エルフの砦
退く! 媚びる! 省みる!
「行け! 死線を超えろ、野郎ども!」
エルフの砦の攻略戦だ。
木造の壁の上からは矢が大量に飛んでくる。
エルフは弓の名手だ。本来なら破城槌の屋根で矢を防げる筈なんだが、隙間を縫って矢が飛び込んで来やがる。
全くついてねぇぜ。部隊を率いて最初の任務がこれかよ。完全に消耗品扱いじゃねえか。
「おい、ガル! そんなに頭を上げてたら狙い撃ちされるぞ! ちゃんと破城槌の影に隠れろ!」
「あっ、はいっす」
俺達は二十人程の決死隊を作って門の前まで破城槌を押しながら、文字通りの死の行進をしていた。
押し手は徐々に矢で削られていく。エルフだって馬鹿じゃないんだ。砦を崩そうとする敵がいれば優先的に狙ってくる。
もう破城槌なんて置き去りにして逃げ出したい気分だが、そうも行かないだろう。これだけ砦に近づいてしまっては、逃げても背中を撃たれて殺されるだけだ。
「おら! お前らもっと気合いれろや! こんなところでモタモタしてたら全員ハリネズミになるぞ!」
俺たち傭兵はそもそも始めから士気が低い。
これをまとめるとなると、金で釣るか、戦わなくちゃいけない状況に追い込むしかないだろう。今回は完全に後者、つまり門の前まで辿り着かないと死ぬという目的の下、俺達は一致団結していた。
「畜生、ベオウルフ! 何が大金稼げるチャンスだよ! どう見ても冥界に行くチャンスじゃねえか!」
「そうだそうだ! てめえ後で覚えていろよ!」
「うるせえ! 口を動かす暇があるなら破城槌を押せや、ボケども!」
俺達は口々に己の不幸を呪いながらも、矢の豪雨をかい潜って何とか門の前までたどり着いた。
「よし、門をぶっ壊せ! 一番乗りの部隊は報奨金がたくさん出るぞ!」
ここまでくればエルフ達の死角だ。矢は飛んで来ないだろう。
真上から矢を撃たれても、破城槌の屋根が防いでくれる。
しかし、どうやらエルフ達は簡単には砦を落とさせてくれないようだった。
「油だ! 油が降ってきたぞ!」
守備兵が門の上から熱した油が落としてきたのだ。
先頭に立っていた数人が絶叫を上げながら暴れまわっている。
油が鎧の中に入って皮膚を焼いているのだろう。ありゃあ生き地獄だな。
さらに上から火矢が放たれた。
油に引火して破城槌が燃え上がる。
「馬鹿野郎! 逃げるんじゃねえ! 逃げても殺されるだけだぞ!」
動転した連中が我先にと逃げ出したが、もれなく背後から撃たれて死亡した。
くそったれが! もう決死隊は十人も残っちゃいねえ。これじゃあ破城槌を満足に引けやしない。
「畜生! おい、みんな盾を掲げろ! 密集して盾で防御しながら後退するぞ!」
もはやここに居ても死ぬだけだ。
盾なんて使ってもあの矢雨の前には気休めにしかならないが、とにかくやるしかねえ。
みんなで固まって盾の壁を作っていると、一人だけぼけっと突っ立っている奴がいた。
「おい、ガル! ぼうっとしてるんじゃねえ、撤退するぞ! こんなところで死ぬ必要はねえ!」
「んーいけると思うんすよね」
は? 何を言っているんだこいつ。こんな地獄みたいな状況でいけるも糞もねえだろ。
もうガルを見捨てて退却しようかと考えていると、ガルは一人で破城槌を引っ張り、衝角を扉に打ちつけた。
凄まじい衝撃音が響く。
おいおい、嘘だろ? なんつー怪力だよ。
敵の守備兵も慌てているようだ。
「なんだあいつは! 弓兵隊、あの大男を狙え!」
壁の上の弓兵隊がガルに狙いを付けている。
「おい、野郎ども! ガルを守れ! 盾で壁を作るんだ!」
せっかく出てきた勝機だ。これはしがみつくしかねえ。
みんなで必死になって矢を防ぐ。
矢が盾を貫通し胸甲にぶつかって下に落ちた。
頼むから顔には来ないでくれよ……。
雷鳴のような衝突音が何度か響くと、ついに扉がぶっ壊れた。
まじかよ、本当に一人でやっちまうなんて、とんでもねえ野郎だな。
「お前ら逃げるのは止めだ! 俺についてこい! 一番乗りは俺達だ!」
後方部隊も門の破壊に気づいて突撃してくるだろう。
大将首を探すなら今しかねえ!
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