stage.7 星降山の洞窟 その1
9/6一部消えてたので加筆修正
うさみにとって洞窟というと、旅行で行った鍾乳洞を思い出す。
じめっとしていて滑りやすくて狭くて冬行くと暑いし夏行くと涼しいので夏がおススメ。ただし長袖を用意していこう。濡れる前提で汚れてもいい恰好で。
上下の移動もそれなりにあり、狭い場所を抜ける必要がある場合もある。天然記念物だったりでヘタに触らないよう気を付けたり、汗をかいて連れが全身から湯気を出したりと難所も結構多い。
そんな苦労をしたうえでも、大地と水が生み出した幻想的な景色は一見の価値はあるものだ。
一方この洞窟はそのイメージとは違っていた。
まず広い。
入り口こそ直径二メートルほどでしかなく、横幅はともかく上下の圧迫感は……うさみとしてはそれほどでもなかったが、ちょっとジャンプすれば十分手が届きそうな狭さではあった。
しかし少し中に踏み込むと一転。
四、五人は横に並んで歩けそうな広さに、高さはといえば四メートルくらいはあるだろうか。
変わった表現をするならば、二人並んで棒切れを振り回しても壁や天井が邪魔にならない程度には広い。
外を跳び回るドラゴンが入ってきたとすれば、窮屈で思うように身動きできないだろう。
しかし、人間サイズより一回り二回り大きい何かが生息していてもおかしくはない程度に広い。
耳を澄ますと、ゴォォ、と音が聞こえてくる。断続的に聞こえる反響しすぎているせいか、音源はよくわからない。水の流れる音かもしれないし風の通る音かもしれず。巨大生物のいびきかもしれない。あるいは地下を列車でも走っているとか。
ファンタジーという前提で見ればさすがに最後のはないだろうが。
周囲は主に石で覆われていて、とりあえず崩れそうな様子はない。
足元は動くのに不自由しない程度に平坦だ。よく見ると水が流れたような跡がある。しかしながら現在は流れておらず、見える範囲にたまっている様子もない。
特徴的なのは、直径一メートル強から二メートルほどの横穴がところどころに開いている点だ。ちょっと覗いてみたが先は見えない。曲がりくねっていたり、すぐに埋もれていたりするからだ。
そしてそんな横穴の付近にはこすれたような跡が地面についている。
「これは何かの通り道なのかな」
小さい穴から別の小さい穴までこすれた後がつながっているのを見て、うさみはつぶやく。
この大きさの何かが生息しているとすると、それはなかなか大きなサイズではないだろうか。
メインとなる大通路と何かの通り道かもしれない小通路。
移動しやすさから言って、またその何かに出くわす可能性を考えても、大通路を進むのが、まあ順当だと思う。
こんな石を掘って通路を作るような相手との鬼ごっこはあまり考えたくないうさみだった。
だってきっとこれミミズとかそういう系の相手だ。
もしかするとグロいかもしれない。
必要があれば触るくらいは平気だが積極的に見たいとも思わない。
うさみはなんとなく足音と気配を殺して、ついでに魔力も抑えて大通路を進むことにした。
会わずにすればそれに越したことはないからだ。もっともそうやすやすと進めるとも思ってはいなかったが。
大通路はゆるやかに下っているようだった。左右に関してはくねくねと変化が多く、ともすれば方角を見失いそうになる。概ね山の中心方向へ向けて進んでいるように感じられるが、うさみはあまり自信を持てなかった。
障害物はそれほど多くない。大通路の中央を移動する分には全くないといってもいい。
通路の端の方には横穴が急角度で穴を開けていたりするので気を付けなければ危ないかもしれない。
他にも岩が出っ張っている部分や部分的に狭くなっている場所など気を付けるべき物陰は点在していた。
しかしそういった影に潜んでの奇襲などもなく、気を張った分、無駄に疲れただけだった。
奇襲を確信していたうさみは拍子抜けすることになった。
そしてとうとう出会った肝心の敵は、特に問題にならなかった。
予想通り、横穴から横穴へと何かが移動する。それは蛇かミミズのような細長いモノで結構な速さで動く。節のようなものがあるように見えるしあるいはただの模様かもしれない。
一瞬見えた頭は蛇とは言いにくくいっぱい牙の生えた大きな口という表現が適当か。
ガリガリと何かを削る音を立てながら進むそれとは、何度か遭遇することになったが、うさみが息を殺しているとそのまま通りすぎていく。
うさみを感知していないのか、そもそも害のない相手なのか。
どちらにしても1メートル以上の太さの推定岩を削りながらそれなり以上の速度で移動するミミズか蛇であるとして、やはり積極的に関わる必要もないだろう。
うさみはそう判断を下し、大通路を進む。
そしてついに。
大きな広間へたどり着いたのであった。




