冒険 2
オーナーに店を追い出され、終始イラついた表情のスララについていくと、洞窟についた。
なんかのドキュメンタリーで見たことある、熊の寝ぐらほどの大きさの…洞窟というか、洞穴?
「洞窟探索だっけ…探索って、何すりゃいいんだ?」
「そうだな…洞窟の大きさ、魔物の種類、強さの調査、後は死体の回収かな…」
疑問にはレイが答えてくれた。
死体?え、人が死ぬんですか?
「そりゃそうだよ、油断してたら背後から~っていうのもあるだろうし、
そういえばカートゥーン、戦う準備はできてる?」
疑問に思ってたら、レイが答えてくれた。
「戦うって…どうやって?」
「ん~俺はナイフで切ったり…スララはどうやって戦ってんだっけ?」
「私は拳だな。」
ワオ、武士。
しかし俺は暴力とは無縁の人間である。
殺す殺されるの攻防に巻き込まれるとなるとかなりきついかな。
「じゃあ...カートゥーンには俺のナイフ貸してやるよ。」
そんなことを逡巡していると、レイがナイフを投げてきた。
ちょ、あぶねえって、手渡してくれよ、しかも刃の方向けて投げてきやがった。
「…あ、あと魔法があったな。」
…魔法?
カートゥーンの中の廚二の部分が疼く。
「魔法って言うと…あれか?手から炎が出たり?」
「なんだ、知ってるのか。」
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どうやら、此処には魔法というものがあるらしい。
さらなるワクワクと共に、魔法以外の情報も開示された。
…文化、魔法という存在、それらを照らし合わせれば、この場所が地球でないことくらいは猿でもわかる。
…しかし、カートゥーン元の世界への未練は無い、それよりも目の前の魔法という存在に心を震わせているのだ。
「魔法っていうのは…
体内にある『魔力』を使用して使うことができる…技?みたいなもんだ。」
「例えばこうやって…炎を出してみたりな。
【発火】」
スララの指先から小さな炎が出る。
すげえ、思わず拍手してしまった。
「俺にもできんのかな?」
「やってみりゃいい、指先に力を入れて、【発火】って呟けばできる。」
そんなに簡単なんだろうか。
懐疑的ではあるが、とりあえずやってみる。
指先に力を入れ、小さく呟く。
「……【フレイム】。」
……ッ!? 感じたことのない感覚が、心臓から指先に血流が集中し、指先だけが極端に熱くなるような、痛みにも似た感覚がした。
…直後、俺の指からは炎が立ち昇った。
「うおおお!!ほんとにできた!」
炎は少し経つと、プスン…と音をたてて消えた。
「初魔術か、おめでとう。」
「初めてにしては、よくできたんじゃない?」
スララとレイからそう言われた。
照れるな、才能の片鱗見せちゃった感じかな?
そんなこんなで、俺は魔術が扱えるようになった。
その日は、日も暮れ、夜になろうとしていたので、俺が着火した薪で暖をとり、洞窟探索は明日の早朝から行くことにした。
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暗い場所。
来たことがあるような、無いような場所に居た。
ここは……俺の部屋か?
貼ってあるポスター、部屋の内装、薄暗いが、俺の部屋だ。
…やっべ、エアコンつけっぱなしじゃねえか、最悪だ。
しかし、エアコンよりも気になることがある。
部屋の何処かから、子供の泣き声が聞こえる。
俺はその泣き声のする方向に歩いていく。
すると、どうやら泣き声は、クローゼットの中からだと気づいた。
俺はクローゼットに手をかけ────
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起きた。
あたりはまだ暗かった。
背中に嫌な汗をかいている、びっちょりだ。
ここは…そうだ。俺は別世界…異世界に来ていたんだ。
「…カートゥーン? ずいぶんうなされてたけど、大丈夫?」
起きていたレイにそう言われた。
俺とスララが寝ている間、あたりを警戒してくれていたらしい。
大丈夫だと伝え、俺はまた横になった。
…夢の内容は思い出せない。
いい夢ではなかった気がする。
…とりあえず、二度寝しようかと思った時、ちょうど朝日が昇った。
朝日に照らされ、掛けていた眼鏡が光を反射する。
…ともかく、異世界に来てから二日目になった。
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洞窟に入ってみると、思いのほか広く、3人ほどなら楽に通れるほどのスペースがあった。
また、洞窟内は淡く青く光っていた。
「思ったより中は広いんだな…」
「ああ、それに、適度に魔力もあるから明かりも必要ないな。」
ふむ、魔力があると青く光るのか。
なんか、光るコケみたいな感じ?
そんなことを考えながら、奥へ、奥へと進んでいった。
進めば進むほど、胸にズンと沈むような重みが増していった。
「なんか…身体重いんだけど…。」
「…最深部が近いみたいだな。
魔力濃度が濃いとそういう事もある。」
なるほど、罪悪感を感じると心に重い錠前がかかるとかじゃないのか。
もっとも、罪悪感を感じるようなことなんてしていないが。
そして、ここで初めて、この洞窟内での魔物に出会った。
「巨大蝙蝠だ!
カートゥーンの方に行ったぞ!」
スララがそう言った頃には、俺はその巨大蝙蝠とやらに噛みつかれていた。
「うおおおおおおおお!痛ッてえええぇぇ!!」
俺は咄嗟に【発火】を使った。
巨大蝙蝠は、ギイイッ!と叫び声を上げ、俺の腕ごと焼けた。
「熱ッちいいいいいい!!」
「馬鹿!アホ! レイ!何とかしてやれ!」
「あははははははははッ!!」
俺が悶え、スララが叱責し、レイが爆笑している。
この場で俺の火傷を助けてくれる奴はいない。…まあ自業自得だから仕方ないか…。
……その時だった、この爆笑と叱責に包まれたカオスな空間に新たな人間がエントリーした。
「おいおいお〜〜い、酷い怪我じゃねえかよ。」
彼は洞窟の奥から現れた、パーマにプリン色の髪の毛をした男だった。
「仲間も笑ったりキレてないで助けてやれよな〜、ったくよ〜。」
そう言いながら、彼は俺の火傷跡に、懐から出した濡れた布をあて、てきぱきと治療してくれた。
「包帯を巻いて……っと、ほら、これでいいだろ。」
「…あ、ありがとうございま…」
「5000ポンドルだ。」
……?
一般的に優しい人間かと思ったら、そうでも無いようだ。普通に金を要求された。
「……は?」
「いや、治療費。
まさかタダだとでも思ったのか?」
俺が戸惑っていると、スララが俺の腕を引っ張った。
「カートゥーン、ああいうのは無視だ、無視。」
「…でも、助けてくれたけど…」
「いるんだよ、適当な治療して金だけ要求する詐欺師がな。」
詐欺師……と言うには、いい手際の治療だった。現に俺の腕に痛みはない。
「………おい、お嬢ちゃん?」
男は、俺の手を引っ張るスララを呼び止めた。
「なんだ? 生憎、持ち合わせがないからここに来た身なんだが。」
「違う、金じゃねえよ。この洞窟、この先行き止まりだぞ。」
行き止まり…そう言えば、彼は洞窟の奥から来ていた。
「これ以上進んでも無駄だぞ、金だけ欲しいんなら引き返して損はない。」
しかしこの人、親切だな、治療してくれたのに金も払わない俺たちにどんどん情報を開示していく。
「いいや、奥には進む。」
「なんでだよ」
「お前が嘘をついているかもしれないからな。本当は奥には価値の高いものがあって、お前はそれを取り出すための道具を取りに戻っている可能性もある」
疑いすぎじゃないですかね?
「嘘じゃねえよ、この俺、グラス・ニャールの名前にかけてな。」
「グ…グラス・ニャール…!?」
名前に驚いたような表情を浮かべるスララに、その男、グラス・ニャールはご満悦だ。
「……誰だ……!?」
「「知らねえのかよ!」」
グラスと俺のツッコミが揃った。
「はァ~…まあ、どうしても奥に行きたいなら仕方ねえ。
行きたきゃ行けばいいさ、無駄足だけどな。」
「ああ、そうさせてもらう。」
……終始敵視していたスララによって、彼との邂逅は幕を閉じた。
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…………本当に行き止まりだった。
「……ああいうタイプが、まさか本当のことをほざいているとは……」
スララもショックを受けている。
しかし不自然だ。
魔力濃度っていうのが高いのに、奥に行ったら何もありませんでしたっていうことがあり得るのか?
「……特に貴重なものがないんじゃ、貰えるのは報告費だけだね。
もう一つ何かクエストを受けなきゃ、飯代は払えないんじゃないかな」
レイがスララのイラつきそうな情報をプレゼントしてくれた。
「……仕方ない、戻るぞ。」
スララがそう言いながら、八つ当たり気味に拳を壁に突き出した。
…………スララの拳が、壁をブチ抜いた。
「…………!! この先空間があるぞ!」
スララのその号令で、俺とレイは壁を掘り始めた。
…………一通り壁を掘り出し、手が痛みを訴え始めた頃、顕になった空間にあったのは、先が見えないほど長い、降りの階段だった。
⇨to be continued …




