五章 永遠に繰り返す庭で
「あらあら今日は一段と空があか~い」
玄武が水鏡から目を離し、空を見上げた。
遠くで美しい火花が爆ぜている。
「……悪趣味じゃないか」
と言いながらも、白虎も玄武の隣で水鏡を見つめていた。
視線の先では、山の一部が朱雀の熱に当てられ、不自然なほど急激に色づいている。そのまま炭化し、崩れ落ちていく。
「そお? 白虎ちゃんだって見てたくせにぃ」
くすくすくす~と玄武と影が笑う。
「青龍ちゃんも朱雀ちゃんもとっても純粋で、見ているこっちまでドキドキしちゃうよねっ」
「……お前の感性は相変わらず理解できん」
白虎はため息を吐きながら、その場に腰を下ろした。
金色の瞳に映るのは、猛烈な熱風に煽られながらも決して離れることのない二つの影。
相剋の庭で、相反する二つの存在が絡み合って——ただひとつの塊へと融けていく。
空の上では、ようやく熱の嵐が凪ぎ始めていた。
青龍の腕や足には、生々しい火傷の跡が「愛の印」として刻まれている。しかしそれもすぐに、いつもの赤い花弁の痣へと変わっていく。
「大丈夫か?」
ケロっとしている青龍に、朱雀はもう苦い笑みを浮かべるしかなかった。
炎を出し尽くした虚脱感の中で、青龍の身体にそっと身を預ける。
「……お陰様でな」
相剋の庭はいつだって奇妙な場所だ。
互いの欠落を埋めるのではなく、互いの過剰をぶつけ合うことでしか成立しない関係。
近づけば焼かれ、離れれば凍える。
それでも二人は——引かれ合うことをやめない。
神域の空には、また新しい筆跡で、山肌が描かれていく。
ここは絵巻の中。
永遠に繰り返される箱庭だ。
燃やしてしまうから、愛せない。
それでも、手を伸ばしてしまう。
それがここでは——恋と呼ばれていた。




