死神グニパヘリル
父「いつから三者面談だと錯覚していた?」
「やあ、頑張ってるようだね」
「あっ、先輩。お疲れっす」
地獄で指パッチンの練習をしていたら、爽やかな笑顔の美青年が目の前に立っていた。
グニパイセンだ。
かれこれ三ヶ月ぶりくらいだろうか。
あれから俺は小人キラーマシンと化して、定期的に滅びそうな小人の村を襲っては、虐殺行為を繰り返していた。
冥力も溜まったので、小人を殺す際には短剣ではなく長柄の戦斧を使っている。どこに当たっても大体即死なので非常に使い勝手が良い。
戦斧のおかげもあってか、今では小人の地獄村も人口千人を超えた。
「へえ、変わった家だね。それに、そこかしこにある沼みたいなのは何なんだい?」
「あっ、はい。あれは俺の故郷の世界にあった日本家屋っすね。沼みたいなのは米が取れる水田っす」
最初は小人達が作っていた麦をメインに耕作しようとしたが、日本家屋と言えば水田だろうということで米作に変更していた。とはいえ、パンが無いのも味気ないので麦も作っている。
まだ米は収穫出来てないけど、思いつくままに種を生成した野菜軍団はそこそこ収穫されていた。
驚いたことに地獄内で作物を収穫すると俺に冥力が流れ込んでくるらしい。ノルサが言うには、死神の多くは神や巨人などが転生した存在なので、俺みたいに種を創造して農耕をしたりはしないそうだ。
おかげで、虐殺で得た冥力以外にも大量に冥力が手に入った。余った冥力を使って食料を大量に生産したので、食べ物の心配は今のところ全く無かった。
「ふーん、面白いことをしているんだね。それに米って言ったかい? 食べたこと無いなぁ」
「あっ、良かったら食べてって下さいっす」
「おっ、いいのかい? なんだか催促したようで悪いねぇ」
ちょうど昼時なので、グニパイセンと共同食堂へ向かう。
村人の人数も増えたので、食堂は大きめな体育館くらいの大きさに増築していた。数列に並んだ長い木テーブルに小人達が着席している。
俺の席は体育館ならステージに当たるようなお誕生日席だ。ぶっちゃけ勘弁して欲しいんだが、モーリスのおっさんとかがうるさいのでしょうがなく座っている。
「ささっ、先輩はこちらです。どうぞお座り下さいっす」
「おおー、これはなかなか見たことが無い料理だね」
今日の献立は、白飯、肉じゃが、卵焼き、ほうれん草のおひたし、そして味噌汁だ。デザートには定番と化したプリンを用意している。
俺が席に着くと、わいわい騒いでいた小人たちが突然静かになり、今か今かという目でこちらを伺い始めた。
なんでか知らないが、小人たちは昼飯の十分前には集まり、俺がいただきますと言うまで待機する習慣になっているのだ。
「あー、それではみなさん今日の恵みをヘル様に感謝して、いただきます!」
「「いただきます!」」
小人たちが猛スピードでバクバクと食べだす。相変わらずのすごい食欲だ。胃の大きさだけは普通の人と変わらないらしい。
数ヶ月経って小人達にも生気が戻ってきた。死んでいるのに生気というのもあれだが、今では農作業の合間に木細工などの別の活動もして、みんな余暇を趣味に費やしているようだ。
そのせいで俺はあちこちに木や鉱物を創ったり、細工に使う道具などを創らされていた。
まぁ、冥力は小人が作物を育てて作り出してくれるので全く問題はないわけだが。
さて、小人の観察はこれくらいにして、俺も飯を食うとするか。
「ガルム君。おかわりはあるかな?」
「えっ、早っ! もう食い終わったんすか?」
いつの間にかグニパイセンが料理を食べ終わっていた。
異常な早さだ。さすがは死神。
「ちょっと待ってて下さい。すんませーん、こっちにおかわりおなしゃす」
村人の人数が増えたので、今では小人の女衆が交代で食事当番をしている。
必要な分の食料は予め生成し、壁を分厚く凍らせた氷室や、光が差さない暗室に保管しているので、俺が随時食料を生成しなくても食事が用意されるようになっていた。
追加の御飯や肉じゃがが届くと、グニパイセンがまたも一瞬で完食した。
なんだか大食い番組を早送りで見ている気分だ。
しょうがないので、鍋や飯櫃ごと持ってきてもらうことにした。
その後、グニパイセンは黙々と料理の詰まった容器を空にし、デザートのプリンも二十個以上を平らげた。
パッと見はスリムな美青年なんだが、この人もノルサが狼の頭に変身するように、実は見た目と中身が違っていたりするのかもしれない。恐るべし。逆らわんとこ。
「いやー、食べた食べた。ごめんね、すっかりご馳走になっちゃったよ」
「いえいえ、喜んでもらえたなら幸いっす」
どうやら小人に続き、死神にも地獄飯は評価されたらしい。
グニパイセンは満足そうな顔をしていた。
「そうそうそれでね、ここに来た理由なんだけど、ちょっとガルム君のところで死者を千人くらい受け入れてもらえないかな」
「あっ、はい。自分で出来ることなら何でも大丈夫っす」
「おーそうかい。じゃあよろしく頼むよ。それからあのプリンとかいうやつも幾つか融通してもらえるかい?」
「あっ、はい。喜んで」
「いやー助かるよ」とグニパイセンは微笑むと、プリンを受け取って転移していった。
千人か。今の人口とほぼ同じだな。
これは食料庫を拡張する必要がありそうだ。それに死神が団体で来たら一気に食料を消費しそうだしね。
人口も千人を超えたことだし、そろそろどういう感じで村を作っていくかも考えないといけないな。
地獄の未来を俺はぼんやりと考えていた。
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