サーカス4
観客席を見渡してもどこにも凛の姿が見えないのに二人は焦っていた。
「まずい……日が暮れるぞ……」
観客は段々と減り、ショーは夜の部へと移った。ショーの中身も象やらライオンやら動物達からナイフや刃物を使った、過激なアクション系へと変わっていく。観客席の客も昼間とは違い、仮面や布で顔を覆って、自分の姿を隠した人達が席に座っていた。
「早く見つけないと、物騒ですね」
観客席から一斉に拍手が上がる。舞台の幕が上がると巨大な水槽が現れた。水が中に入れられており、中に入れられた少女が鎖で手足を拘束されている。少女は下を向いていたが、黒いドレスからそれが誰なのかすぐに検討がついた。二人はすぐにショーを中止させようと急いで舞台に上がる。
「凛……!」
ガラスを叩いてもヒビも入らない。水槽の中で凛は気絶していた。しかし、早く水の中から出さないと非常に不味い。
その様子を唇に手をあて、楽しそうに上から観察している青年は指を鳴らした。
「どうするかな、魔王様」
徐々に足先から水が氷結していく。
レイヴンは腰から剣を抜き、凛の体には当たらぬよう水槽に剣を叩きつける。
「駄目だ……凛を貫きそうで思いっきりはいけない……」
魔力が十分ではないレオパルドは水が氷結していくのを残っている魔力で溶かしていた。
「おい、凛! 早く目を冷ませ」
レイヴンはフードを床に脱ぎ捨て、自由になった体で思いっきりガラスに拳を叩きつけた。
二本の角と翼が背中に生えたレイヴンの姿を見た観客席からは悲鳴が上がる。レイヴンの拳からは大量に血が流れていた。
「闇属性……魔獣だ……!」
力を加減しなかったので、ガラスに少しヒビが入った。レオパルドもフードを脱ぎ捨て、両手をあわせ火の粉の力で氷を溶かし尽くす。
「魔獣が……二人……!」
パフォーマンスではないと分かり、観客席からは人が逃げ出した。
「魔王様を護れるなら……なんと言われようが構わない……魔獣などと、実に光栄な響きだ」




