後日談 1話
「異界門・閉門っと」
「久々だねー、こっち来るの!」
俺はあまり目立たないであろう人間国の近くから異世界に入った。
悪用することは出来ないが、念のために異界門も閉じておき、改めて異世界の空気を吸う。
「変わってねぇな、この世界も」
いつも見ているだけで、この地を踏んだのは本当に久しぶりだ。
もはや田舎に帰ってきた感覚すらある。
「それで、こっち来てどうすんだよ」
「ふっふっふ……幻の食材を取りに行こうと思ってね!」
「幻の食材?」
「異世界だし、それくらいどこかにあるかなって」
「なるほど、プラン無しか」
幻の食材自体があるかどうか分からない状態で、こっちの世界に来たらしい。
まあいいか。
一から探すのも、また乙なものだろう。
「それなら近いことだし、人間国に聞きに行くか。国王にでも聞けば何か知ってんじゃねぇかな」
「ティアに会いに行くんだね」
「博識でもあるからな、あいつ」
世界最高峰の魔術師であるティアならば、珍しい食材の取れる場所くらい知っているはずだ。
「よし、行くぞ」
「うん!」
まずは気ままに人間国まで散歩だ。
◆
一時間かそこいら歩いた俺たちは、ようやく人間国についた。
検問もかなり軽くなり、俺たちもすんなり入ることが出来る。
「結構賑わってるな」
「王様が変わってまだ少ししか経ってないのにすごいね……」
街並みはほとんど変わっていないが、国民の表情が心なしか明るい。
ティアが税を下げたなんて話をしていたが、かなり下げたんだろうな。
「さて、そんな救世主の王様に会いに行きますか」
「アポ無しだけど大丈夫かな?」
「ま、俺たちだし悪いようにはされないだろ」
王様を何だと思っているのか。
しかし仲間であるわけだし、今は無理でも後で会ってもらえるだろう。
国王がいるであろう城へ続く道を行き、しばらくして城門にたどり着いた。
「何者だ貴様ら!」
「許可無き者は通すことが出来ないぞ!」
そのまま入ろうとしたら、門番たちに止められてしまった。
そう言えばクレアシルの一件で、城は襲撃に遭っていたはず。
警備体制は当然強化されるよな。
「えっと、国王の知り合いなんだけど、通してくんねぇか?」
「そう言われて簡単に通すと思うか?」
「だよなぁ」
うーん、やっぱりアポ無しじゃだめか。
……いや、大丈夫そうだ。
城内から、一人の男が歩いてくる。
「え! セツさん! 来てたんですか!?」
「よぉ、グレイン! 元気だったか?」
駆け寄ってきたグレインの肩を叩く。
騎士団長になり、心なしか顔つきもさらにしっかりしている。
健康的な肌から、今の生活は充実しているようだな。
「僕の方はもちろん元気にやってますよ。あ、この方々は我々の親しい者だ。通しなさい」
「はっ! 失礼いたしました!」
よく教育されてやがるな。
この仕事を『業務』として、私情も入れず、手を抜かずこなしている。
「ほんとによく働いてるみたいだな、グレイン」
「まあ、それなりにですよ。お二人は気まぐれで会いに来てくださったんですか?」
「まあそれもあるんだが……」
「何か珍しい食べ物を探しに来たんです! こっちの世界ならそういうのもたくさんあるかなって!」
「なるほど! それならティアが詳しいでしょうね」
やはりか。
しかしティアの名前を口にした瞬間、グレインの顔が一気にやつれたのはどういった状況だろう?
「……ティアのやつが何かしたのか?」
「いえ……ティアはしっかりと働いてくれてます。業務をおろそかにしたことはないのですが……よくいなくなるんですよ」
「いなくなる?」
「ええ。しっかりと仕事をこなした後、姿を消すんです。女王なのですから、出来れば玉座に座っててもらいたいんですけどね」
「無理だろ」
「ええ、だから突然の謁見などはエルカや僕が受け持つんです。たまに重要な件も入ってくるので、気を張ってる必要があるんですよね」
だからやつれたのか。
「まあどこにいるかは分かってるんですけどね」
「一択だよな」
「ええ。せっかくですし、そこまで案内しましょうか」
俺と夕陽は、グレインのあとに続いて歩き出す。
ティアの魔術研究所へ向かって――。




