊も無影響。)

 楓は風に煽られ光に包まれたのが葉霧たち人間だけで、自分達はまるで存在してないかの様に影響を受けなかった事に驚いたのだ。

 少しすると風は止み葉霧達を覆っていた光も止んだ。

静かに目を開ける、、、誰もが。

 「…………終わったんか??」

灯馬が目を開けながらそう言うと鎮音は言った。

 「言うておくがこれは私の力より強者は滅せない、良いか?無敵ではない。この先を進むにしても戻るにしても必要だから施した。その力は私が滅ぶまで持続する、悪しき者を跳ね返しお前達を護る盾だ。私の力より弱き者は跳ね返され滅せるが、同等にはダメージを与える、が、滅せる確率は50%。私より強者には微力でありお前達自身で倒す他ない。精進を怠るな。」

 鎮音が言うと、誰もが頷いた。灯馬が言う。

 「解った。ありがとな、ばーさん。」

 「……………。」

鎮音は何も言わず彼等を見据えていたのだった。  

    

 

           

     

  

  

   

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