旦那編 marito 15:気紛れ師匠 Mio maestro capriccio
変なおっさんが師匠になってくれました。
ジョルジュくんの案内でルノー・ド・モントーバン邸に向かう。
第一夜刻、既に薄暗くて遠くは見通せないが、立派な邸宅が並ぶ。
道路は、そこここに街灯が立っていて、ほんのり明るい。
街灯はもちろん電気ではなく、魔法の灯り。点消方という神殿の職員さんたちが点消灯しているらしい。
ルノーさんの屋敷はフュルベールさんとこの近くなんだけど、この辺りでも際立って豪華な気がする。
この人、結構有名で、珍しい本格的な魔法剣士
ジョルジュくんの話では、フュルベールさんの紹介でなければ、まず会えないとのこと。
いつも行方不明で、今日はたまたま屋敷に居るらしい。運がいいやら悪いやら
玄関の前に立っただけで、いきなり扉が開いた。
連絡を受けたとはいえ、準備良過ぎません?
何やら執事さんたちの出迎えを受けて、応接室らしき所に案内された。
座った途端にお茶が……一部の隙もなぃ。
「良く参った。ことね殿。ジョルジュも息災か?」
なんだか元気の良いおじさん!が入って来る。いかにも古風な騎士に見える。
「初めまして、結月琴音言います」
師匠をお願いするんだから、なるべく愛想良くしておかないと
確りと握手する。
「フュルベール氏から連絡があった。師匠を探しているとか」
直ぐに用件に入る。なかなか気忙しい人みたい。
「はぃ、それでルノーさん……にお願いできないかと」
「彼とは以前から懇意にしている。このジョルジュも将来有望と睨んでおる。その二人が揃ってわしに推薦とは、これは無下にはできん。わしの見る所でも、貴公は才能がありそうに思える」
「はぁ、有難うございます」
「良かろう。師匠を引き受けよう」
「あ、有難うございます。頑張ります」
「このジョルジュからも感謝いたします」
「それでは、これから弟子なのだから、“ことね„ と呼び捨てにさせて貰おう」
「はぃ、こちらも師匠と呼びます」
「良きかな。さて、まずは衣・食・住じゃな。この屋敷内に部屋を用意するのでそこを自由に使って良い。遠慮は無用じゃ。その他は、何なりと、この執事と相談するが良い」
いつも思うけど、執事って何で “セバスチャン„ なんだろ?
「今日は移動で疲れて居ろう。まずはゆっくり休むが良い。執事! 後は頼んだぞ」
「はっ、お任せを」
手回し良過ぎ
「ではこちらへ」
執事に案内されて部屋を出る。
「小拙もこの辺で帰らせていただきます。明日朝にはお迎えに参ります」
何やら一気に特別待遇になったけど、いいのかなぁ?
「部屋はこちらになります。どうぞ」
中に入ると、いいんかぃというくらいに立派な造り。
「執事さん、聞きたいのですが」
「はい、何なりと」
「師匠はあまり弟子を取らないと聞いたのですが」
「とても珍しいことです。一番弟子は隣の部屋なのですが、二ヶ月前から冒険中でまだ帰って来ておりません。ことねさまは二番弟子ということになります」
それは……珍しいことこの上なさそう。行掛かりとはいえ、変な師匠に教えを乞うことになった。
「それでは、ごゆっくりお休み下さい。朝はご案内いたします」
執事さん行っちゃったけど、まぁいいか
とりあえずは右も左も分からないんだし、しばらく勉強だ。
朝はメイドさんらしき人に起こされて、ひろーい食堂みたいな所でクロワッサンとスープの朝食を取ってたんだけど、執事さんがせかせかとやって来た。
「おはようございます。ことねさま」
「あ、おはようございます。執事さん!」
「主人から書簡が届いております」
「師匠から書簡?」
渡された書簡を開いてみる。
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ことね・ゆづき殿
フュルベール氏の目は確かだ。
しかもジョルジュの感性の琴線に触れるとは、期待が持てる。
このルノー・ド・モントーバンの弟子と名乗ることを許す。
しかーし、わしは放任主義だ。
勝手に強くなれ!
次に会う時にどれくらいに成っているか
楽しみにしよう。
ルノー・ド・モントーバン
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な、なんと無責任な……
「で、師匠は?」
「朝早く出立されました」
さすがや、行動素早過ぎ
「これを」
何か黒くて四角なものを渡される。
「何ですか、これは?」
「主人からの伝言です」
「はぁ」
「 “火の部その1を授ける!„ 」
「はぁ?」
言われた通りに、黒くて四角なものを、生命の腕輪に近づける。
急に腕輪が光出し、ピピピピピピと音を立てる。
なんだなんだ?
「腕輪をご確認して下さい」
言われた通りに確認すると
火魔法が一覧で、ずらっと並んでる!
何だこれは?
しかも、一つ一つの魔法に発動のさせ方まで書いてある。
これ、全部くれるってか。いくつあるか分からんぞ!
これは覚えるまで大変だ。しっかし気紛れなおっさんだと思ったけど
あの人怖ろしい人なんだ。
「お迎えに上がりました」
第一昼刻の半ば頃、ジョルジュくんが迎えに来た。
「今日は、第三昼刻までは、依頼処理。その後はルノーさんから貰った火魔法の研究なんだけど、それでいいの?」
「おぉ、秘術を伝授されましたか! これは叙事詩創りにも気合が入ります」ポロロン♪
いや、竪琴はいいからさ
「薬草なんかの収集と町の外で覚えた魔法が発動するかの確認だよ。こんな日常的なこと見てどうするん?」
「何気ない毎日の行動を観察してこそ、良い叙事詩を創ることができるのです」ポロロン♪
ジョルジュ、気合入れ過ぎても疲れるぞ。
その後、初めてってこともあり、簡単な収集依頼を受けて、町の外に出る。
歩いていただけなんだけど
あれ?
と思ったら周囲が真っ暗に
「ことねどの~」
ジョルジュの声が遠くに聞こえる。
次回、「旦那編 16:草編 Da erba」




