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旦那編 marito 23:ツィンの毒蛙 Rana velenosa gemellare

 薄く照らされた灯りの下、大きなモンスター影が動く。

 緑色の、二メートルを超す大型の爬虫類だ。

 それも二匹居る。

 低い声を響かせて、もそっと動いている。

 距離は二・三十メートルはあるかもしれないが、大きいので近くに居るように感じる。

「この状態でいきなり戦闘(バッターリア)は危ない! とりあえず観察だけにする!」

 指示を飛ばすと、みんな姿勢を低くする。

 シンは急いで火を消している。こういう所は卒がない。


「蛙だな」

「蛙ですね」

「蛙だわ」

「蛙にしか見えんわ~」

「蛙ですな」ポロロン♪

 意見は一致した。


 夜戦は見通しが悪いので、明るくなってから挑むことにする。

 “毒持ちの可能性がある„ とのシンの指摘に、全員に解毒剤ポツィオーネ・ディジントッシカンテンをたんまり持たせることにする。

 緊迫はしたが夜は休むことにする。移動の後だし疲れて戦闘(バッターリア)に影響が出るのは避ける。

 夜直は全員の交代とした。就寝時間を長くするためだ。

 ジョルジュ、ちゃんとやってね。サブは夜直中は幻影(ヴィジオーネ)禁止!


 日出後、朝ご飯中に今日の行動を確認する。

「とりあえず二手に分かれて、昨日仕掛けた罠の確認。報告用に種類と数を記録して! 例の蛙さんを見つけたら、一旦退いて全員揃ってからチャレンジする。絶対先走らないで! まずは相手の能力と強さを確認するのが先」

「分かったわ。無理はしない」

「どんな攻撃をして来るか、こちらの有効な攻撃は何かを確認しましょう」

「じゃ、エドとシン、私とサブが別班ね。ジョルジュは私の方に来るんでしょ?」

「左様ですな。是非とも良い所を記録したいと思います」ポロロン♪

「それでは出発しよう。ジョルジュ、蛙の近くでは戦闘(バッターリア)が始まるまで竪琴(アルパ)は控えて」

「分かりました。リーダーの指示通りに」ポロロン♪


 罠を見て回っているけど、やっぱり水生のものが多い。昆虫や攻撃して来る植物も多い。どれもこの辺では見ないモンスターだ。やっぱり、何か変化があるのだろうか?

「サブ、降雨(ピオッジャ)禁止ね。今回あれやったら全滅しかねない」

「ことねはん、ワイをそこまでアホだと」

「やりかねないからなぁ」

 そこに遠くから呼ぶ声が聞こえる。む、蛙発見か?

 声の方へ急ぐ。


「蛙、居たわよ!」

「確かに二匹が寄り添うように居る。面倒かもしれない」

 二人共、緊張気味の声だ。まずは落ち着かせて、作戦通りに進める。

「予定通り、相手を確認する。倒すのが目的じゃないから、絶対無理しないで」

「分かったわ!」

 エドが先頭、やや後ろにシン、私とサブが並んで、最後尾にジョルジュ

「サブ、水魔法禁止。最初に火魔法撃って水属性か確認する。効き方で分かるでしょ」

「了解や! 今日はワイが見せ場を作ったる」

戦闘(バッターリア)始まりましたら、歌で支援バフを掛けます。竪琴(アルパ)の聞こえる範囲はバフが掛かります」

「よし、行こう!」


 警戒しながら進むと蛙の姿が見えて来る。二匹とも皮膚の模様までほとんど同じ、見分けがつかん!

 足元がぬかるんでいると不利なので、なるべく足場の良い所に誘うように近付く。

 相手も気付いたようだ。でっかい蛙が睨むように迫って来る。

火の槍ランチァ・ディ・フォコ!」

 サブの放つ魔法が真直ぐに一匹の蛙を襲う。

 しかし、表面にパッと散ったくらいで、ダメが出てる感じはしない。

「予想通り、水属性っすね。風系連打しかなさそうっす」

戦いの歌カンツォーネ・ディ・グエッラ!」

 勇ましい竪琴の旋律()が響く。

「毒矢試します!」

 シンが連続で矢攻撃! 同時にエドが飛び込む。

「大人しく倒れなさい!」

 直撃したがあまり効いた様子がない。

 一匹の蛙が飛び上がってエドに体当たり攻撃、避けるように退いた所にもう一匹が舌で素早い攻撃!

 エドは辛くも躱す。

「厄介だわ! 敵は連携取れてる」

風の波オンディ・ディ・ヴェント!」

 風攻撃掛けた時、一匹がもう一匹の後ろに回る。

 毒効果の緑色の淡い霧が消えて行く。

解毒(ディジントッシカンテ)しているようです!」

「嫌なことするなぁ」

 前にいた方の蛙が身体を震わせてダークグリーンの霧を吐き出す。

「毒攻撃です」

「やべぇ!」

 急いで距離を取るが、エドは毒を受けたようだ。

 解毒剤ポツィオーネ・ディジントッシカンテを投げる。エドの頭上で瓶が砕け、緑の液体が散る。

「ありがとうね!」

「二匹同時に相手するのは難い。一旦引こう! 警戒しながら後退!」

「戦略的転戦っすね。得意っす!」

 思ったより強い。作戦を練り直す。


「明日、もう一度チャレンジしよう。それが駄目なら、わたしたちには手に負えないということで町へ引き返す」

 引際ははっきりさせときたい。

「冷静な判断で良いと思います」

「で、作戦はどうするのよ?」

「罠に掛ける!」

「卑劣な作戦は得意っす!」

「正面から行くだけが作戦ではありませんね」ポロロン♪

 で、全員で穴掘りする。

 野宿(カンペッジョ)地の近くで岩壁の近くに掘る。蛙が入るくらいの大きな穴にする。

 スコップじゃなくて、地魔法使うから、それほど重労働じゃないよ。

 完成後、中に思いっきり罠を放り込む。

 穴を覆う方が難しいと思ったら、大きな麻布を張ってそれを土で隠す。シン! 用意良過ぎ。


 翌日、決戦に挑む。上手くいかなかったら諦めるから、無理はなし。

「で、何でワイが囮なんっすか?」

「逃足の速さで決めたんだけど、何か?」

「サブやん、頼りにされてるのです。頑張って下さい」

「腕輪はん、ワイはやるで!」

 待て! 何で幻影(ヴィジオーネ)出してるんだ?

「とにかく二匹を引き離すしかないから、一匹だけを上手く落として」

「毒対策を十分に、解毒剤ポツィオーネ・ディジントッシカンテは躊躇しないで使って下さい」

「分かった。やったるわぃ!」


 決死の覚悟で蛙に接近するサブ、悲壮感が感じられないのは気のせいか?

 風魔法をちまちま当てて、上手く誘導を開始する。

 二匹とも釣られて来たけど、作戦の範囲内

「こっちに来いや~ アホカエル~~」

 意味が分かっているみたいに、蛙がサブを追い掛け始める。

「キャー、一人で立ち向かうサブやん、素敵です!」

「おぉ! ワイはやるで~!」

 囮作戦のため一人で向かわせてるんだけど、何やってるんだ?

 まぁ気合入っているみたいだからいいけどさ

 よし、如何にも岩壁に追い詰められた雰囲気で罠の側まで来た。

 上手く一匹だけ嵌ってくれよ!

 その時、片方の蛙がサブに体当たりするように飛び掛かる。

 サブが身を躱す。

 そのまま蛙は落し穴の中に落ちて行き、罠が次々に弾ける音がする。

火の槍ランチァ・ディ・フォコ!」

 サブの火魔法が岩壁を叩き、土砂が一気に穴に流れ込む。

 よし、成功! このためにギリギリの位置に穴を造った。

「一匹に全力攻撃! サブはそいつを脚止めして!」

戦いの歌カンツォーネ・ディ・グエッラ!」

 ジョルジュの竪琴(アルパ)が響き渡る。

「こないだの分までお返しするわよ!」

 エドの戦斧(バトルアックス)が唸りを上げる。

二重撃(コルポ・ドッピオ)!」

 シンは毒矢攻撃にスキルを乗せる。

「そのまま、なるべく遠くに誘導しながら攻撃!」

「分かったわ!」

「了解! エド、下がりながら牽制してくれ! 攻撃は弓の方がやりやすい」

 振返ると、サブが地魔法で土砂を固めてる。

「おっしゃ! ワイの魔法で埋まってしまえ~!」

「サブやん、強いです~~」

 まぁあっちは大丈夫らしい。

防御の歌カンツォーネ・ディ・ディフェーザ!」

 ジョルジュの支援歌は予想以上に効果がある。

風の矢フレッチャ・ディ・ヴェント!」

 風魔法を叩き込みながら隙を狙って切りつける。

 シンの矢が目を貫く。蛙が一際大きな声を上げて苦しむ。

 毒矢も効いているのか動きも鈍くなって来る。

 三人で総攻撃!

 決め手として取って置いた風塵剤ポツィオーネ・ディ・ヴェント一気に投入!

「そっちはまだかや~~、こっちは這い出して来よる!」

 もう少し!

 エドの一撃が蛙の頭部に炸裂して、ついに倒れる。

 大きな光を放ちながら消えて行く。

「サブ、良くやった!」

 粘ってギリまで阻止してくれた。

「へへっ! こんなもんや」

「サブやん、ヒーローですぅ~」

 残った一匹は息も絶え絶えで地面から出て来るけど、大分消耗していたらしく、あっけなく逝ってしまった。

「みんなお疲れさま~」

 今日は後は休養しよう。


 野宿(カンペッジョ)でお茶を飲みながら反省会となる。

「ふぅ、美味しいお茶だ」

「何やらホッとしますな」ポロロン♪

「ことねの作戦が大成功ね。良かったわ~」

「久しぶりに興奮しましたね。良い依頼(クエスト)になりました。誘って頂いてありがとうございます」

「これで全て完了だから、明日の朝に町へ戻ろう」

「サブやん、格好良かったです」

「腕輪はんの応援のお蔭や!」

 見つめ合うのは鬱陶しいからやめぃ!

「なかなかの戦いでしたな」ポロロン♪

 ジョルジュは、早速叙事詩(サーガ)創りに入るらしい。

 終わり良ければ総て良し、だよね。

次回 「奥編 21:同居しました! Viviamo sotto lo stesso tetto!」

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