紅い月と火炎の守護者
塔の頭上に大きな紅い月が出ていた。
紅い月の周りを飛び回るカラス。
レイヴンは窓からそれを眺め、懐中時計を胸ポケットから取り出すと、顔をしかめた。
「もう時間がないーー……」
広場では普段通り魔獣たちは日常を繰返しながらも、倉庫から暖かい毛布や羽織り物を取りだし、冬の準備を進めていた。
すると外を巡回するレオパルドが慌てて、レイヴンの元に駆け寄る。
「今までにない数の勇者が向こうから攻めて来ています」
コックルはそんなはずない! と慌てて、外を見ると20人の勇者を先頭に後ろには兵士を連れて塔を攻めて来ていた。
レイヴンは戦えない子供や年老いた魔獣を塔の上の階に避難させる。皆が大切に保管してきた果物が床に散らばる。
「私たちは地下から武器を持ってきます」
人形の武器を扱える魔獣は、急いで地下に降り、剣や盾や槍、銃などの武器を揃えるとそれぞれ手に持って塔から出て行ってしまった。
「待て」
レイヴンはそれを止めようとする。先頭に立つ、レオパルドが火の粉を使い敵を威嚇する。
「レオパルド……! 戻ってこい……!」
「レイヴンさん。どうか、魔王様をお連れお逃げ下さい。ここは俺たちが……」
「しかし、お前たちは戦えぬだろう」
魔獣たちは、勇者に次々と武器を奪い取られてしまう。ここにいる魔獣たちはまともに戦闘などしたことがない、心優しい魔獣だった。
「レイヴンさん……! 俺たちは戦えないけど……時間は稼げます」
「レイヴンさん、ここはレオパルドに任せて早く二人を探しに行きましょう……!」
レイヴンは凛の部屋まで行き、部屋でナーガと手を握っている二人を見つけると、二人の手を取り塔の最上階を目指して走った。セーレは三人の一番後ろに付くと、ふと窓からレオパルドのいる門前を確認する。
人差し指を立て、僅な火が灯された指先を口元にあてる。
誰かに誓うようにそっと瞼を閉じた。
「俺の血は一滴まで魔王様のものだ」




