旦那編 marito 22:湿地のレアモンスター Raro mostro di zone umide
冒険者ギルドの掲示板前、依頼を探しに来たんだけど
「エド! 何かいいのある?」
「ほとんどがいつもと同じようなものね」
そっかぁ、何か新奇なものを、って贅沢なのかなぁ
「ん? これは?」
“湿地„ という言葉が目に付いた。
その依頼を手に取り、詳しい話を聞くことにする。
北西側に、これまで発生したことな湧水があり、湿地帯ができている。
このため、付近一帯の調査と出現モンスターの確認という内容だ。
普通より大きい爬虫類の目撃例もあるとのこと。
危険性のあるモンスターを討伐した場合は追加報酬もある。
面白そうなので、エドと相談してこの依頼を受けることにする。
参加者を募ったのだが、ディアは鍛冶が忙しいらしい。はるっちとは連絡が付かなかった。
結局、サブと信越さんということになった。
「いよいよ本格的な冒険ですな。楽しみです」ポロロン♪
ジョルジュは言わなくても付いてくるんだよね。
とりあえず東口の南側にある酒場に集まってもらった。
この店はジョルジュの顔が利くらしい。
エド、打合せなんだから、いきなりアルコールは止めてね。
みんなで、たっぷりのお茶を注文する。
そんな残念そうな顔をしない!
「サブ! はるっちが参加できない理由とか聞いてる?」
「ワイは、現実が忙しいとしか聞いてないっすね」
現実の都合じゃしようがないかな。
で、サブ、幻影と見つめ合うのはやめぃ! おまぃは四六時中、出現させてるのか?
「ことねさんとサブさんとは、初めてのパーティですがよろしくお願いします」
何だかいつも礼儀正しい人だなぁ、サブは少しは見習った方が良いと思う。
「とりあえず、今回の依頼は私がリーダーでいいかな?」
「問題ないわ! あたしも今回は元気を出していくつもりよ!」
「小拙も同行させていただきます」ポロロン♪
で、作戦行動の打合をする。
湿原到着までは、だいたい二日の日程。ただ、何処まで拡がっているか分からない。
途中に常設の野宿地はないという情報なので、余裕は十分取る必要がある。
到着後も調査に時間が掛かりそうなので、簡単な拠点を造って、そこを基点として行動することにする。
今回は長期戦だなぁ。
信越さんから気になる話があった。
「カタケルススがこんなことを言ってました」
――今回の湿原発生については、とても嫌な予感がする。
環境が常に変化する世界なので少々のことでは驚かないけれども、今回は規模が大きすぎる。
運営が意図して環境変化を創り出しているような気がする。もしそうなら、特別なモンスターが居る可能性が高い。準備はし過ぎるほどしていた方が良いと思う――
「あいつの勘は結構当たるので、今回は使えそうなアイテム類を多量に準備させました。それで帰還後に使用した分の実費を負担して欲しいのですが」
「それはもちろん、でも実費だけで良いの?」
「ええ、今回はそれでお願いします」
「感謝! としか言いようがないな。彼は罠とかも造れるの?」
「えぇ、得意ですよ。私も脚止めトラップとか造って貰ってます。今回も各種持って来るようにします」
「ねぇ、あちこちに仕掛けてみてモンスターの調査に使えば良いって思うわ」
「エドの言う通りだなぁ。色々活用しよう」
建国2年渦月3日(03/Spirale/Auc.02)第一昼刻、北口前に集合
「さて、みんな居るよね。準備はいいかな?」
「大丈夫ですね。出発しましょう」
「信越さん、パーティ組むんだから、丁寧語なしにしよう」
「そうよ。水臭いわよ!」
「はははっ! それではざっくばらんにやらせてもらいます! ことね!」
「そうそう、仲良く行こう! シン!」
サブ! 幻影見ながら、ぼーっとしてると置いてくよ。
エドと信越が先頭、サブ真ん中で、ジョルジュと私が最後尾で続く。
今回はパーティ指揮するので後方に居ることにする。
移動自体はあまり問題なかったが、やはり北側はモンスターが強い気がする。
砂と赤土の大地を警戒しながら進む。
ブルスネークという大型の蛇が良く出て来る。南側ではあまり見ない蛇だ。
十数頭の群で移動するビッグホーンや単独だがやたらに彼方此方いるコヨーテが目に付く。
途中にアルマジロが居た。現実と変わらんなぁ
今回は調査が目的なので、なるべく戦闘は避けて行く。
一日目の野宿は無事過ぎる。
“ワイは苦手や~„ というサブをコキ使ったけどね。
二日目は現地に近付くので周囲を慎重に観察しながら進んだが、特に特別のモンスターは出現しない。
目から血を噴き出すツノトカゲには吃驚したけど、これが習性なんだとか。
途中から周囲が、次第に湿気を帯びて来る。
敵もこの辺りでは見ないような水生のものが出て来る。爬虫類、両生類はもちろんだけど、昆虫なんかも増えて来る。
オオヤンマという大型のトンボも初めて見た。
なんとか敵を蹴散らしつつ、湿地帯の側に到着したのが第四昼刻の終わり頃になる。
少し小高くなっている丘の上、見通しが良くて乾燥した地がある所に野宿を張ることにした。
長期戦になりそうなので、テントの周囲に土壁を造り、食事用の竃を用意する。地魔法大活躍!
「サブ! キリキリ働かんかぃ」
「ワイは、こーゆーのは苦手や~」
ディアが居れば早いんだけどね。シンは、こういうのに慣れてるのかとても上手だ。
ジョルジュ、そんなに楽しそうにメモとらんでも
とりあえず、エドとシンに、近くの調査と簡単な捕獲罠設置をして貰う。
ジョルジュは面白いらしく見学に行く。まぁいいか
サブと一緒に夕食の準備をしたんだけど、彼なかなか手際が良い。
意外だと言ったら、現実では一人暮らしなので一通りのことはできるらしい。
人は見掛けによらないもんだ。
夕食後、夜直について相談していたら、シンの緊張した声
「何か大きなものが居る!」
サブの魔法が飛ぶ。珍しくナイスだ!
「灯!」
魔法の光の中に、うっすらと大きなモンスターの影が浮かび上がる。
次回 「旦那編 23:ツィンの毒蛙 Rana velenosa gemellare」




