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「C:富士山」を探せ! 時事問題のプロパガンダ分析  作者: カキヒト・シラズ


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サントリー「45歳定年制」について

初出:令和3年9月11日


 サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長は、9月9日、経済同友会の夏季セミナーで「45歳定年制」を提唱しました。


Q:新浪社長が提唱した45歳定年制をどう思いますか。

A:いいと思う。

B:悪いと思う。


 さて、みなさんの「富士山回答」はいかがでしょうか。


 SNSを見ていますと、45歳定年制に反対意見が多いようです。

 45歳は子供もいて最も金のかかる時期とも重なる。しかも45歳でリストラされても再就職は難しい......。

 確かにサントリーグループ企業に勤める40代、50代のサラリーマンで、かつ自分が出世コースにいる自信がない人たちにとり、新浪社長の提言は身につまされるものがあるでしょう。

 新浪社長は翌10日、同セミナーで45歳定年制について「首を切るというわけではない」と弁明していますが、真意はどうでしょう。

 サントリーだけではありません。日本の大企業から終身雇用神話が崩壊したと言われて久しいですが、今回の45歳定年制は、さらに日本企業の雇用システムの変革を加速しそうな気がします。


 一方、サントリーに勤める20代の若手社員は、45歳定年制をどのように受け止めているのでしょうか。

 同じ20代の社員でも人により受け止め方は違うかもしれませんが、自分のような若手にもビッグプロジェクトを任せてもらえるのでは、といった期待を抱いている人も少なくないでしょう。

 また45歳までに転職したり独立したりできるよう、スキルを磨いていこうと計画を立てている20代社員もいるかもしれません。

 いずれにせよ、若手社員ほど45歳定年制を前向きの捉えることができると思います。

 


1.侍と本百姓のライフスタイル


 江戸時代、侍は日本の全人口の10%弱ぐらいです。人口の大半は百姓(農家)、それも本百姓(自作農)が大多数でした。

 侍は今の時代では公務員といったところでしょうか。


 時代劇の影響で私たちは侍と聞くとカッコいいと思ってしまいます。侍はイケメンでチャンバラが強く、勇敢でカッコいい。でも現実の侍は違います。

 朝日文左衛門の「鸚鵡篭中記」という本が残っています。江戸時代の御家人が書いた日記です。臆病でチャンバラが弱く、ブサメンでカッコ悪い。しかも上司にはこびへつらい、正義感はなく、ワイロに弱い。当時、こういう侍が多数派だったようです。


 侍は縦社会の組織の一員で、この縦社会には詰め腹文化という悪しき慣習があります。上司が犯した罪を部下が被り、ときには切腹しなくてはなりませんでした。自分が悪いことをしていないのに切腹して死ななくてはならないとは侍社会は理不尽な世界でした。

 幸い、今日では切腹させられることはないでしょう。

 でもサラリーマンの縦社会では、詰め腹文化に似た理不尽な慣習が、今日でも残っているのではないでしょうか。


 私は縦社会の理不尽な文化に悩まされるのは人口10パーセント以下のエリートだけでいい、と思います。

 労働人口の大半が勤め人というのがそもそも間違いなのです。

 70年代以前は今とは違い、個人商店がたくさんありました。個人商店であれば定年の年齢は自分で決められます。45歳以上になっても働きたければ働けます。また十分貯金が貯まれば、若くしてリタイアすることもできます。

 古来から道や橋を作るなど土木建設は、行政を中心とした大事業でした。資本を集中させ、多くの労働力を必要とします。しかしその他の多くの産業は、もっと小規模な個人商店が主流でした。

 ところが産業革命以降、大量生産、大量消費時代が到来し、大企業が生まれました。

 行政は高度経済成長期から一貫して大企業優遇政策をとっており、あらゆる産業が大企業であるべきだという考えを持っているようにみえます。

 しかしながら生産技術自体も、今日では大量生産から多品種少量生産に移行しています。


 全部ではありませんが、今日の産業の大半が大企業でなく、もっと小規模な中小零細企業で十分生産可能だ、と私が言ったらあなたは信じますか?

 この発言はツッコミどころ満載なのですが、行政が大企業優遇政策をやめ、中小零細企業優遇政策に転換すれば、かなり現実味を帯びた話なのです。


 労働人口のうち、大企業に勤める人が減り、個人商店や自営業が増えたらどうでしょう。侍のような縦社会カルチャーに悩まされる人は減るのではないでしょうか。


 公務員は最後まで縦社会カルチャーに苛まれますが、そこは現代の侍、あるいはエリートのノブレス・オブリージュです。



2.兼業農家と個人商店


 江戸時代、日本人の人口の主流は地方に住む本百姓(自作農)でした。

 彼らは小さくながら土地を持ち、田畑と自宅を私有していました。

 田畑で獲れた作物は自分と家族が消費し、余剰がある場合のみ転売しました。今日の農家のように、農作物は販売することが主目的ではなかったのです。


 地方には兼業農家地域と思える場所があります。

 田んぼの真ん中にぽつんとお店が立っている光景をよく見ます。

 お店は飲食店だったり、理髪店だったり、スーパーだったり、診療所だったりします。また田畑の土地の一部を工業製品の工場にしているところもあります。

 おそらく周囲の畑も店主が所有している兼業農家なのでしょう。


 私が提言したいのは、このようなライフスタイルです。

 農業はできれば自給をメインに、転売は余剰がある場合のみ。生活費は土地の一部を利用した個人商店で稼ぎます。貨幣経済の依存度を減らしたこのライフスタイルは国のGDPを下げますが、実質的な生活の豊かさは下げません。

 明治以降、日本の行政は農家から都市部へ人口が移動するよう、様々なプロパガンダや方策を講じてきました。ところがここにきてその逆をやってみてはどうでしょう。つまり人口を地方に戻すのです。


 70年代、企業は”生産性”を重視しました。このため工場から排出するヘドロなど公害が社会問題となりました。

 その後、90年代ぐらいから企業は”環境性”を重視すべきという考えが普及しました。生産性を少し抑えてでも、地球を環境破壊しない生産活動を推進するようになりました。

 21世紀に入って20年が経過した今日、私が企業に提案したいのは”自給性”です。

 生活必需物資の自給率は国の独立性を保つ上で重要です。

 かてて加えて、国だけでなく、地域の”自給性”、さらには国民の”自給性”も重要と考えます。


 今回の私の「富士山回答」ですが、45歳定年制を契機に、日本人のこれからのライフスタイル自体を考えるきっかけにしてはどうかと思うのです。



(つづく)



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