stage.7 星降山の洞窟 その2
それは、無数の穴に囲まれた大広間であった。
無数といっても実際は有限である。しかし壁から天井から全方位に穴が開いているとなると多少大げさに表現しても罰は当たるまい。
なぜか地面には穴が開いていないのが不思議である。
一つ一つの穴はあのミミズ(?)の通る穴と同じようなサイズであり、それが示すのは。
「やっぱり、いっぱい出てくるの?」
大ミミズが地面を進む音が重なって聞こえてくるので、うさみはいやそうにつぶやいた。
反響しているからとかそういう問題ではない間違いなく複数の大ミミズがやってくる!
「うっわぁ」
そろそろくるかとうさみが身がまえたところで。
四方八方の穴から大ミミズが飛び出してきた。
うさみの身長ほどの太さの、すごく大きいものが三つ四つ五つ六つ……。
うさみとしてはドン引きである。色彩的には灰色っぽいのでそこまでグロさは感じないが、大きさと数が尋常ではない。
広い空間があっという間に大ミミズに侵食されていく。
飛んで跳ねて上を走って乗り換えて。
穴という穴から飛び出し手は別の穴へ飛び込んでいく何十メートルとい長さの大ミミズたち。
「石っぽい質感だけど石蛇、みたいな?」
相手の身体の上を走ってみた結果、思ったより表皮がかたいのがわかる。硬くて重い。踏みごたえとしては石であった。
道理で。先ほどから敵同士が広間の中でぶつかりあって、欠けた破片のようなものが飛んでくる。そいつが危険感知に触るのだ。握りこぶしより大きな石片が結構な速度で飛んでくるものだから、当たれば痛いというのは見るだけでもわかる。
ガリグリゴリと互いを削りあいながらも移動を続ける大石ミミズ。その移動速度はなかなか早い。子供が走るより早いかもしれない。速度と重量をかけあわせたものが破壊力であるならば、まともにぶつかればうさみは一撃で肉片だろう。そうでなくともかすめれば死ぬだろうが。
さて、子供が走るより早い、程度なのでその身体の上を走るのはうさみにとっては簡単なことで、たくさんの牙が生えた大きな口に捕まらないよう気を付けながら適当に乗り継いでいれば生き延びるのは簡単なことである。
もう大石ミミズで地面が見えないくらい出たり入ったりする数が増えてきているが、いまのところ身の危険は感じなかった。
だが問題はそこではない。
「で、これどこに行けばいいの?」
うさみは進む先を見失っていたのであった。
穴がたくさんあるので大広間を抜けるだけなら簡単である。
しかし、大石ミミズの通り道から大広間を出たととして、先に進めるのか。
彼らの巣か何かにたどり着くとか……ここが巣かもしれないか。
なんであれ、うさみは山の頂上へ行きたいのであって、大石ミミズとたわむれたいわけでは断じてなく、もしかしてここが最深部だったりするの? あるいはこの穴全部調べて回るのかな? などと考えていた。
考えてはいたのだが、いまいちまとまらない。前に進むだけなら簡単なのだが、さてどうするか。
少し悩んでうさみは考えるのをやめた。
つまりは片端から調べて回るということである。総当たり。正解があるのならいつか当たることだろう。幸い、大石ミミズが大きいので穴を調べて回るのにうさみのサイズなら苦労しないで進むことができそうである。移動速度もうさみが走るよりはるかに遅い。ならば何の問題もなかろう。進め。
という具合でうさみは片端から穴に突入していった。
していったのはいいのだが。
「あれ?」
大広間にひょっこり顔だけ出すうさみ。キョロキョロと見回すと自分がいる穴に突っ込んでくる大石ミミズに気づき、隣の穴にひょいと移動、今度はその穴を潜っていく。
しかしたいした間もなく飛び出してくる。うさみを追うように出てくる大石ミミズ。
現れた大石ミミズの頭にひょいと乗り、大広間を横切りながらうさみは顎に手を当てて唸った。
「中でつながってる……」
穴同士が内部でつながっていた。一つずつがつながっているわけではなく、三つとか四つとかもしかするともっとだ。
考えてみれば当然といえば当然だ。穴と穴がつながっているのは大石ミミズの動きでわかる。そして空間を考えれば中で各々のルートが重なったり交わっていない方がおかしい。
つまり大広間に開いている穴は数十。五十はないと思うが三十より多い。そしてその中から適当に選んだ穴をたどっていくと、その先でさながら立体迷路のようにつながっていたのである。
最初に入った穴は100メートル強ほどの長さで、道中に別ルートとの交点と思しき分かれ道が2つあり、曲がりくねった挙句天井近い位置の穴へとつながっていた。この時三叉路では直進を選んだ。
出てきた穴の隣にあった2回目に入った穴は、200メートルほど進むと同様の交点があり、その右手側から現れた大石ミミズがルート変更してうさみを追いかけてきたのだ。
大広間に出入りしている数を考えれば何体もの大石ミミズが通路にしており、大広間の様相以上に危険度が高い。音は四方八方に反響し、地面も震えているしもうよくわからない。至近までくれば流石にわかるが、すれ違うスペースはないので基本出会ったら追いかけられるだけになる。
ルートを確認するために内部へ入って調べようというのに、内部に入ると大石ミミズに追いかけられ、逃げ場が限定されてしまう。これでは前後をはさまれるようなことがあればそれで詰みである。
うさみは大石ミミズを乗り換え乗り継ぎ跳び越えながら、どうしたものかと改めて考えを巡らすのだった。




