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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第五章 七聖剣編
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112 厄介な虫

「貴様を助けたのはデストロイアか……」


「見りゃ分かんだろ。おかげさまで身体もいい調子だぜ」


 セツはゆっくりと歩き出し、クレアシルの目と鼻の先まで移動する。

 双方睨み合いが始まると、セツが口を開いた。


「そういや、お前に返さないといけないもんがあるんだわ」


「貴様に何かを与えた覚えはないが」


「あるよ。ほら、帰すぜ」


「がっ――――」


 セツは、クレアシルの顔面に拳を叩き込んだ。

 今までにない衝撃を受けたクレアシルは、地面をバウンドして大きく吹き飛んでいく。


「これがお前に〈消失〉されて色々失ったお返しだ。さて、始めようぜ。人を殺したいんだろ?」


「……」


 クレーターの端でようやく止まったクレアシルは、一歩でセツの眼の前まで戻ってくる。


◆◆◆

 セツがクレアシルを殴り飛ばした光景を見ていた冬真は、思わず呆気にとられていた。


「すごい……クレアシルを一撃であれだけ吹き飛ばした……」


「儂が鍛えたんじゃからの、当たり前じゃ」


「っ!? あんたは?」


「儂は破壊神デストロイア。クレアシルの対になる神じゃ。立場としては、お主らの味方じゃよ。どれ、その女の身体を見せてみ」


 デストロイアは、横たわる夕陽の横に膝をつく。

 夕陽は荒い呼吸を繰り返しており、意識もほとんどないと言える状況に陥っていた。

 直に死んでしまう、そんな死と生の狭間をさまよっているのだ。


「――――なるほど、命を使いすぎた代償じゃな。これでは長く持たん」


「……助けられるの?」


「やってみよう」


 デストロイアは、夕陽の身体に手を置く。

 そこから黒い光が漏れだし、夕陽の全身を包み込み始めた。


(破壊の性質を酷使しすぎじゃな……代償は全身の組織の死滅。内臓全部が死滅していないだけマシか。どの道助けることは出来るが――――む?)


 夕陽の体内を探っていると、デストロイアはあることに気づいた。


(ふむ……こいつは驚いた。微量の神力を感じると思えば、あやつの加護を受けた人間じゃったか。命だけはその加護が守っているようじゃの。通りでこの身体で生きてたわけじゃ)


「ねぇ、ほんとに大丈夫なの!?」


「あーあー! 心配せんでもすぐ治せる。儂の力は万物の破壊! こやつの負った『代償』自体を壊してしまえば解決じゃ!」


「『代償』を壊す?」


 直後、冬真の耳に何かが割れる音が響いた。

 音はどうやら夕陽の身体から聞こえたようで、冬真は彼女の身体を観察する。


「なっ」

 

 すると、夕陽の全身に回っていた炭化が、みるみる元の肌に戻って行く。

 表情も穏やかになっていき、ついに完全に意識を取り戻した。


「ん……あれ……?」


「起きたか、当分は動けぬぞ、魔力や体力は戻っておらぬからな」


「ゆ、ユキくんは……!」


 夕陽がデストロイアに掴みかかる。

 驚いた顔のまま、デストロイアは冬真に助けを求めた。


「ほら、セツならあそこだよ」


「あ……」


 冬真がデストロイアから夕陽を強引に引き剥がし、クレーターの中心の方を向かせる。

 そこにいたセツの姿を見て、夕陽は安心したように胸をなでおろした。


「よかった……ほんとにユキくんだ……」


 遅れて涙が流れ始め、夕陽はそれを拭った。


「わ、私たちも加勢に行かないと!」


「それはやめとくんじゃ」


「え?」


 立ち上がろうとした夕陽を、デストロイアが止める。

 

「今から始まる戦いは、お前たち人間が入り込める内容じゃない。無駄死したくなければ、大人しくここで見とれ」


「でも! ユキくんだって人間――――」


「違う」


 デストロイアは、夕陽が最後まで言葉を言い切る前に、その言葉を否定する。

 夕陽は、その態度から明らかに違う雰囲気の重みを感じた。


「よく見とけ。あれが人成らざる者たちの戦いじゃ」


◆◆◆

「人を捨てたか」


「まあな。お前をぶっ飛ばすために、そこまでやってやたんだぜ? 何か言うことあるんじゃねぇか?」


「愚か者と言っておこう。なぜなら――――」


 ――――急ごしらえで神力を身につけたからと言って、神には届かない。


 クレアシルは、セツの胴体に拳を放つ。

 セツはそれを掴みとり、もう片方の腕を大きく振りかぶった。


「誰が届かないって?」


「なっ!」


「オラァ!」


 そのまま振りかぶった腕で、クレアシルの顔面を殴り飛ばした。

 再び吹き飛ぶクレアシルに一瞬で追いつき、セツはクレアシルの頭を持って地面に叩きつける。


「ほら、どこが届かないか言ってみろ。クソ神様!」


「貴様……!」


 クレアシルは足でセツの脇腹を蹴り、身体ごと吹き飛ばす。

 地面を数回バウンドして何とか止まったセツは、怒りの形相のクレアシルを見てニヤリと笑った。


「いいぞ、その余裕のない顔! その顔が見たかったんだぜ!」


「虫がァ!」


 クレアシルとセツはお互いに近づくと、同時に拳を繰り出した。

 両方共お互いの頬を捉え、左右に吹き飛ぶ。

 このときクレアシルは、自分が人間相手に本気で拳を握っていることに、少なからず動揺していた。


「どうした神様! 効かねぇぞ!」


「図が高いぞ――――虫が!」


 クレアシルは手を天に掲げる。

 すると、セツの頭上に数万本の剣が一面に現れた。


「終わりだ!」

 

 それらは、一斉にセツの元へ剣先を向けて降り注ぐ。

 一つひとつは大剣よりも一回りも大きく、今のセツであっても無事では済まないだろう。

 しかし、セツは特に焦る素振りも見せず、冷静に口を開いた。


「舐められたもんだぜ――――来な! 大食い(・・・)!」


 セツが手をかざすと、黒い装束の一部が切り離され、手の中で別の形を造り始める。

 長く、巨大で綺麗に反った刃を持つそれは、大鎌と呼ばれる代物だ。

 歪んだ柄を持ち、刃に大きな口がついているそれを鎌と呼べるかどうかは、人によって意見が割れそうではあるが――――。


「ごちそうだぞ! 大食い!」


 上空に向かって、セツは大食いを一振りする。

 すると、大食いが通った軌跡が黒く染まって宙に残った。

 残った黒い空間は、大きな牙を生やして徐々に開いていく。

 漆黒の口が、降り注ぐ剣たちを待ち構えていた。

 

「何だ……それは……」


 空中に開いた口は、範囲内に落ちてくる剣をすべて食らっていく。

 下にいるセツは、もちろん無傷。

 したり顔でクレアシルを見ていた。


「ごちそうさん、美味かったかどうかはこいつに聞いてくれ」


「げぇっぷ……」


 宙に現れた口は一度ゲップをすると、端からその姿を消していく。

 セツは大食いを肩に担ぎ、近くに刺さってた剣を蹴り飛ばした。

 宙を舞う剣の下に大食いを移動させると、落ちてきた剣をそのまま鎌が食してしまう。


「お前がいくら何かを創造しようが、こいつが片っ端から食らってやるよ。遠慮しないで来な」


「――――甘く、見すぎていたようだな」


 クレアシルは一切の油断もない顔で、セツを睨んだ。

 ようやく冷静さを取り戻し、セツと言うイレギュラーな存在と向き合う用意が出来たらしい。


「貴様を敵と認めよう。名乗れ」


「この期に及んで命令かよ……まあいいや。セツだ。これからお前を殺す。よろしくな」


「創造神クレアシルだ。貴様を『厄介な虫』と定めて、少し力を解放して相手をしてやろう。感謝するがよい」


「そりゃどうも!」

 

 クレアシルは白銀の剣を手に創りだし、地を蹴る。

 セツはそのまま大食いを構え、突っ込んだ。


 2つの力がぶつかり合い、衝撃が走る――――。

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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