表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムになった私が拾った体を使って好きに生きる話  作者: あやちん
<四章> Crossworld ―『異』世界からの帰還―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/112

〘八十五話〙変化、あるいは同化?

 元自分の家から出た私は今後のことを考えようと寂れた公園のベンチに座りみました。

 サラリーマン時よく飲んでいたブラックコーヒーを自販機で買ったので、とりあえず飲んで落ち着きましょう。


「ぶふっ」


 に、にっが、まっず!


 ミーアの子供舌にやられました。

 ついその場でふき出してしまいました。


 …………。


 気を取り直し、ココアを買って飲みました。


「ぷはぁ~」


 ココアは甘く優しい味で、とてもおいしかったです。


 でもなんだか負けた気がします……。



 そ、それはさておき。


 元自分の家から出てきたものの、これから先どうしたらいいのでしょう?

 現代日本は幼い体で身元保証もない私にとって、とてつもなく生きづらいところなのです。


 ネカフェとかに入り浸るにしたって本人確認必要でしょうし……。


「う~~~~ん」


 …………。


 うん、いくら悩んでも何にもいい案浮かばないです。


 とりあえず正攻法ではこの日本に私の居場所が作れないのは間違いないです。そうとなればこれはもう能力とか使って裏から手を回すしかないと思うのです!


 で、裏からって言ってもどうすればいいのでしょう?

 普通のサラリーマンだった私には皆目見当もつきません。



「ああもう、鬱陶(うっとう)しいですねぇ」


 さっきから考え事してる私の頭をツンツンしてくる精霊たち。

 そういえばこの子たちのこと、すっかり失念というか無視してましたが、街中歩いてた時も特に誰の注意もひかなかったですね。


 むしろ目立ってたのは私ばっかでした。


「あなたたち、他の人たちからは見えないんですかね? でもそうだとしてもあまりフラフラしないでくださいね。なにしろここには魔素ないんですからね。私の目の届かないところで燃料切れになっても私は知りませんからねっ」


 勝手についてきた精霊の面倒なんていちいちみてられませんから。

 行動は自己責任でお願いします。


 わかったのかわからなかったのか、よくわかりませんが精霊たちのツンツンがより激しくなったし、まぁわかってくれたのでしょう? そう思っておこう。


「とりあえず困ったときは魔法です。魔法で大体のことは解決できます!」


 私はもう考えることを放棄し、勢いで適当に済ませることにしました。

 もうね、場当たりでなんとかなるでしょ。ヤバくなればどこへでも逃げればいいのです。


 究極、またどっかの湖にでも(こも)る選択肢もあります。富士山麓にはたくさん湖ありますし、大きさで言ったら琵琶湖なんていいんじゃないでしょうか。ちょっとここからだと遠いですけれども。


 っていうか、それ、とても魅力的な考えに思えてきた。


 ああ、でも籠るにしても故郷の湖と違ってこちらでは受け身でいたらいつまでたってもスライム体の増殖がはかどりません。


「ま、とりあえずどっかのネカフェに(こも)ってまずは作戦会議です! ボッチだけど」


 本人確認なんて、ズルすればいいのです。

 入るくらいならどうってことないのです。



***


 

 目立ちたくないのでスライム体による光学迷彩で姿を隠し、空を飛んで移動しました。

 街中の移動もそれです。


 適当にネカフェを見繕(みつくろ)って侵入。空いてた部屋を不法占拠といきましょう。


 不用意に入室されないよう簡易結界を展開、それと共に認識阻害もかけ、あたかもその部屋は貸し出し中であるように見せかけ、店員にもそう認識させます。システム的なところはどうしようもありませんが、それを使っているのは人です。どうとでも誤魔化せます。

 私が消費するだろう材料とか通信費とか……金銭管理的な矛盾が後々出てくるでしょうけれど、そんなの知ったことではありません。


 よい子のみんなは真似しないでね。

 まぁやりたくても絶対出来ないんですけれども。


 それにしても、この日本でもごく普通に魔法とか使えてしまって、ちょっと違和感半端ないですが、私の存在そのものが異物感満載ですし、さっきまでもさんざん使っておいて今更といったところでしょうか。



「よ~し、とりあえずの拠点ゲットです! まずは久しぶりの日本。満喫しようじゃありませんか」


 異世界でうん百年と生きてきたはずなのに、なぜかこの日本で生きてきたことはつい最近のように次々意識上に浮かんできます。読んでいた漫画や見ていたアニメのことだって昨日のことのように思い起こせます。


 これも向こうで水霊様とも呼ばれたスライム体というスペシャルな存在であったおかげなのかしらん?


 ドリンクバーで色んな飲み物をとっかえひっかえ飲み、コンビニでお弁当やお菓子を買ってきて食べ、見損ねていた漫画を一気読みし、アニメや映画を堪能したり、動画サイトで色んなコンテンツを楽しんだりしてダラダラと過ごし……、ふと気づいたらあっという間に三日が経ってました。


 寝ることさえしてませんでした。


 ええ、ええ。 


 自分で自分にドン引きです。

 


 これからどうするか考える! とか思っておきながらこれです。

 

 オヴィリーネ湖より深く反省しましょう、はい。




 私は堂々とこっそり不法占拠してる部屋備え付けのソファに横になり思考を巡らせます。決して眠るわけではありませんからね。


 しばらく敢えて考えないでいましたが……、そろそろ現実逃避から戻りましょう。

 

「あちらは今どうなってるのでしょう? 災禍の凶龍とかいう魔滓(まおり)をため込みまくった災いが居なくなったわけですから、ぶっちゃけ私が居なくても大丈夫になってるのでしょうけれど」


 向こうの人たちだけでなんとかなってたんだから、これからもなんとかなるのでしょうし。またやばくなったら第二の私みたいなのを女神が召喚するのかもしれませんけれど。


 っていうかそれか?


 あのクソ女神、また必要な状況になったら私みたいなのを用意すればいいって考えてるんだろ!


 女神的には私は余りにも何もしなさすぎるやつ、とか思ったのかもしれない。

 でもそれは私みたいな引きこもり気質のおっさんを、そんな役に押し付けた女神が悪いと思いますね!


 私は悪くない。


 私が湖に引きこもって、そのせいで凶龍になるのを助長してしまったのだとしても……、そんなことは私が知ったことじゃあないです。


 女神だって放置だったじゃないですか~。



 はっ。



 そんな、済んだことはもうどうでもいいですね。


 …………。


 あの世界。

 あの世界に戻ること……、出来るのでしょうか?


 日本はとても便利でらくちんでご飯もおいしくって、とても快適な暮らしができる……はず。

 い、今はともかくそのうち出来るようになります!


 でも。

 でも、それだけです。


 ここにはもう私の居場所がありません。

 サラリーマンのおっさんだった頃だってボッチコミュ障ぎみのやつでしたが……、それでもあの時は居場所がありました。


 けれど今の私にはなんの()り所もありません。

 誰にも認めてもらえません。

 大手を振って暮らすことも出来ません。


「寂しいです……」


 ああ、スライム体で湖で暮らしていた時だってこんな気持ちになんてならなかったのに……。



「アンヌに会いたいです。ドリスやオルガ。それにリイ=ナやシイ=ナ。みんなにまた会って……、色々お話がしたい」



 私の心はもう向こうの世界が自分の居場所だって、故郷はすでに向こうなんだって……、そう認識してるのです。



「帰りたい――」



 ミーアの目からまた暖かいものが流れ落ちてきました。

 私の感情にミーアの体が呼応しています。


 この体は完全に私の一部になってしまったのでしょうか?


 借り物であったはずのミーアの体。

 スライム体を全身に浸透させてあったとはいえ、所詮別の生き物。交わることなどないはずだったのに。


 涙もそう、頭から移れなくなったのもそうですが、日に日にこの体が本当に自分であるかのように感じられてきています。


 スライム体を通してではなく、まさに自分の体であるかのごとく。


 女神の呪いだと(そし)りもしましたが、すでにこの体に愛着がわいてるのも事実。随分傷んでしまいましたがそれでもアンヌに可愛がってもらえたのはミーアの体があってこそです。


 膝から下がない左足を上げてみます。

 今は出歩くこともないので義足代わりの木の棒もつけていません。


「ああ、この足だってスライム体であるなら意識を向けるだけでみょ~んと伸ばして終わるのに。みょ~んって……」


 出来ないとわかっているけど、ふと何となく願望を口にしただけでした。


 なのに。


 それは目の前で起こりました。


 ムズムズとしたうずきを()()()()()


「え、えっ、なに?」


 ありえない。

 ありえないです!


 ミーアの体の感覚が私にダイレクトに伝わってくるなんて!


 あ、でも、いえ。


 もう、ありえる……の?


 もしかして、あれが兆し?


 ――活舌(かつぜつ)が良くなり、スライム体がミーアの頭から出れなくなった――。



 左足が変化、していきます。



「くぅ……」



 遠い遠い昔。

 前世、まだ男の子であった頃の私が味わったあの痛み。


 成長痛。


 それを少しばかり痛い方に強化したような()()が私を襲っています。



「うそ……」



 奇跡……なのでしょうか?


 それとも、ここへきてあのクソ女神のサプライズ? なわけ絶対ないか。



「足、生えた。生えちゃったよ……」



 横になっていた私は半身を起こし、その突然の奇跡とも思える出来事を驚きをもって見つめます。


 そしてスライム体となり久しく味わうことのなかった喜びの感情でその体が震えるに任せ……、


 ただ涙するほかないのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ミーアも大概プラナリアみたいな生き方してる( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ