62話 分裂
ブックマーク100人突破です!
ありがとうございます!!
「みぃーつけたっ♪」
透き通った声が、フロアに響いた。
四人は顔を見合わせる。ここまで来るのに、一体何人の職員を倒したのか?
「いち、にい、さん、よん」
「少ないな」
亜人とフェンリル、そして、冒険者が一人。
確か、A級冒険者の【レグ】だ。
「やはり、手引きした者がいましたか」
「当たり前でしょ。“サバイバー”対策でアンタが作った攻略庁、逆手に取らせてもらったよ」
ルヴが低く唸る。
「自分が恨まれてる自覚はあるんでしょ、アルマッティ」
「そうですね」
アルマッティはさっとリボルバーから銃を取り出した。
琴音とナデシコも臨戦態勢に入る。
「おっと」
レグがようやく口を開いた。いやらしく笑っている。
「今ここで、戦うと、誰が言いましたか?」
「っ! ナデシコ! アルマッティを!」
オルトが琴音を抱き寄せる。
「馬鹿っ! 私よりもアルマッティさんを!」
琴音がオルトに怒鳴りつけた。
そして、アルマッティは自分に向かって手を伸ばそうとしていたナデシコを蹴り飛ばす。
「ばっ!?」
ドミノ倒しのように、オルトと琴音とナデシコが倒れる。
オルトが焦ったようにアルマッティに向かって手を伸ばす。
「アルマッティ!!」
「大丈夫です」
☆☆☆
攻略庁に足を踏み入れようととしていたレイヴィスが、空を見上げた。
空間に亀裂が入り、黒い龍が現れた。
「あー、なんかいるぅー」
「この匂いは…………!」
ロアが嬉しそうに立ち上がった。
龍の背中から赤毛の女の子が降りて来る。レイヴィスを見つけると恥ずかしそうに顔を伏せた。
「こ、こんにちは。マロニエです」
あ、麗華の娘か。一周目でロアを見つけて、勧誘したヴィーガの乗組員。
「マロニエ………」
「はい、はじめましてレイヴィス様」
「よろしくね」
レイヴィスが優しい笑顔で笑う。マロニエも安心したようにはにかんだ。
「はじめましてぇ、あたしは、ないとめあだよぉ」
「悪魔だね。それも、すごく強い」
ナイトメアはすうっと目を細めた。
その動作でなんとなく理解する。コイツは紛れもなく狡猾で残虐な悪魔である、と。
「味方なの?」
「みかたぁ? そっちが、あるじさまのみかたなら、そうだよぉ」
あるじさま…………。
まさか、コイツが!?
「あなたが、アルマッティさんの」
「しってるのぉ?」
微かに警戒に似た敵意が感じられた。
リヴァドラムが唸り声をあげたので、慌てて制止する。争っている場合ではない。協力してもらわなくては。
「アルマッティさんは、このダンジョンの中にいる。敵に命を狙われて、ね。急がないと間に合わないかも」
悪魔にはそれだけで十分だったようだ。
「誰か、一人だけなら連れていける」
「よし、ユーキとリヴァドラムくらいならいける?」
レイヴィスが即断した。
悪魔を焦らすのはよくないと考えたのだろう。
そんでもって、普通に話せるのかよこの悪魔やべえな。
「いいよ。乗って」
私は急いでナイトメアに捕まる。
ダンジョンに突撃した。
「ダンジョン、半異次元型、難易度S、モンスターなし、侵入者複数、強敵有り」
「了解」
「キュア!!」
この悪魔、できるな。
デザイアが言っていた。悪魔は基本的に人を見下し、力と醜さ、恐ろしさを重視するのだと。
この悪魔は、まさに異端。
美しい体と、豊富な知識、そして、恐ろしさを殺し、敵を欺くために可愛らしさを身にまとった。
これが、本物の悪魔だ。
「私が降りたら、アルマッティさんのところへ行って!」
「いいのー?」
「もちろん」
私の声に嬉しそうにナイトメアは言う。
「ありがとう。大好き」
嘘偽りは、おそらくない。
私とはナイトメアの背中から飛び降りると、リヴァドラムに向かって叫んだ。
「リヴァドラム、【反転】!!」
リヴァドラムは黒い小竜へと変化した。
アスファに似てるなって思ったけど、明日は曰く『違うスキル』らしい。
「【フィールドサーチ】」
脳内に莫大な情報が流れ込んでくる。
常人なら脳が焼けているが、レイヴィスの特訓のお陰で情報の取捨選択ができるようになっていた。
ARマシンは、脳内に伝わる直前に情報を読み取って映し出すそうだけど、機械に頼らなくてよかった。
「見つけた! ナイトメア! 最上階に向かって! 私はこのまま下の階に行くから!」
「わかったよぉ」
建物へ開けた大穴から再び外へと出ていった。
建物に比べて構造が少し広くなっているから、半異次元型というナイトメアの情報は正しかったことになる。
でも、気掛かりだ。何故、分断されているんだ?
「リヴァドラム、私の肩に乗って」
「キュア」
素直に従ってくれるからいいわね。
レイヴィス達は一階から順番に攻略して行くしかないだろうし、それを見越してアルマッティを最上階へ移動させたのなら賢い。
だが、オルト達を外へ追い出さなかったのは何故?
【フィールドサーチ】で見た感じ、接敵はしていなかった。
「まさか、また【封印】を使う気じゃ」
ダンジョンごと【生贄】を使って、レイヴィスや堕天使達に【封印】を施して………。
考えただけでゾクゾクするが、ここはナイトメアとアルマッティを信じるしかないだろう。
オルトや琴音と合流した方が確実にやりやすいだろうし。
「急がないと………」
私は見知った顔を見つけてホッとする。
「琴音! オルト!」
二人は嬉しそうに顔を見合わせた。
その隣にいた人物に、私は足を止める。
「糸部咲撫…………」
「フルネーム?」
「そんな名前だったのか」
「いやだなぁ。ナデシコですよ。忘れたんですか、哀奈ちゃん?」
咲撫は嬉しそうに言う。
マジかよ。知らなかったわ。
「それより、アルマッティさんが」
「敵のスキルで分断された。どこにいるのか」
「アルマッティさんは最上階にいるよ」
3人の顔が明るくなる。
しかし、私の次の発言で、その顔は再び曇ることになった。
「ここは3階。最上階の22階まで行くには凄い時間が」
「くそっ」
オルトはダンジョンを見回す。
「モンスター無しのダンジョンだって知っていれば」
「大丈夫。ナイトメア………アルマッティさんの悪魔が助けに行ったし、レイヴィス達ももう少しで来るから」
だから、私達はひたすら最上階を目指すしかないのだが。
「アルマッティさんに戦力が集中すると読むなら、外に出ておくのもアリだと思うんだよね」
「は?」
アルマッティさんは、おそらくナイトメアを信じていた。必ず来てくれると信じていたのだ。
それを踏まえて、アルマッティさんの行動を予測するならば。
「アルマッティさんなら、敵を地上に叩き落とすんじゃない?」
「脳筋すぎ…………いや、アルマッティならワンチャン」
「いくらなんでもそれは……………ワンチャンありますね」
お前ら地味に失礼だよな。
アルマッティを何だと思ってんだよ。
でも、その作戦を前提とするなら、最初に契約書……リトルゲッコーを倒さなくてはならない。
【封印】くらい、おそらくリトルゲッコーも使えるはずだ。
アルマッティとナイトメアがどこまで戦えるのか。
「どうする?」
「俺は上に行く」
「どうして?」
「アルマッティが敵を全員落とせるとは思わないからだ」
確かに。
「なら、私もそうする」
私はそう言うと階段に向かって歩き出した。
「僕らも行きますよ」
「置いていかないでください」
私達の仕事は決まった。
地上のことは、レイヴィス達に任せよう。




