表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ざまぁ配信局  作者: 椿乃朱華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/34

勇者が休んでいる間に魔王を倒したら、国は動く? 動かない?2


 :どうして先代勇者が魔王城にいるんだ?

 :なんだこれ。役者を雇ったドッキリ?

 :パンツ一丁でウケるんだが


 実況者たる私は、流れていくコメントを見ながら、魔王を騙った先代勇者の姿を配信に収めていた。

 ミダスさんに四肢を固められ、パンツ一丁で関節を決められる、情けない姿を。

 彼が動けない間に、賢者様がカメラに向き直り口を開いた。

 語られたなのは、この国の真実。

 勇者と魔王のからくりだ。

 

 以前シローネの件で助けることになった、商人のガランさん。

 彼から教えてもらった魔王と勇者の真実は、この国の歴史をひっくり返すものだった。

 勇者が決まり、魔王を倒しにいく。

 その過程で生まれるものは、莫大な富だった。

 

 まず、勇者の威光を示すお祭りであるパレードで経済を潤す。

 今回行われたような武闘大会で、八百長を交えた賭博をしながらさらに儲け。

 時間をかけて国に金を落とさせた後は、勇者のいく先々で人為的に魔物を召喚し、それを勇者に倒させる。

 そうすると、助けられた民が国への感謝として税を追加で支払う。

 そんな旅の過程を続けてから、魔王城にて魔王と相打ちしたとの報を国へ流し、魔王の役目を入れ替える。

 そうして勇者がいなくなった後も、讃える名目でお祭りを催したりと、とにかく国民にお金を使わせるような仕組みをしていた。

 一連の出来事は数十年周期で行われ、魔王が老衰しかけた頃に、入れ替えるというシステムであるらしく。


 それを知った賢者様は、そんなことのために、彼によくしてくれた者たちが殺されたのかと、目に見えて落ち込まれていた。


 そして、彼が親しかった者が死んだのは、賢者様がその代の魔王を倒し、システムをぶち壊したせいだったことを知ると、彼はひどく憔悴した。

 自分のせいで、罪のない人々が殺された。

 その事実を知った彼は、また暗く深い穴倉に戻ろうとしたけれど、それは私たちが全力で止めた。


 おかしいのは国であって、賢者様ではない。あなたが望むならば、この国の歪んだシステムを、根本から打ち崩して、居場所を作りましょう、と。


 最初は、何も知らない今の民たちを巻き込むことに悩んでいた賢者様だったけれど、私たちの思いを聞いて、最後には頷いた。

 腐った勇者システムを打ち崩す計画を立てている最中、まだどこか後悔があるように見えた賢者様を、気分転換がてら、ピクニックキャンプへお誘いすることにした。


 そこで、武闘大会の障害になるからと排除されそうになっているミダスさんを助け、彼女の都合に乗るように、勇者の地位を貶めるため武闘大会を荒らしを実行。


 これで気持ちに区切りがついたのか、賢者様は、今回の暴露に前向きになった。

 歪んだ国のシステムを、根本からひっくり返す。

 例え、それで国が混乱するとしても。


 事実を飲み込めていないコメント欄に水を浴びせるように、賢者様が、勇者と魔王の実情を説明していく。


 コメント欄は、案の定大荒れ。大混乱の様相を呈していた。


 そんな中、賢者様はぽつりと言った。


「正直、これを見ている人には悪いと思っている。勇者と魔王なんてほとんどの人にとっては他人事だろうし、そのせいで人が死んだなんて、想像もできないと思う。けれど、俺は、俺に優しくしてくれた人たちは、このシステムのせいで迫害された。この先、俺のような人を生み出さないためにも、この歪んだシステムは崩さなければならない。そう思ったから、行動した」


 :そっか。俺たちにとってはただの歴史でも、賢者様にとっては昨日のような過去なのか

 :ちょっと想像がつかねえ

 :でも、こんなことされたら国が終わるぞ


 コメント欄が、賛否に分かれる。それを見たわけでもないだろうに、賢者様は声を張った。


「この先、混乱する国で生きる皆には、酷なことをしたとは思う。仮初でも平和の上で生きていたかった思う人も沢山いるだろう。だから俺は、この魔王城を乗っ取り、新しく国を作ることにした」

「えっ」

 

 初めて聞く話に、思わず声を出してしまった。

 大事な話であることはわかったので、すぐに口を慎み、彼の姿を画面に映す。

 賢者様は、堂々とした様子で、続きを口にした。


「ただ、俺は王になれるほど賢くない。政治だって敷けるわけじゃない。俺は、今手伝ってくれている仲間の力を借りなければ、まともに策すらも実行できなかったと思う。だから、皆の力を借りたいんだ。それは、今の仲間だけじゃない。これから仲間になる、俺の国の民になる人にもお願いしたい。俺は、俺の下につく者たちを守る。その代わり、国を維持するために、皆にも協力して欲しい。上手くいくかはわからない。けれど、俺一人じゃ、どっちにしろダメにしてしまう。皆で、国の行先を決めるんだ。上層部の思惑で、歪んだシステムが生まれないように」


 その言葉はコメント欄にうねりを生んだ。

 バカなことを言うなと罵る者。

 乗り気な者。

 考えあぐねている者。


 様々な言葉が飛んでくるけれど、その向こうには、一人一人の人間がいることを想起させた。


 彼らの中から、仲間になりたい人を募る。

 今は顔が見えないけれど、この向こうに、私たちの仲間になる人がいるかもしれない。


 もちろん、今の仲間とは意味合いが違ってくるだろう。

 それでも皆で力を合わせて国を作るというのは、なんだか素敵なことに思えた。


「これが、今回の騒動に対する、俺の責任の取り方だ。もちろん、来たい人だけで構わない。賛同できない人もいるだろう。申し訳ないけれど、俺の手はそんなに大きくないから、ついてきてくれる人のものしか掴めない。そこは申し訳ないと思っている。後でフォームを作るから、そこに連絡してくれたら迎えにいく。この先の人生を決めることだ。よく考えてから、申請して欲しい」


 賢者様言いたいことを述べると、私に合図をしてきた。

 言いたいことは言ったということだろう。


 さて、締めの挨拶を……と思った時には、配信が切れていた。

 これは……国の方にジャックされた?

 なんでこんなにタイミングよく、賢者様が言葉を終えるまで持っていたんだろう。


 もしかして、賢者様がなにか細工をしていたのかな?

 そうだとしたら、末恐ろしい。

 結局、国は私たちを止めるために動いたけれど、それは一歩遅かった。

 私たちは、やるべきことやった後だから。


 もう配信が切れているなら、他人の目を気にしなくていいので、賢者様に話しかけた。


「賢者様、国を作ることにしたんですね」

「……あぁ。武闘大会の打ち上げをした時、決めたんだ。ここにいる仲間の居場所を守る、って。それには、俺だけの手じゃ足りないと思った。きっとまた、前みたいになる。それは嫌だったから、なら俺の国を作ればいいと思ったんだ。居場所ができれば、迫害されることもないはずだから。……まぁ、視聴者の皆が本当に来てくれるかはわからないけどな」

「……来ますよ。きっと。前にシローネが言ったように、賢者様に好感を持っている方は多いんですよ。まぁ、百年も前の人だから、どこかキャラクターみたいに扱われているところもあるかもしれませんが……私たちはあなたの良いところを知っています。この先、時間がかかったとしても、私たちの仲間を増やせるように私も頑張りますから。だから、あまり心配しないでください。一人で全部、やろうとしないでください。私たちはあなたの仲間なんですから」


 賢者様は、ぽりぽりと頬をかくと、少し恥ずかしそうに言った。


「じゃあ、さっそくお願いがあるんだけど……」

「なんでしょう? 私にできることならなんでもしますよ」

「なんでもはいいすぎだよ。他の人に、気軽にそういうこと言うのはやめなね」

「賢者様相手じゃないと言いませんよ、こんなこと」

「そう、それ。その賢者様ってのを、やめて欲しいんだ。なんかよそよそしくて、寂しい気持ちになる」

「なんだ。そんなことなら早く言ってくださればよかったのに」

「いや……まぁ、俺は遠い昔の人だから、それも仕方ないかなと思ってたんだけど……国を作る中核の仲間には、もっと親しげに呼んで欲しくて」

「なら、ユウヤ様とお呼びすればよろしいですか?」

「あれ? 俺、名前教えたっけ」


 ユウヤ様は、少しびっくりしたような顔で、こちらを見た。口を開けているその姿が、なんだか可愛くて、思わずカメラ手に持ったままのスマホで、写真を撮ってしまった。


「以前、商人のガランさんと会った時に一度。その時に覚えました」

「よく覚えてたね……でも、様はいらないかな。なんだか他人行儀で嫌だ」

「わかりました。ユウヤ、これからもよろしくお願いしますね」

「あぁ、よろしく頼む」


 差し出された手を、しっかりと握り返す。

 今日ここから、私たちの新たな歴史が始まるんだ。


 ユウヤの、いや、私たちの作る国の歴史が。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ