〘四十一話〙ミーア、見習い座学を受ける
誤字報告感謝です^^
「よぅ、ミーア。今日もきゃわいいなぁ。おじさんの子供になるかい?」
「ばっかじゃね? てめぇみたいなむさいうんこ野郎んとこに、ミーアちゃんを行かせるなんざ、ここにいる全員で却下だぜ!」
何度かギルドに来るうちに顔を覚えられ、ちょっとしたマスコットと化した究極可愛らしい幼女、ミーア十歳です。
おっさんは出てくる言葉がお下品で困っちゃいますね。
ま、中身が元日本人の中年おじさんな私とはしては生暖かい目で見るくらいで許してあげようと思います。
「ちょっとおじさんたち、ミーアちゃんが困ってるでしょ! 毎日毎日同じこと繰り返してさぁ。依頼受けたんならさっさとお仕事行ってきたらどーなの?」
そんな毎日懲りないおっさん達にドリスがご立腹です。と言っても半分おふざけ、お約束の会話というやつなのですが。
「おいおいドリス、おじさんはひどいよ。僕はまだ二十七さ。そこいらの三十超えのロートルじじいたちと一緒にしないでほしい。ミーア嬢、ぜひお兄さんと呼んでくれ!」
「かぁ、なーにが僕はだ! このロリコン野郎。そんな奴ぁママのおっぱい飲みにお家に帰りやがれってんだっ。男は三十超えてからが本番なんだよ、尻の青いガキが吠えんなや」
「ミーアちゃん、これどうする?」
どうするって言われてもですね、どうしようもないと思います。
「知らな~い」
こいつらが誰なんだと言えば、ギルドで依頼を受けた冒険者さん達なわけですが、すぐ出かければいいのに仕事前の軽い一服って感じで、酒場でだべったりしてるわけで……、そいつらが私にちょっかいかけに来るのです。
最初のうちはオルガとかエリーネさんが私の周りにいることが多かったので遠巻きに見られてるだけだったんですが、最強の盾が居なくなれば、これ幸いと、娯楽に飢えた不良中年共がいい獲物が現れたって感じで私をいじりに来るようになったのです。
まぁ私に直接害を及ぼさない限り、好きにすればいいんじゃないでしょうか。
「おにいちゃんたち、いらい、がんばってね。みーあも、がんばる~」
当たり障りのないこと言って適当に合わせておきます。
「おいおい聞いたか! 俺のこと、おにいちゃん、だってよ~!」
「いつ誰がお前のことだって言ったよ? そんなのオレに決まってんだろが」
「なんだと、ごるぁ!」
ほんと馬鹿ばっかりです。
「はいはい、ミーアちゃん。これ以上ここにいると変な病気が移るからさっさとお部屋に行こうね~」
「うん」
悪ふざけを楽しんでる冒険者たちは放っておいて、エリーネさんから先生役を引き継いだドリスといつもの勉強部屋へと向かいます。
修練場で魔法を見せた翌日以降、ギルドマスターは特に私に何を言ってくるということもなく、普通に見習い生活を送っています。
魔力測定に虹色魔石、修練場のことと言い、色々やらかしたって認識はさすがの私にもあるわけで、こうも静かだと逆に不気味っていうか……、ねぇ?
だからって私がそんなこと気にしても仕方ないし。
今はこの平和な日々を存分に過ごしていきたいと思います。
ドリスからはまず冒険者ギルドの仕組みとか、教えてもらいました。
まぁほんとに簡単に、概要だけですけれど。
依頼を出す人がいて、冒険者ギルドが受ける。
それを事務方さんたちが内容に応じて、種別、難易度分けをする。
処理が済んだものから依頼受付発注係に回す。
受付嬢さんたちは受理と冒険者への依頼発注、両方の面倒を見てるんですね。
採取なんかの軽依頼や難易度の低い常設の依頼は、あの掲示板に貼り出されます!
掲示板からぺりって奴です!
危険度の低い採取系依頼はまさに王道ですね。
まぁ絶対安全ってことは、何ごとにも無いでしょうけどね。
それ以外はエリーネさんたち受付嬢が、依頼を受けに来た冒険者さんの等級・位階に合わせて、個別に振り分けていく……って感じです。
うん、冒険者ギルドの受付嬢もけっこう大変そうです。
この説明で複雑じゃないって……、もう十分面倒くさいです。
「今日は冒険者の等級とかの話をするね~」
そう言って説明を始めたのは、ラノベとかだとSからA・B・C級って感じで強さや熟練度のランク付けしてる定番の話でした。
「大きなくくりとしてまず等級がありま~す。等級は四段階に分かれてて、並級、中級、上級、そして特級です。特級の人なんてめったに見ないよ~、レアだよ、レア。ちなみにそんなレアの一人がギルドマスターだったりしま~す」
ノリノリだねドリス。
でもギルマスはすっごくどうでもいいです。
「むぅ、ギルマスに全然興味なしだね……。こほん! でね、並級っていうのは登録したら最初になる等級だね。ミーアちゃんはそこにも至ってない見習いさんだけど、普通は並級から始まるんだよ」
むむう、ほっといて。
まぁ身元保証もない怪しさ満点なのが私で、登録すること自体が目的で、ゴールだもんね。
見習い取れて冒険者になりさえすれば、それでオッケーなわけだし。
「そこから地道に依頼とか受けて実績を重ねて、もちろん自分自身の技能も磨きながら、がんばって等級上げていくんだよ。ちなみに昇級には試験もあるんだからねっ」
自身の経験を思い出したのか、ドリスの表情もちょっと難しいものになります。
私も努力や試験、面倒くさいのはきらいです。
まじ、登録さえ出来れば等級とかどうでもいいです。でも人のことは普通に興味あります。
「どりすは、どう……なの?」
「おお、それ聞いちゃう?」
ドリスはちょっと照れながらも教えてくれました。
ついでにオルガのことまで。
「私は魔力もたいしたことないし、身体能力に特段秀でてるわけでもないけど、普通は普通なりに持ってる能力を生かせるよう努力してるよ。斥候なんだけどさ、中級二位になってやっと人並みってところだよ。オルガさんなんて上級三位の剣士だからね? あの歳でそれってすごいんだよ~」
私自身は何事も適当で行きたいですが、がんばる人のことは素直に応援したいと思います。
ちなみに斥候は依頼の調査先とかで先行して探索したり、同行グループ内で危機察知を請け負ったりするのが主な仕事で、戦闘とかはほとんどやらないらしい。護身程度で短剣を使った格闘術を習ってはいるみたいだけどね。
「それでね、等級はさらに分けられてて、それが位階だね。並級はとっかかりだから位階はないね。中級、上級は三、二、一位と三つのランクがあって、もちろん一位が一番上ね。でね、特級にも位階はないんだよ~、特級は一番だからね、唯一なんだよ!」
ふむふむ、スライム脳にインプットしました。
ということは通しで考えると一番下、並級からスタートして特級になるためには、七段階上げる必要があるわけですね。
ほうほう、上級三位だというオルガも、がさつな脳筋なりに相当頑張ったんですね、エライエライ。
あっ。
と言うより、脳筋だからこそそんな等級まで行けたってことだよね。
それこそオルガらしいです、くふふっ。
「あ、それとこの制度はどのギルドでも同じだし、どこの領地に行っても通じる共通の制度だからね。まぁ、他種族とか、多少の例外はあるだろうけど……。と、ともかく魔法士や剣士、槍術士や弓士、他の職業だって基本は同じだからわかりやすいよ」
そこまで言って、いったん間を置いたドリス。なんだかにやついて私を見てきます。
なんです?
「けど~、実際はそこに魔力とか、人それぞれ固有で持ってる技術や技能も絡んでくるから、等級や位階だけですべての実力を計れるわけじゃないのが難しいところなんだよね~」
そう言って、私のことをじーっと見てきます。
むむ、何か含みのある顔つきですね。
でもミーア子供だからわかんな~い、し~らない。
「……とまぁ、等級の話はこんなところだね。あとは実際に経験してみるのが一番だしね!」
そうそう、話聞いてても眠くなるだけ。
必要になった時点で聞きますからね、大丈夫です、きっと。
「じゃ、お勉強ばっかりじゃミーアちゃんが逃げ出しちゃうといけないし、この後は市場に出てお買い物とか、おいしい物の食べ歩きとかしよっか?」
ま?
こいつはおじさん一本とられちゃいました。
「おおっ、ミーアちゃんの表情がゆるんでる! 嬉しいみたいだね? ほんとにさぁ、もっと感情だしていいんだからね」
ぐぬぬ、そうは言ってもなかなか表情筋は手ごわいのです。
だから――。
私は感謝の気持ちとばかりにドリスにぎゅーっと抱き着いて、薄い胸に顔をぐりぐり擦り付け、嬉しさを目いっぱい表現してみせたのでした。
なにげに市場とか買い物は初めてなのでめちゃ楽しみ!




