3-10
「くしゅん」
「先生、大丈夫ですか?」
皆とお茶をし寮に帰って解散をした。
そして、明日の授業の予習と部活のために自分の考えをまとめていたら急に鼻がムズムズしだしてくしゃみをしてしまった。
うう゛、風邪かな?
「先生。はい、口を開いてください」
「え、大丈夫だよ。そこまでしなくても」
椅子に座っていた私の元にしゃがみ込み口を開くように言う冬夜。
……なんで診察セットを持っているの?
「いいえ、先生。風邪を甘く見てはいけません。確かに私が先生の健康管理を行っていますがどこからかウイルスをもらってきたのかもしれません」
……ん?
「ちょっと、待って。今、健康管理って言った?私初めて聞いたんだけど…?」
何だろう寒気がした。というか、現在進行形で冷や汗がだらだら流れています。
「ああ、私が独自に先生の日々の健康のためにやっているのです。栄養のバランス、運動量などデータにして管理しているのです」
「……それって体重とかも含まれているの?」
「それは秘密です」
ウインクをし口元に人差し指を添えるこの猫。
あ、これは知っているんですね。分かります、はい。
「……ちなみにだけど体重が増えた?」
「いいえ、先生はまるで羽が生えたように軽いですよ」
もうこれは知っているわよね?肯定しているようなものじゃんか!
え、怖い。この猫。
「だって、先生は漆黒の艶やかな髪に真珠のような真っ白な肌、瞳など宝石のアクアマリンのごとく輝いていて………」
あ、こいつ。話を逸らし始めたな。
これ以上追及するようなら褒め殺しすっぞっていう雰囲気が出ている。
「先生は私にとってご主人様であり、女神であります。信じられぬのであれば、この冬夜。先生が眠れるまで耳元でじっくりと」
囁いてもいいのですがとわざと私の耳元で話し出す。
このイケボが!!!
かあと顔を赤くしてしまった私。
だって、こうやって男性と話すなんてなかったし!第一に付き合ったことない=年齢なんだもの!!
……あ、なんだか自分で言ってて虚しくなってきたわ。
「先生、聞いていますか?」
「ひゃい!?」
ふうと耳に息を吹きかけられる。
私が他のことを考えているのが分かったのかわざと息を吹きかけてきたな!
「ああ、やはりベットの中でお話をしたほうが」
よろしいですか?とねっとりとした声音で囁いてくる。
こ、これ以上囁かれたらなんかやばそう。というか、私の身が持たん!!
「け、結構です!!」
ぐいっと冬夜を押し返して席を立つ。
ばたばたと寝室に逃げ込んだ私。
どっどっと心臓がうるさい。
あの猫、ドSだ!間違いなくドS!
「おやおや、逃げられてしまいましたか」
琴羽が逃げた先をじっと見つめながらクスクスと笑う。
ああ、やはり愛らしい。やはり、”他”とは全然違う。
さて、そろそろ就寝の時間ですしカモミールを淹れて先生にお休みしてもらわなくては。
今頃だとベットの中でゴロゴロと可愛らしく転がっているに決まっている。
まあ、そう仕向けるようにしたのは私ですがね。
そうして、チラッと窓の方を見るとそこにはあの天使がいた。
どうやら、こちらの様子を観察しているようだ。
実に不愉快。
今すぐ、その羽をもいでやりたいがここは先生の部屋だ。
汚すわけにもいかない。
さっとカーテンを閉めてキッチンに向かう。
「一体、何を考えているのやら」
そうポツリと呟き、冬夜はポットを出して作業に集中しだす。
「…………やはり”時”を急ぐ必要があるか?」
そうつぶやいたのは一体何者だろうか?




