後日談 導入
バレンタインに合わせて始めます。
「あー、今日バレンタインか」
俺は日本の様子を見ながら、ふとそんなことをつぶやく。
楽しげな男女の様子に、俺は少しだけため息をついた。
異世界の連中はバレンタインを知らない。
だから俺の希望は夕陽だけなのだが……。
「おっまたせー! ユキくん!」
「おかえりー……って、お前まさか」
夕陽の手には、スーパーの袋が吊るされている。
どう見ても、その辺のスーパーのやつだ。
「今日はバレンタインだからね! 腕によりをかけて作るよ!」
「チョコを……?」
「うん! チョコを!」
……嫌な予感がする。
夕陽はスキップでキッチンに向かった。
まあ、この空間のキッチンってその辺に浮かんでいるだけなんだが。
結構長いことこの空間で過ごしているが、いまだに謎のことの方が多いんだよな。
「待っててね! 夕陽スペシャル作るから!」
「……おう」
そう言って材料を漁り始める夕陽。
――――正直に言って、夕陽は料理が下手だ。
何を作るにも大抵火力を間違え、焦げた黒い物質が出てくる。
結構教えたんだけどな、結局今まで治った気配がない。
心配だ。
めちゃくちゃ心配だ。
「うーん、やっぱり私らしさが足りないかも……」
「そ、そんなアレンジ加えなくてもいいんだからな? 何事も基本が大事だぜ?」
「そうなんだけど、うーん……」
よくない傾向だ。
料理下手のやってはいけない行為の一つである。
独自のアレンジを入れて料理を壊滅させるやつ。
「あ、そうだ! ちょっと異世界行こうよ!」
「え?」