旦那編 marito 29:芋虫の襲来(その1)La invasione di vermi:primo
どこまでも続く草原の中、牧場の近くまで行くと、牛飼いというか管理人たちが居る。牧場には牛の外に羊とか山羊とか居るから、牛飼いってことはないよね。
何だかみんな緊張して話している。牛たちも羊たちも落ち着かない様子だ。
みんなで近付いて行くと、管理人の一人が話しかけて来る。
「冒険者さんたちかぃ?」
「はぃ、この辺に芋虫が出ると聞いたのですが――」
「おぉそれは――本当に困っております。何か良い方策があれば是非とも教えていただきたい」
「我々も協力します。なにとぞあの憎い芋虫を撃退して下さい」
管理人たちは口々に芋虫被害の酷さを訴える。そして早々に、早速と長の所に案内された。
長の家は管理人たちの集落の一つだ。同じような家ばかりなので、共同で牧場をやっているのだろう。五人で入ると少し狭く感じるリビングのような所で話をする。
長は、見た目五十歳くらいの逞しそうなおっさんだ。
「この辺の集落には五つの牧場があってな。儂が取りまとめをしておる。まぁ村長未満という処じゃろう」
ぽつぽつと話始める。
「毎年この時期になると大きな芋虫の集団が家畜や畑を荒らして回り、かなりの被害が出る。そのため、土地自体は良いのじゃが、なかなか豊かにならんのだ。何とか防いで貰えんじゃろうか?」
なるほど、これを退治するのが今回の目的ね。ここで引いてはインスタンスが終わらない。
ジョルジュくんもさすがに竪琴を弾かずに神妙に聞いている。
「さて、自分たちにどこまで出来るか分かりませんが、お力になりたいと思います」
ディアが代表して真面目に応える。
「それで、大きさはどれくらいで、何匹くらい出て来るのでしょうか?」
「そうじゃのぅ、いつもの例だと、だいたい五メートルくらいかのぅ。五~六匹は出る」
ふぅむなかなか大変そうだ。
「対策を考えたいと思いますので、しばらく時間を下さい。またご協力をお願いするかもしれません。その場合は相談させて下さい」
「もちろん協力はする。芋虫は明日にも出かねん。準備があるなら急ぐ必要があろう」
そうして、長の家で作戦会議をする。
「さてどう対策しようか? とりあえずみんなの意見を聞かせて欲しい」
「敵は複数じゃからのぅ、まとめて相手するのは難しいと思うぞ」
「一匹ずつやっつけるとしたら、やっぱり罠しかなさそう」
「芋虫って地属性じゃないか? ワイの得意の火攻めが良いと思うんや」
「きゃーサブやん頭いいですぅ~」
幻影の自動起動は止めて欲しい。
「一匹ずつ誘導して、穴に落とし火で攻撃するしかないな」
「で、具体的にはどうやるのじゃ?」
「一列になるように誘導路を造って、一匹通ったら遮断か……」
「燃えるものあるかな?」
「油があり、冬用に刈った牧草を使うかな」
色々意見が出たけど、作戦は決まった。
防柵を両側に並べて通路を造り、そこに芋虫たちを誘導する。
通路の幅を段々狭くして芋虫たちを一列にする。
両側からはるっちとサブが火魔法で抑えながら、一匹ずつ通路から出す。
落とし穴に嵌めて総攻撃で一匹ずつ仕留める。
「よし決まった。直ちに準備に入ろう!」
ディアの声に一斉に行動を始める。
それからは素早かった。
管理人たちと協力して防柵を造り、地魔法を駆使して落し穴を準備した。
そして、翌日の第一夜刻
「来たぞ!」
見張りの声に、魔法の灯と共に一斉に篝火が焚かれる。
暗がりの中、炎の灯に浮かび上がる芋虫たち、五~六匹程度だと思うが、大きさが桁違いだ。
予定通り、はるっちとサブが左右の防柵の外側へ走る。
「サブ、行くぞ!」
「おっしゃぁ、出番やぁ~」
「サブやん、頑張るです~」
「おぉ、腕輪はん、ワイはやるで~~~」
何か緊張感が足りんような気がするが、やる気だけは十分だ。
「何とか間に合ったな」
ディアが次の指示を出す。
「自分とことねが落し穴に芋虫を落とす。ジョルジュはやや後方の音の届く位置で支援歌を頼む!」
ジョルジュが楽しそうに頷く。
「いよいよ決戦ですな」ポロロン♪
わたしは準備した新魔法を発動させる。
「火纏い!」
短剣とディアの鎚鉾に炎が乗る。
「戦いの歌!」
竪琴の旋律と共に戦いが始まる。
次回 「旦那編 30:芋虫の襲来(その2)La invasione di vermi:secondo」




