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料理番のトロール

一日一万回感謝の貧乏揺すり。


「おい、トロール。そっちの荷物も運んでこい」

「了解っす」


 傭兵として帝国に潜入してから、そろそろ一ヶ月が経つ。

 しかしながら、俺の仕事は傭兵というよりも完全に雑用だ。傭兵になってからまだ一度も敵と戦っていないんだよ。

 しかもトロールとかいう変なあだ名まで付けられてるし、もう完全に心が折れそうだ。

 助けて、ヘル様。


 今日も前線部隊の補給物資を馬車に詰め込む作業が始まった。

 はぁ、さっさと終わらせよう。

 よいしょと、一気に三つ荷物を持つ。

 同じく補給の管理をしている上半身裸のおっさんが話しかけてきた。


「はっ、おめーはほんとに力だけはあるな。これで技量もあれば隊長格も夢じゃねえのに」

「はは、そうっすね」

 

 訓練を受けて前より戦闘技術は上がったものの、熟練の傭兵達には攻撃がかすりもしない。毎回サンドバッグ状態で木剣やら木槍で殴られる毎日だ。

 憂鬱になりながら荷物を馬車に積み込んでいると、前線帰りの傭兵の先輩がやって来た。

 

「おっ、トロール。今日もトロールの糞飯期待してるぜ」

「あっ、はい。了解っす」


 ここ一ヶ月間、後方で雑用ばかりしていた俺は、戦士としてではなく料理番として名を上げていた。

 配給の食材がしょぼいものしかないので、地獄からカレー粉を持ってきて適当にカレーを作ってみたのだ。

 始めは「トロールが糞を持ってきたぞ!」とか騒がれて、それこそ傭兵たちにタコ殴りにされそうになったが、腹の空いた勇気ある傭兵が食べたところ美味かったらしく、今ではトロールの糞飯として他の部隊でも噂になるほどの人気料理となっていた。

 まぁ個人的にはすごく不本意ではあるが、こんな世紀末的な戦闘集団の中で強く出れるはずもなく、俺は甘んじて糞作りのトロールという二つ名を受け入れたのだった。


「まったく、ガルム様に向かって無礼な連中デス。ガルム様、あやつらを噛み殺す許可を下さいデス!」

「いやいや、そんなことしたら傭兵隊を追い出されるっすよ。それじゃあ一ヶ月間の頑張りが無になるじゃないっすか」


 俺は顔を変えて人の世界に紛れ込んでいるが、ノルサは他の人に見えないようにしている。

 なので、ノルサと話している俺は、傍から見ると明後日の方向を向いてブツブツ呟いている危ないやつに見える。しかも日本人の習性なのか知らないが、困るとなんとなくニヤニヤしてしまうので、俺は他の傭兵達からトロールみたいなアホだと思われているようだった。まぁ、あながち間違ってもいないのだが。


「おい、トロール! ブツブツ呟いてないで手を動かせ! 昼までに終わらせないと食いっぱぐれるぞ!」

「あっ、はい。すんません」


 へいへい、頑張りますか。

 俺は再び荷物を持ち上げながら、今日何度目になるか分からないため息をついた




 唯一の楽しみである飯を食っていると、同期の傭兵が俺の隣に座った。


「おいトロール、聞いたか? 第一部隊で手柄を上げたやつが、小隊の隊員を集めにここに来てるってよ」

「はぁ、そうっすか」

「おいおい、もっと興味ありそうな顔しろよ。まぁ、たしかにお前は選ばれないだろうがな。あっはっはっは」


 うるせえ。放っといてくれ。

 俺をからかうと満足したのか同期のやつはどっかに行った。まぁ、あいつもここじゃ落ちこぼれだ。俺をからかうくらいしかストレスのはけ口がないんだろう。

 ガツガツと今日の料理の残りを貪ってると、見慣れない傭兵が隣に座った。

 

「よお、ガル。調子はどうだ?」

「んー、誰っすか?」

「おいおい、忘れたのかよ。入団試験で対戦したじゃねえか。ベオウルフだよ、ベオウルフ」

「ああ、あの時の。久しぶりっす」


 あの時のザ・手練って感じの傭兵か。

 思えばあの時に一発でも当てられれば違ったんだろうな。

 この人は第一部隊だったはずだから、前線帰りだろうか。


「それで、第一部隊のベオウルフ様がこんな肥溜めになんのようっすか?」

「おいおい、なんでお前はそんなやさぐれてるんだよ? せっかく良い話を持ってきてやったんだぜ?」

「良い話?」


 なんだか怪しいなぁ。

 っていうか、一目見たときから思っていたけど何か胡散臭いんだよこの人。

 遊び人の臭いというかそういうのがプンプンするよ。俺の第六感が危険人物だと告げているわ。


「実はな、俺は中隊長首を取るっていう手柄を立てたのさ。それで傭兵の小隊を預かることになったんだ」

「はぁ、そうっすか。それは良かったっすね」

「だから話を聞けって! それでだ、お前を俺の小隊に入れようと思うんだ。どうだ? 良い話だろ?」

「はぁ、俺をっすか?」


 なんでだ? 俺みたいなウスノロを入れて何の得があるのかね?

 せいぜいが糞を食わせるくらいだぜ。美味い糞だがな。


「ああ、そうさ。俺はお前と戦ったからよく分かる。あの膂力は並じゃねえ。おまけにやたらと頑丈ときている。俺はお前には特別な何かがあると思ってるんだ」

「ほうほう」

「俺は自分の直感を大事にしている方でな。実際、戦場でもそのおかげで生き延びて来れたんだ。その勘が言っているのさ。お前を仲間につけておけばきっと上手くいくってな。実際こんな力持ちが仲間に入ったら心強いじゃねえか」

「なるほどなるほど」


 なかなか分かってるじゃないか、この人は。

 最初見た瞬間から、なんとなく他の人とは違うと思っていたんだよ。

 なんというか目に宿る才気っていうの? そういうのが滲み出ているよね。


「どうだ? 俺はお前の力を買っている。それに俺だってそこそこ名の知れた傭兵なんだぜ? 一緒に来て損はさせねえよ」

「ふむふむ、中々良い話のようっすね」

「だろ? よっしゃ、じゃあ決まりだ! 明日の朝の馬車で前線まで戻るから、それまでに準備を整えておいてくれよな! 頼んだぜ、相棒!」

「了解っす!」


 ベオウルフは俺の肩を叩くと、颯爽と去っていった

 どうやら新しい風が吹いてきたようだ。俺にも運が回ってきたか。


ブログで先行配信してます。

http://garmthedeath.blog.fc2.com/blog-category-1.html


ブクマ&評価が励みになるんで、適当によろしくおなしゃす。


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