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【音魔法使い】の魔紋  作者: フリューげリュ
異世界の日常
8/30

3話【母さん】

目を覚ます。

ここはベットの上、座った首を上げる、上体だけ起こして確認して、思い出す。

そうだ、僕は異世界に来たんだった。

もう1年だ、あの日から。

隣を見る、今日はいた。

父さんは、たまに居なくなる。

仕事をしてるらしい、冒険者をやっているのだ聞いた時は少し希望に満ちていたが、要はほとんど家にいないとゆうだけの話だ。

顔もまだよく覚えないまま1歳を迎えてしまった。

でも今日はいる、律儀な人だ。

今日が特別な日だから、それわ分かるけど、久々に父さんの人間らしさを見た感じがした、少し嬉しい。

父さんは白髪だった、僕も白髪だ。

遺伝らしいとは分かるけど、母さんは多分黒髪なんだろうな。

僕の髪は白髪に黒のメッシュが入ってるから。


「エノワール、起きてたのか」


父さんが僕に気付いて話しかける。

優しい声だ、別に子供が嫌いな人じゃないらしい。

いや、それは前からわかっていたか。


「おあょっ」

「、、もう喋れるんだな」


父さんは、少し寂しそうに言った。

まあ喋れる、僕は生後4ヶ月で喋ったんだ。

でもまだ舌がダメだな、もう少ししないとまともな発音は出来なさそう。


「、、お前も母さんに会えるの楽しみにしてたんだな?」

「うんっ! まま、こうあえう??」


今日会える?と聞いたつもりなんだが、聞き取れただろうか?

言ってる僕が何言ってんだってなるくらい滑舌が悪い、なんだかもどかしい。


「おう、会えるぞ。 もうそろそろ出てくる時間だな、迎えに行くか」


父さんはそう言うと僕を抱き上げる。

出てくる、とゆう表現がよく分からなかった。

でも聞き取れていたようで安心する。





ーーーーー





「見えるかエノワール? あそこが母さんの家だ」


父さんに揺られる道は、なかなか悪くなかった。

何だかんだで外に出るのは久しぶりかもしれない。

前にも父さんに連れ出してもらった記憶はある、その時は木の実を食べて、川の水に浸かって、小便を漏らしたような気がする。

もう3ヶ月は前の話だ、記憶も曖昧になってる。

だから少し新鮮だった。

外の空気はそんな美味くない、田んぼの匂いは嫌いじゃないけど好きでもないんだ。


「おおいい、まま?」

「ああ、あれはダンジョンって言ってな。 あの中も凄く大きいんだ。 あそこ、開いてるだろ?あそこが入口だ。 母さんが出てくるまでここでご飯にしよう」

「おあんっ!! しゅい!!」


ご飯にすると聞こえた、これは僥倖だ。

僕は今空腹でお腹と背中がくっつきそうだからね。

父さんの隣に座って、父さんが背負ってきたミルクを飲ませてもらう。

粉ミルクだ、こんな時代だから粉ミルクも粉瘤みたいなものを想像していた昔の僕は、初めて飲んだ時飛んで喜んだな。

この世界の粉ミルク、正直そんなに美味くない。

でも粉っぽさのある感じかと言えばそうじゃなくて、強いて言えば薄めすぎが原因らしいのだ。

ミルクを飲み終わると、少し眠くなった。

父さんは僕が飲み終わると少し素振りをすると言い残して離れていってしまった。

僕の左目は確かに父さんが剣を振る、その振動を捉えている。

元気だなぁ、と思ったのを最後に、僕は眠りについた。





ーーーーー





「エノワール、起きろ。 母さんが出てきた」

「ううん、まま、おいう、、、」


父さんの声で起こされてみると、左目が異様に熱いのに気付く。

違和感は無いし、痛みもない、ただ熱い。

その目が、何かを捉えていた。

慌てて右目を視線に合わせると、そこにはスラッと長い女性がいた。

ダンジョンの入口をくぐって、こちらに来ている。


「おかえり、エルン。 相変わらず綺麗だね」


父さんが何か言っている、けど気にならない。

否、気にしてる余裕が無い。

僕は今、凄まじい何かと対面している、それだけは分かる。

黒い髪に黒い目、黒いドレスに身を包んだ女性。

これが恐らく母さん、それは分かる。

でも分からない、その後ろに連なる何かが、どうしても分からないんだ。

この1年、音を見る生活を続けた、そして慣れ親しんだ。

この感覚を、覚えるのにそう長くはかからなかった。

おかしいんだ、母さんの後ろにいる何か、そいつが、全く音を発してない。

後ろについてるのは、あれはなんだ?

スライムのようにも見える、、

考えても分からないと諦めるのに、そう時間は掛からなかった。


「そうかしら? 久しぶりねノリヒト。 元気だった? そっちら、エノワールだったわね? 久しぶり、でいいのかしら?」


母さんの声は、すごく綺麗だった。

なんの不純物もない、綺麗な声。

その声を不思議に思うことは無かった、そうゆう存在なのだと、なにかに理解させられたんだ。


「ああ、久しぶりだ!エルン、この日を待っていた、」

「いあいふい!まま!」

「あら言葉が喋れるのね?すごいすごい」


久しぶり、と言ってみたが、これは伝わっているのだろうか?

母さんは、ずっとそんなテンポだった。

的を外したような、独特の間のある喋り方。

頭を使うのが嫌いなんだなと勝手に納得しつつ、父さんと母さんが食べてるのを眺める。

その傍ら、ずっと母さんの後ろでプルプルしている何かを観察する。

大きさは僕より少し大きいくらい、波打つようなシルエットの体をプルプルさせるのが感情表現のようだった。

流線型の丸い体はツルツルで、衝動的に抱き着きたくなる魔力がある。


「へえ、今は冒険者をしているのね」

「うん、【音魔法使い】と番になるような候補は要らないと捨てられてしまったからね、今は村の用心棒みたいな事をしているよ」

「あら、それは悪い事をしたわ?」

「いいんだ、大丈夫。僕は幸せだ。」

「ならいいわ、これあげる」

「ネックレス? 作ったのかい?」

「時間があるから暇つぶしかしら? 似合うと思うわよ??」

「ありがたく付けさせてもらう、」


父さんと母さん、夫婦仲はそんなに悪くなさそうだった。

父さんが着けたネックレスは、暗い黒色の宝石が嵌められた指輪にチェーンを通したようなものみたい。

指輪のデザインが凝っていて、いつのものか分からないけど文字の刻まれた指輪は黒光りする宝石と黄金色の指輪でかなり印象的なインパクトのあるデザインだった。

付けた父さんは嬉しそう、母さんの表情はなかなか読みずらいが、それでも悪い気はしていないようだった。





ーーーーー





その日は、あの後家に帰って3人で夜ご飯まで一緒にいた。

昼時には国の使いと名乗る人が来て、母さんと1緒に1度ダンジョンに入っていった。

出てくると受け取るものは受け取ったといってそそくさと村を出てしまったが、1600トンもの食料を積み込める馬車も見当たらなければ持ち出した様子も見えなかった。

もしかするとアイテムボックス的な何かがあるのかもしれない。

少し気になったが、それも寝て起きればうろ覚えだ。

母さんももう帰ってしまった。

バイバイくらい言いたかったが、仕方ないだろう。

振り返ると、父さんが珍しくまだ寝ていた。

時刻はだいたい9時半、昨日はしっかり話せたようで、その顔は少し満足気だった。

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