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スライムになった私が拾った体を使って好きに生きる話  作者: あやちん
<三章> ミーアとアールヴ

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〘五十五話〙ミーア、創造の翼を広げる!

 前回あんなに苦労した海峡渡りでしたけど、今回は拍子抜けするほどあっさり渡り終えてしまいました。


 風の魔法、最高です!

 ああ、もちろん蓮(はす)の葉ボードのことも忘れちゃダメですね。


 さて、冒険者ギルドで教わった『ヴィーアル樹海』って呼ばれていたところが、勝手知ったる私の樹海(にわ)だった訳ですが、どうしますかねぇ。


 樹海(もり)で遊んでから帰るか、直帰(ちょっき)するか。

 以前湖から海岸までたどり着くのに、狩りをしたり、DIYしたり、ウロウロさ迷ったりで三ヶ月ほどかかっています。

 けれど今回は以前と違って魔法もありますし、スライム能力の活用にも磨きがかかってますし、ぷにょ収納には日用品とかドリスに選んでもらった服とか、もろもろ入っています!


 なんのかのありましたが、人との関わりも無駄ではありませんでした。

 ほどほど文明的な生活を送りながら樹海(もり)をお散歩できると思います。


 うきうきアウトドアライフの開始です!




 辿り着いた浜辺から樹海に向かって気分よく歩み出せば、すぐさま以前との感覚の違いに気付き、我ながら驚きます。そういえば海峡を渡る前の私はまだ魔器官の活性化ってやつがされてなかったんでした。そりゃあ樹海での感覚に違いがあるのも当然というものです。


 ここはこんなにも魔獣の生命力に溢れた、ある意味、生き物たちの楽園とでもいうべき場所だったのですね。

 人の治める世界では感じることの出来ない、至る所から感じられる重苦しいほどに濃厚な魔力に、私の魔器官は打ち震え、全身に浸透するスライム体にそれが及んで身震いが止まらないくらいです。


 とは言うものの、この先私に向かってくるだろう魔獣たちに後れを取る私ではありません。来るならきやがれです。分け隔てなく片っ端からスライム体の栄養として吸収してさしあげます。


 ずんずん樹海の奥深くへと分け入っていく私ですが、もちろん道などありませんから飛んだり跳ねたり走ったり、素直な歩行など望むべくもありません。

 こうチンタラ進んでいては湖に着くまでどれだけ時間がかかるのやら。また三ヶ月かかるのは勘弁していただきたいところです。


 何かいい手立てはないものでしょうか?


 空を飛べればどれほど楽でしょう。

 でもさすがの万能スライム体でも空を飛ぶのは無理スジでしょう。


 ああ、ラノベみたく転移とかできればいいのに。

 それかワイバーンが懐いてくれて背中に乗せてくれるとか最高じゃないですか? まぁ相対(あいたい)したワイバーン、全部ぶっころなので無理ですね、ごめんなさい。


 あれ?

 でも本当に無理かしらん?


 今まで脳筋よろしくぶっ倒してきてましたけど、スライム体を相手に浸透させて操るとか……。


 うう~ん、私から切り離してしまった時点で、関係も切れてしまいますね。

 繋がったままならワンチャン動かせるかもですけど、違う生き物の意志を操るってどうすればいいのでしょうか?

 私自身(ミーア)みたく、中身入れ替えなら確実なのでしょうけど、その体を操れるようになるまでどれだけかかることか。とてつもなく面倒くさいです。

 しかもミーアの中で並列思考みたいなことが出来るなら良いですけれど、別の体にスライム体を入れてそこでも体を動かして……、なんてマジ勘弁って感じです。


 ま、現実逃避の妄想に浸(ひた)っていても早く着くことはないので、せいぜい自分の体を駆使してがんばりましょう。


 地道最強!



 とか自分に言い聞かせながらも、やっぱ道なき樹海を進むのはもうやだ~!

 獣道は至る所にあるとはいえ、そう都合よく行きたい方向に進めるものでもないし。

 

 そこでふと、我思う。


 魔法でどうにか出来ないものなのか?


 と。


 そうです!

 どうして今までそこに思い至らなかったのでしょう。


 私には魔法という強~い味方があるじゃないですか。

 樹海に入って丸一日。

 今の今までそのことに気が回らなかったなんて、ミーアのおばか!


 まぁ自分の本性、スライム体基準でものを考えてしまうのは仕方ないことではありますね。

 などと自身を弁護してみる。


 日本のしがない中年サラリーマンだった男には、応用力とか、臨機応変っていうのを期待しちゃダメなのです。



 さて、魔法で空を飛ぶとするならどうすれば良いのでしょう?


 古典的なところだと絨毯(じゅうたん)に乗ったり、箒(ほうき)にまたがったりしてますね。


 だからなに?

 何の解決にもならないですね。


 って、それでは話が進まない。

 そういうのをどう再現するのか? っていうのがキモなのです!


 う~ん、あれって反重力的なものなのでしょうかね?


 おっと、いけない。

 魔法に科学的なことを求めても……。


 あ、でも反重力も科学的とはいえないですかね?

 SF的なものですよね、あれ。


 火とか風とか、けっこう科学的解釈が魔法を使う上で役に立ったりもしてるわけですが……、飛ぶとなるとそれが逆に邪魔をしてくる感じが……。


 けれど、そんなこと出来るはずがない!

 なんて思ってはいけないのです。


 そう、魔法は想像。創造といってもいいかもしれませんが……、創造からこそ生まれるのです!


 空を飛ぶことを思い浮かべるのです。さすれば与えられるのです!


 きっと。


 あのワイバーンだってあんな大きな体で、たいして羽ばたきもせずに体の割には華奢(きゃしゃ)な翼で飛んでるんです。絶対、魔法的な力が作用しているはずなのです。


 あっ!


 そういえば私はワイバーンさんの魔器官だって吸収したではありませんか!

 それならば、これはもう飛べるようになるのは約束されたようなものです。たぶん。


 よ~し、何事もまずは形から。

 スライム体でワイバーンみたいな翼(つばさ)を模してみましょう。

 

 背中にスライム体を集め、肩甲骨の辺りからみょ~んと左右に薄く広げながら伸ばしていきます。


 う~ん、骨になるものがないのでちょっとイメージがワイバーンの翼(つばさ)っぽくなりません。どちらかというと、羽化したばかりの昆虫の翅(はね)みたくなってしまいます。


 半透明で、ちょっとふにゃっとした感じでしょうか。

 膜のように薄く透けた翅に日が差せば、虹色っぽい模様が浮かび上がってとても綺麗です。翅を広げた大きさは私の身長の倍くらいとしてみました。


 形はトンボとセミの翅を足して割ったみたいな形です。ただ、虫の翅に網の目のように入ってる筋(すじ)はぷにょぷにょなスライム体では再現難しく、のっぺりした翅になってますが。


 まぁとりあえずこれでいいですか。

 出来立てホヤホヤ、スライム体謹製ミーアの翅(ミーアウイング)です。


 羽ばたかせてみます。

 これもイメージが大切、なのでしょうけれど……、


 ワイバーンの翼みたいにしたかったのに、もう昆虫系の翅の動きにしか出来ないです。

 最初、昆虫の翅みたいって思ってしまったのが運の尽きでした。


 もうそれ以外の想像に置き換えられない!

 固定観念って恐ろしい。


「おおっ、動いた!」


 ちょっとふにゃりとしてるので、パタパタって言うより、ふにょにょにょっ……て感じです。


 なんだそれ?


「う~ん、なんか微妙……。けど要は飛べるかどうかが問題なのであって、形とか動きなんてこの際どうでもいいのです!」


 そうです、割り切りましょう。


 さあ、ここからが肝心なところです。

 ともかく飛ぶための準備は整いました。


 吸収したワイバーンの魔器官さん、仕事して!


 イメージです、イメージ。

 私は飛べるスライム娘。


 背中の翅は、魔力を飛ぶための力に変えるための触媒。


 きっとそう。


 そう決めた!


 想い(イメージ)を強く、魔器官からは魔力とかなにか諸々(もろもろ)を!


 背中の翅を横目に見れば、この前のワイバーン戦みたく淡い輝きを帯びてきました。つられるように体のほうも青白い肌が薄っすら透けてきて、同じく淡く光っています。


 思うにスライム体に行き渡った魔力が飽和状態になることで、そんな状態になるような気がします。


 そうして……、ついにその時がやってきました。


 小さなミーアの体が、まるで重さなど無いかのごとく、ふわりと浮かび上がりました。

 ドリスに買ってもらった、微妙に足に合ってない靴先が所在無げにプラプラしています。



「しゅ、しゅ、しゅごい……」



 くっそ、ミーアの口、まじ舌足らずすぎっ!


 よぉ~し、もっと上へ!



 私のあり余る魔力をもってすれば、まだまだ余裕で浮かび上がれるはず。

 そしてそのままどこまでも飛んでいけるに違いないのです!


「はゎ~!」


 ついには樹海の樹々の頂点まで浮かび上がり、視界を遮るものは何も無くなりました。


 眼前に濃緑、振り返ってみれば遠くに陽光できらきらと輝く翠玉(すいぎょく)の海。


「しゅば……、す、すばらしい、です!」


 ほんと、なんでもっと早くに気付かなかったのでしょう。

 っていうかこれは魔法……になるのでしょうか?


 ま、そんな些細なことはどうでもいいのです。

 いま、この時こそが至高!


 ああ、この万能感。

 最高に心地よいです。



 遥か前方に深い水を湛(たた)えた湖すら確認できます。


 ふむん、ゴールはあそこです。



 なにぶん、まだ慣れていません。

 飛行速度は歩くのと同じくらいでしかありません。


 どこまで飛べるかわかりませんが、行けるところまで行っちまいましょう。



 おー!


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[一言] ブーン(AA) ( ˘ω˘ )
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