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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第五章 七聖剣編
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113 神の気配

「やめるんじゃ、クレアシル!」


「なぜ止める? デストロイア」


 人間の文明を破壊しようとした我を、止める手があった。

 デストロイア、ともにこの世界を築いた存在である。

 

「人間には命がある、心がある! 儂は人間から様々なものを学んだんじゃ! 消されては困る!」


「感情? 何だそれは。必要なものなのか?」


 デストロイアはひたすら声を荒らげる。

 どうしたことだろう。

 数百年前には静かなやつであったのに、今は――――。


 ――――デストロイアが、人間と同じに見える。


「……分かっているのか? 人間はこの世界で唯一我の意思の外で誕生した生物なのだ。この世界を、我らの想像したものと別の世界にしてしまう可能性がある」


「だとしたら、それも受け入れるほどの器は貴様にないのか……?」


「器? よく分からん。我は、我に任されたこの世界を示された通りの世界にするのだ。それが理想であり、『天界』から与えられた使命であろう?」


「ッ……!」


 デストロイアは何が気に入らなかったのか、我に掴みかかってきた。

 

「誤算は誤算でも、人間は嬉しい誤算じゃ……殺すことは許さん」


「堕ちたな、デストロイア」


「何とでも言え! 人間を消すな! そう言うまで離さん!」


「……分かった。貴様がそこまで言うなら、今は生かしておこう」


「ほ、ほんとか!」


 デストロイアの顔が晴れる。

 我を掴んでいる手の力も緩んだ。

 デストロイアは、我の友である。

 そんな友がここまで必死になっているのだ。

 少しは聞いてやろうと言う気にもなる。


「……ただし、人間がなんらかの害をなす行為をすれば、そのときは始末する。そのときは止めても無駄だぞ」


「わ、分かった……」


 見逃して、かなり完成に近づいてきた生態系などを壊されてもかなわん。

 そのときは、容赦なく人間という生物を消すべきだろう。

 

 例え、デストロイアと決別したとしても。


「忘れるな、我らは神。『天界』に仕える神だ。『天界』は我らにこの世界を与えてくださった。我らはこの世界を理想の形にするのだ」


「……分かってるのじゃ」


「ならいい」


 我はその場から去る。

 デストロイアも、あと100年もすればもとに戻るであろう。

 長く生きすぎている、こういう気の迷いも、一度くらいある。


 デストロイアは優秀な女だ。

 

 きっと戻ってくる。


◆◆◆

 力と力のぶつかり合い。

 剣と鎌がぶつかるたびにクレータの中がさらに凹み、地が揺れる。

 雲は吹き飛び、彼らのいる島だけを日が照らしていた。


「ラァ!」


「むっ」


 セツの振った鎌が、クレアシルの衣服を切り裂く。

 

「もういっちょ!」


 身体を反転させて、もう一度セツが鎌を振る。

 クレアシルは避けたが、髪の毛が数本宙を舞った。


「ひらひらしすぎだぜ。最後は坊主になっても知らねぇぞ」


「ふむ……確かに非合理的な格好であったな」 


 一度構えを解いたクレアシルの姿が、変わっていく。

 腰まであった長い髪の毛は、肩口で切りそろえられた形に。

 白い衣のような服は収縮し、クレアシルの身体にピタリと張り付く。

 人外的なスタイルを強調するような服だ。

 

「この方が動きやすい」


「でも威厳は消えてるぜ?」


「威厳に拘る神は二流だ。神というのは、どんな姿であろうと、圧倒的な差を見せなければならない」


「そうかい!」

 

 セツはクレアシルの後ろを取れるように動き、鎌を振る。

 鎌が当たる前に、クレアシルの姿が消えた。


「っ! チッ!」


 空振りした鎌が地面を抉る。

 セツは、自分がクレアシルの姿を追えなかったことに驚きを隠せなかった。

 

「遅すぎるぞ」


「がっ」

 

 直後、真横からの衝撃。

 反射的に腕でガードを挟んだというのに、セツの身体は消えたようなスピードでクレーターの端に叩きつけられていた。

 クレーターの端にもう一つ大きなクレーターが出来上がる。

 その中心で、セツはうめき声をあげた。


「お、おいおい……話がちげぇよ」


 身体を起こしながら、セツはガードした腕を見た。

 その腕は、見るも無残に粉砕され、歪な形になっている。

 骨が骨の機能を果たしていなかった。


「治るのにも数秒かかるな、こりゃ」


「数秒も与えると思うか?」


「……だよな!」


 セツは片腕で後ろに鎌を振る。

 後ろからしたはずの声の主は、すでにそこにいなかった。

 

「ほれ、どうした? 強いのは言葉だけか?」


(速すぎっ……だっ……ろっ!)


 クレアシルはセツの周りを動いているのだが、それを目で追うことが出来ない。

 ただ、クレアシルは走っている気配がない。

 

「歩いてこれかよ!」


「外れだ」


「ごっ――――」


 セツは自分の周りを一周するように鎌を振ったが、手応えはない。

 代わりに、飛び上がったクレアシルのかかと落としが、セツの脳天を捉える。

 指先まで伝わる衝撃がセツを遅い、気づけば地に伏していた。


「理解しろ。これが神の高みだ」


 クレアシルがセツの頭を踏みつける。

 それだけで、地面が揺れた。

 セツはうめき声を上げ、クレアシルの足を掴む。


「ど……け……」


「聞こえんな」


「ぐあっ」


 クレアシルは足裏を動かし、セツの頭を踏みにじる。

 

「このまま頭を潰してやろう。哀れな虫め」


「――――おい、ストロー」


 クレアシルの足を掴みながら、セツはつぶやく。

 その言葉に、離れた所にいたデストロイアが反応した。


「なんじゃ? もう音を上げるのか?」


「うるせぇ……そろそろいいだろ……っ! この身体じゃ歯が立たねぇよ」


「何を話している?」


 クレアシルはデストロイアの方に顔を向ける。

 デストロイアは、ただ悪い笑みを浮かべているだけだ。


「――――よし、いいじゃろ。時間制限は理解しているだろうな?」


「当たり前だ……時間制限は――――」


「「――――10分!」」


「ッ!?」


 突然、クレアシルの視界を光が覆う。

 一瞬眼を閉じてしまい、再び開いたときには、足の下にいたセツはいなくなっていた。

 

 そして、クレアシルはバランスを崩して片膝をつく。

 

「何だと……」


 クレアシルの片足が、なくなっていた。

 太ももの中間辺りでばっさりと、消失していたのだ。


「探しものはこれか?」


「!」


 振り返ると、そこにはクレアシルの片足を持ったセツが立っていた。

 ハイライトのない漆黒の眼、まるで仮面をつけたかのような、表情のない顔。

 少なくとも、先ほどまでクレアシルと戦っていた人間とは、見た目以外のすべてが違う存在。

 そう言った印象を、クレアシルは受けた。

 

「……何をした」


 片足を生やしながら、クレアシルは質問する。


「ただお前の足を斬っただけだ。そんなに大したことはしていないぞ」


 足をそこら辺に捨てながら、セツは答えた。

 

「なぜだ……なぜ貴様から神の気配がする!」


「分かってんだろ?」


 セツは、クレアシルが反応出来ない速度で後ろを取り、言った。

 

「俺も、お前と同じだったんだよ」


 クレアシルの首が舞う。

 回る視界の中で、クレアシルは舌打ちした。


「神に……なったのか」


「どうにも、そういうことらしい」


 クレアシルの首を一刀で切り捨てたセツは、無感情な声でそう言った。


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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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