後日談 3話
「グレイン、ちょっと下がってろ」
「……はい」
悔しそうな表情で、グレインはティアをかばえる位置に下がった。
気持ちは分かるが、神力を持たない人間では神力使いには為す術がない。
実質戦えるのは、現状俺と夕陽だけだ。
「覚悟しろよ、てめぇ」
「覚悟など、必要ない!」
男は合掌し、その手を開く。
すると、手の間に光る槍が出現した。
これ自体から神力の気配がすることから、おそらくは神力だけでできているのだろう。
まともな武器で受ければ、一撃で砕かれる。
「ゲート、黒丸・マークツー」
俺は死神の特権で小さなゲートを開き、漆黒の大剣を取り出す。
異世界をともに生き抜いた、俺の相棒だ。
砕かれたこともあったが、今はこうして俺の神力を混ぜこんで作り直し、神になった俺に合うように改造してある。
「夕陽、後ろから支援を頼む。万が一のときは、後ろの二人を」
「分かった、守ればいいんだね?」
「ああ。行くぞ!」
俺は黒丸を男へと突き出す。
男は槍でそれを受けるが、神力自体に差があるため、大きく後ろへ吹き飛び夕陽が作った穴から外へ飛び出した。
「ここじゃ戦いづらかったんだ。これで思う存分振るえるぜ」
黒丸を肩に担ぎながら、俺も穴から外へ飛び出す。
どうやら城の裏手に飛び出したようだ。
空中浮遊をしながら下を見下ろせば、男がゆっくりと立ち上がる瞬間に立ち会えた。
「来いよ、スキンヘッド」
「貴様……何者だ」
「どこかで神様やってるもんだ。図が高いぜ」
俺は一瞬で男の前へと移動すると、そのまま黒丸を叩きつける。
とっさに槍で受けようとするが、もう強度がどんなものかは把握した。
真っ直ぐ振り下ろされた黒丸は槍を切断し、男の左半身を深々と斬り裂く。
「ぬぐっ!?」
「こちとら本家だ。その程度の神力じゃ防げるわけねぇよ」
「がっ……」
男は大量の出血を起こしながら、膝を地面につく。
勝負はあった。
しかし、確保して話を聞き出そうと近づくと、男は突然高笑いを始める。
「なるほど、なるほど! 貴様が神人戦争のときの死神か! お目にかかれて光栄だ!」
「……何だ、お前」
「私たちは人の身で神を生み出すための研究を行う機関、神域教団である。人には手に余る神力を制御し、人としての力も持ちつつ神へと近づく。それを可能にした大いなる教団である!」
「へぇ、そいつはずいぶん身の程知らずだな」
「言っていろ。我々はじきに貴様ら現神を越える。そうして、神域にいる神をすべて引きずり下ろすのだ!」
俺は男の顔面に蹴りを叩き込む。
大きくのけぞった男は引き飛び、数度地面を跳ねて止まった。
「そんなことはさせられねぇな。てか、できるわけないだろ」
「くっ――――かはははは! それはどうかな……」
こいつ、思った通りかなりタフだ。
殺す訳にはいかないから手加減したとはいえ、あの蹴りでこの程度のダメージというのはおかしい。
「まずは死神……貴様に見せてやろう! 自らが神の座から引きずり降ろされるところを!」
男の神力が爆発的に跳ね上がる。
そしてこれは――――魔力も?
「限界突破」
「っ!」
男の負っている怪我が、瞬く間に治癒される。
そして次の瞬間、男の体を光る衣が包み込んだ。
あの衣は、神力と魔力を混ぜ合わせて作られているように見える。
まさしく人と神の共存というべきか。
「これぞ我々が体現した、天ノ衣! 覚悟するのは貴様のほう――――」
「やかましい!」
俺は神力を込めて黒丸を振るう。
それだけのことで、衣は斬り裂かれ男の体に刃がめり込んだ。
そのまま振り抜くと、先程よりも酷い出血が男の体で起きる。
再び崩れ落ちた男は、呆然とした様子で俺を見上げてきた。
「そんな神力じゃ全然届かねぇよ。俺でも神界では末端の存在だぜ? 俺の一撃を受け止められないようじゃ話にすらならねぇな」
「ばかな……天ノ衣が……」
「馬鹿の衣の間違いだろ。唖然としているところわりぃけど、このまま拘束させてもらうから」
そう言いつつ、俺は男に手を伸ばす。
その瞬間、猛烈に嫌な予感がして俺は飛び退る。
男の様子がどこかおかしい。
いや、元々おかしかったとかそういう話ではない。
「私は使命を達成できなかった……役立たずには死、あるのみ」
「自分で何言ってやがる!」
俺は男のしようとしていることを察し、改めて捕らえるべく地を蹴った。
「人神様! 万歳!」
「チッ――」
間に合わない――そう思った次の瞬間、男の体を中心に、目を開けていられないほどの閃光と衝撃が発生し、耳をつんざくような轟音が響いた。




