魔王の塔 侵入
「何で俺の名前知っているんだ。お前は一体ーー……」
紅い月に黒い雲がかかる。
紅い光は少しずつ消えそうになっていた。
レイヴンは凛を抱き抱えると、案内された通りに塔の裏の入り口から中へと侵入した。
凛の案内通りに塔に登るレイヴン。
(ああ、あと少し……あと少しなのに……)
バグが眠る側を、起こさないように足音を忍ばせて歩く。
二人は最大の難関を無事に通過できたと胸を撫で下ろした。
真っ暗い暗闇の中、ゆらゆらと蝋燭の微かな灯りが近づいて来て辺りを照らす。
衝撃でパンが一つ地面に転がって、階段から落ち、だんだんと小さくなっていくのをただ眺めていた。
聞き慣れた足音。なつかしい声。
真っ黒なドレスにエプロンを着た彼女は手に蝋燭とかごを持ちながら立ち尽くす。かごの中に血のついたナイフをしまうと足をすくませ、その場に倒れこんだ。その時、彼女は少しだけ膝を擦りむいてしまった。
「凛……!」
凛はレイヴンの背中から恐る恐る近づいて来た彼女の気配に気づいていた。「そばに来ちゃだめだよ」、「はやくここから逃げなきゃだめだよ」と、彼女が立ち去るのを願い、レイヴンの首に抱きつくふりをして、その刃物を体で受け止めた。
ぐったりとレイヴンにもたれ掛かる凛。レイヴンは自分の腰にある剣を握る。しかし凛はそれを血が流れる手で強く押さえていた。
「彼女はだめ…… 大切な友達なの……」
レイヴンは凛を抱えて、塔を一気にかけ上がる。レイヴンの足音で目を覚ました野獣たちが後ろから襲いかかってきても。背中に大きな傷が出来ても。足を止めなかった。
……レイヴンさん。
……レイヴンさん。
私は あなたを救えたかな……?




