ヒロインだってドラゴンと仲良くなります!
「あっ、ここが魔境!?」
辺境領から転移してついた場所。私の国外追放先の「魔境」、であるはずなんだけど…………。紫、いや黒に近い不気味な森、光キノコや毒を持ってそうな植物、そして何より辺境領の時とは違う月光!ここ魔境ですか?
明らかに魔境ではない。学園で習った魔境は人間界と魔界の動植物が織り混ざった、人間界でも魔界でもない場所。こんな、明らかに人間界の面影がどこかいった、「魔界」のような場所ではない!はず!
というよりも、まずは魔界について。魔界は魔族たちが暮らす世界。世界といっても、人間界とは魔境を壁として隣り合っている。魔界の王はゲームでよくある「魔王」。とても残酷で慈悲がないそう。まぁ、私はゲームで知ってるんだけど。
で、今私がいる場所は、明らかに魔境ではない!ゲームで見た魔界の風景とほぼ一致!まぁ、魔境であるという可能性もあるけど。
「とりあえず、歩くか!」
わからないところでは自ら歩いて情報収集!
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「これなんだ……?」
森の中を歩いていると、顔があって雄叫びを上げているキノコ、ウニョンウニョンと不規則に動く植物、跳ね続けているスライム——。
いやスライム!?
「えっ……、えっ?」
いやスライムって!スライムは魔物だし!魔境にはいるはずないし!辺境領の魔術師さんたち!転移失敗してますよ!
よく見たらあのスライム、「ブラックスライム」だ!ブラックスライムはレアで、魔界にしか現れない。その魔界でも100万分の1以下の確率で現れるし……。
魔界にしか現れない————————。
「え、ここ魔界!?」
まだ魔樹海の方が良かったよ〜!ちなみに、魔樹海は魔界と魔境の間にある、魔の樹海。魔界の砦となるような場所。いや、魔樹海でも勘弁だけども。
もう、魔界に転移したものはしょうがない。魔界で生きよう。
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「あっ、川だ!」
魔界に転移したことが発覚して十数分間、水だ〜!それに喜んで川の方へ駆け寄ろうとした。したら、すぐ隣にドラゴンがいました……。
「ヒュッ………」
大きい。怖い。息がつまる。ドラゴンは興味深そうに私の方へ顔を近づけ、鼻をスンスンと動かしている。多分、人間である私の匂いを嗅いでいるんだろう。
ドラゴンの見た目からして「ラドンドラゴン」だ。ラドンドラゴンは代々の魔王に仕えていて、その一体のみらしい。つまり、もしかしたらこのドラゴンは魔王が飼っているかもしれない。
「あ………、怪我………」
怖い。だからこそ、ラドンドラゴンの行動を注意深く見ていたら、翼に怪我しているのが見えた。結構大きい傷だ。ラドンドラゴンでも、飛べなくては移動も簡単にはできない。それで、困っているのかな?
私はヒロインというキャラのため、世界で1人しか使えない「治療魔術」が使える。だが、使えるとしても、恐怖で体が動かない。こんな恐怖の中、このドラゴンを治したいとは思えない。
ただ、ラドンドラゴンは、私が不思議な力を持っているのを感じ取ったのか、翼を私の目の前に出してきた。目は細められていて、月光によって金色の瞳が鋭く光っている。まるで、それは「翼を治せ」と命令されているようだった。
「失礼……、します……」
両手を翳し、魔力を集中させる。治療魔術は決して簡単に行える魔術ではない。使用者、私にもその傷の痛みが共有されるし、治療を受けている者は軽い痛みを感じる。
手が光り輝いている。温かい光、優しい光、神秘的な光。ラドンドラゴンはその光を見て、「グルル……」と喉を鳴らした。
「ちょっと、待っててください」
修復されているところはあまりにもグロテスクだ。漫画やゲームでは光で見えなかったが、実際だと血や肉が露わになる。私は、ずっとこの治療魔術が嫌いだ。
やっと、ドラゴンの翼が治った。ラドンドラゴンは治ったのを確認するように、翼を上下に動かして喉を鳴らす。言葉はわからないが、少し笑ってしまった。
すると、ドラゴンは大きな叫びを上げた。鼓膜が破れそうだ。目を瞑り、耳を塞いでいると、体が宙に浮いた感覚があり、目をひらく。
「えっ、ちょっ」
私はラドンドラゴンの背に乗せられていた。ラドンドラゴンは翼を大きく動かして空を飛ぶ。風の音のせいで、自身の声も聞き取りにくい。
「待って待って待って待って……、あそこって……」
目の前にあったのは、魔王城だった。




