表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その探偵助手、黒幕につき  作者: 上山流季
第二話「あなたへ捧ぐホワイダニット」
PR
20/36

2-9・エピローグ

 その後、言葉通り解散することとなった。俺は途中までタクシーで送ることを提案したが、明崎さんは断った。

「まだ電車があるので大丈夫ですよ。そこまで疲れてもいませんし」

 無理に送るのもどうかと思ったので大人しく引き下がり、駅まで一緒に歩くことにした。明崎さんは終始ご機嫌で、俺の手を取ることこそなかったものの、隣を歩く俺と目が合うたび「えへへ」と破顔するのだった。

「今日は本当にありがとうございました。では、また」

 そう言って、笑顔の明崎さんは俺に小さく手を振り駅構内へと消えていった。

 俺も、機嫌がいいと言えた。いい気分だ。悪くない。今日という一日を総合すると忙しかったのは事実だが、終わりよければすべてよし、だ。

 駅前からタクシーに乗り、マンションまで走らせることにする。

「どういたしまして、か」

 明崎さんの『ありがとう』には『どういたしまして』を返すことが必要らしい。もちろん、彼女が望むなら俺は応えるだけだ。

 窓の外を都市の灯りが流れていく。地上は夜を忘れた真昼のようで、空に星ひとつ見つけられやしない。

 と、タクシーの運転手が俺に向かって声をかけた。五十代ほどの髭を生やした男だ。

「お客さん、ラジオ、音量上げても大丈夫ですかね? 今、すごく面白い番組をやってるんですよ」

「構わないよ」

 答えると、運転手は宣言通りラジオの音量を上げた。

『世間を賑わせる匿名の殺意! 我々は今後も彼? 彼女? あるいは組織? ネットの闇を暴いていきたいと思います!』

 運転手が言った。

「最近、同業者の間で話題なんですよ! そろそろテレビにも進出するんじゃないかと思ってましてね。トレンドってやつです」

 いまいち話の流れが読めない俺の顔をルームミラー越しに確認した運転手は、快活に笑うと続けて言った。

「アノニマス・キラー・プロデューサーですよ! 漢字で匿名殺人伝道師! なんでも、殺人トリックがネットで買えるとかで! 怖い世の中ですよねえ」

 ああ、そういえば週刊誌ばかりでラジオまではチェックしていなかった。

 俺はあまり興味がないという顔で「へえ」と相槌だけ打った。運転手はその後も胡乱な噂について語り出す。

「どれだけの人間がこの殺人伝道師に狂わされてきたことか! トリックも高額で売られているらしいし、なにが目的なんでしょうね……! 私は秘密組織説を推しているんです。世の中を混沌に導こうとする……陰謀論って言うんですかね! 中でも彼の国からのスパイ説が面白かったなあ……! 国家侵略説! 混乱に乗じて我が国をですね……!」

 なにが目的、か。ここでもホワイダニットだ。

 熱く持論を語る運転手を冷めた目で見ながら俺は言った。

「案外、なにも考えてないんじゃないかな?」

「え?」

「愉快犯ってこと」

 俺の言葉に運転手は一瞬だけ呆けた顔をしたが、直後「まっさかぁ! そんな説、聞いたことないですよ!」と大きく笑い「意外性はありますが背景設定が甘いですね! 三十点!」と一蹴した。



◆第二話『あなたへ捧ぐホワイダニット』了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ