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スカートめくり feat. ピンクのしましまパンツ  作者: 齊藤パンティ
スカートを掴んでから捲るまでのほんの数秒
13/19

俺が、彼女の私服さえもアイロンがかけられ折り目1つないということを知っている理由

 さてその前に何かそれなりの言い訳をでっち上げなければなるまい。


 おっと手が滑った。

 これは流石に突き通せないだろう。


 スカートに虫が張り付いていてそれを払い落としたんだ。

 俺も虫が苦手だ。


 ち、違うんだっ!こ、これは事故で!

 事故?いやいやこれは事故じゃ済まされないだろう。確実に今、俺の手は彼女のスカートに添えられていて、事故の余地がない。


 事故じゃなければどうやって自己を正当化すればいいのだろう。いやそもそもこれが事故だとしても十対〇で俺の過失、いや俺の加害の犯罪だ。だとしてもやっぱりそれは事故ではないのだろう。どうにかして事故にできないものか…。事故…。事故…。

 事故、じこ、自己、ジコ、事故。

 事故ってなんだ?

 事故…自己…自己…。


 自己。


 自己とは何か。


 これは永遠にして最大の問いである。

 カキフライのおいしい食べ方について語っても良いのだが、生憎俺は牡蠣が苦手だ。ついでに言うと貝類が苦手だ。もっと言うと、いわゆる、磯の香りが苦手だ。あとエビフライの尻尾。あの尻尾の方をほじくってまでして身を食べるなんて人もいるかもしれないが、俺にとってはあそこだけくそ不味い。桜エビも苦手だ。あ、生海苔も苦手。


 こんな感じで、苦手な食べ物があるというのは、実に恵まれている証拠であり、加えて飽食の時代であることを表していると思う。

 どんなものでも食わなきゃ生きていけないような、そんな時代ではないのだ。


 しかし大昔はそういう時代だったはずだ。取り敢えず食べられそうだから、ぱくーみたいな。それで死んだら後の人が、あれがまずかったんかなーとほげーと思い出して、それを縦、横に伝えて行ったのだろう。

 そんな生きるのに必死だった時代でも、物事を考えて、阿保みたいな問題を提起しそれに対してなんだかそれっぽい言葉をグダグダと並べたりする人達が結構いたらしい。


 無知の知にむちむち行き詰ったり、同じ川にもう一回入ってみたり、シケリア島に旅行に行ってみたりと、結構みんな積極的だ。よく知らないけど。


 比較的最近の人でも、よく頭を回転させていた人がいたらしい。


 人間は時間的存在であり、五分ほど前に作り上げられたのだ、とか、あれ?これって存在してんの?ていうか存在しているってどういうことなの?私って存在しているの?なんで私は私なの?あ、でもこうやって考えてる自分はいるよなーとか、そんな事を考えていた人もいたらしい。よく分からないけど。


 また、ある男がハイキングに出かけるという話もあるらしい。俺はあまり男が好きではないので、ここは、ある男ではなく女の人にしようと思う。しかも超絶美少女だ。そんな超絶美少女はハイキングに出かけて、その道すがら、不幸にも沼の畔で雷に打たれて死んでしまう。その時、もう一つの雷がその沼へと落ち、その雷と沼の泥が化学反応を起こして、その死んでしまった美少女と全く同じ、同質形状の生成物が生まれた。この新たに生まれた生成物は、原子レベルで死ぬ直前の超絶美少女と全く同一の構造をしていて、見かけも全く同じ超絶美少女である。もちろん脳の状態も完全なコピーであることから、記憶も知識も全く同じであるように見える。沼を後にした泥から生まれたその超絶美少女は、死ぬ直前の超絶美少女の姿ですたこらさっさと街に帰っていく。そして死んだ超絶美少女が住んでいた部屋のドアを開けて、死んだ超絶美少女の家族と会話をし、死んだ超絶美少女が読んでいた本の続きを読みふけりながら、眠りにつく。そして翌朝、死んだ超絶美少女が通っていた学校へと登校していく。そんな話があり、この泥から生まれた超絶美少女は何者なのか、みたいな問いがある。


 この思考実験で大切なのは、泥から生まれた美少女が、その沼から家まで帰ったということだ。つまり彼女が公衆の面前を闊歩したということだ。この思考実験の説明では、彼女の肉体と記憶などについてしか言及されていない。しかし、外を平然と歩いたということは、その泥から生まれた美少女が真っ裸だったなんてことはあるまい。だとしたら、雷が落ちた時の沼での化学反応において、肉体だけでなく、衣服も超絶美少女が着ていたものと全く同じものが生成されたということになる。

 つまり、元の超絶美少女が穿いていたパンツは雷に打たれて、黒焦げになってしまっていたかもしれないが、新たにもう一つのパンツが生成されていたということなのだ。


 果たしてこのパンツは、パンツなのだろうか。


 確かに、原子レベルで美少女の穿いていたパンツと同一だ。

 だとしたら、そのパンツはパンツであって、そのパンツは彼女のパンツなのだろう。


 しかし、俺はここである重大な事実に気が付く。


 雷と沼でパンツが生成されたということだ。


 あ、閃いた。

 よし、明日近くの沼にでも行ってみよう。


 言い訳をでっち上げることも忘れて、そんなどうしようもない予定を立てながら、俺は右足をさらに後ろへと滑らせ、より体勢を低くする。ここまで低くしてしまったら、もうこのまま顔を上げれば、パンツを拝見できることだろう。だが、俺はしない。絶対に。


 俺は絶対にスカートを捲りたいのだ。そしてその延長でパンツを拝みたいのだ。

 そして彼女のスカートを軽く掴んでいる手に、ぐいっと力を入れたその時だった。

 そのスカートに目が惹かれる。その掴んだスカートは変な折り目もなく、毎日しっかりとアイロンをかけているなと思わせた。きっと私服ですらそうやって綺麗に保っていることだろう。


 いや、実際にきれいだった。


 いつのことだっただろうか。そう、あれはいつかの中間テストの数日前の放課後のことだった。俺は当然のように勉強が苦手で、今から絶望していた。そして彼女の顔も絶望のそれだった。そう加殿さんもお頭の出来は良くないのだ。


「どうした?明日世界が滅亡してしまうような顔をして。パンツでも穿き忘れてきたか?」


 俺は加殿さんを、ぎこちなく作り上げたその薄ら笑いでもって、からかいかける。きっと絶望は消え去っていなかったのだろう。


「手鏡貸そうか?」

「…結構」


 弱く右手を挙げて断る。


「本立野もバカなんだよなー確か。話にならんな」

「バカを言え。バカと言った方がバカなんだぞ。まあまだ中間テストだ。なんとかなるって。気楽に行こうぜ」


 俺は無いはずの余裕を見せてみる。


「あんたバカ?」

「あ、おっしっしょーに、本立野くんじゃあありませんかー」


 クレイジーな瓜生野さんの声がどこかから聞こえる。あとどうでもいいけれど、師匠が失笑に聞こえた。


「あはははははははははははっ!こらまた最高だぜーーっ!」


 いつかの最高にバカな声も聞こえる。その音源を探していると、なんだか頭痛がしてきた気がした。


「いやー!紫ですかっ!これはこれは!うははははははははははははっ!」


 次の瞬間、加殿さんが右後ろに、そのスカートを綺麗に靡かせて飛び上がる。ついでに言うと本当に紫だった。

 その紫の加殿さんの跳躍により、クレイジーが姿を現す。彼女の舌が少しだけ出ていたのは見なかった振りをした。そして後ろに下がった加殿さんの、上履きをいつの間にか脱いでいたその足が、その瓜生野さんに降りかかる。げしげし、と背中に。それを受けて瓜生野さんが「ぐへぐへ」と短く悲鳴を上げる。何発か食らうと、しゃがんでいた瓜生野さんが床に倒れた。ついでに言うと水色のシマシマだった。うはははっ!こらまた最高だぜっ!


「ちょっ、すと、ストップ!ごめんってば、もうしないから!許して!」

「何か用?」

「実は私も勉強できないんだー一緒だね!」


 瓜生野さんは未だ水色のシマシマを見せながら、朗らかに言う。


「うん、知ってる」

「そこで提案なんだけど、皆で勉強会しない?」

「俺たち三人でやっても、藁にすがるどころか、足を引っ張りあって、沈んじゃうよ。むしろ沈む方法の勉強会だよ」


俺たち三人でやってもなにも生まれやしない。時間を捨てるようなものだ。


「まさか、三人だけでやるわけないじゃん。頭いい人がいないと意味ないでしょ?もしかして本立野くんってばか?」


クレイジーの水色シマシマに言われたくなかった。


「その頭いい人って誰?」

「もちろん、小海に郷美だよ!」

「その二人が私たちに付き合ってくれんの?」


ごもっともな意見だった。向こうにメリットはない。


「大丈夫!私、仲良いから!ちょっと頼んでくる!」


そう言って、瓜生野さんは牧之さんと三津さんのほうへとかけていった。残された俺と加殿さんの間に静寂なんて蔓延らない。


「そうだ、前から聞きたかったんだけど」

「ん?なに?」

「今、紫のパンツを穿いてるんだよね?」


さも日常の会話、例えば天気についての言葉のように、穏やかに聞く。


「ん、いや、まあー、うん、そうだけど」

「じゃあ今、加殿さんの部屋のクローゼットの中にはピンクと黄緑のパンツが仕舞ってあるんだよね?」

「いや、黄緑は干してあると思う。クローゼットに入ってるのはピンクとー、あとは白と水色、

イチゴのパンツにーそれにクマさんのパンツだね。それで?聞きたいことって?」


 ふむふむ。なるほど。メモメモっと。どうでもいいけど、よくペン先を舐めてから書き始めたりするのを見るが、あれはインクが出にくいから湿らせるとかの理由があると思うのだけども、インクって体に悪くないんだろうかと、時々考える。まあいいや。取り敢えずメモメモ。


「いや、なんでもないよー気にしないでー」


 なははーと笑いながら、適当に取り繕う。そうこうしていると、瓜生野さんが、牧之さんと三津さんをひき連れてきて戻ってきた。


「決まったよっ!小海のお家でお勉強会!今日ね!さあみんな行くよー!」

「今日?」

「急だね」


 取り敢えずの驚きの声を上げた後、三津さんのお家かーと複雑に思ってみる。いや、考え方を変えれば牧之さんの家でもあるからして、うーん、どっちにしろ、うーん。


「三津さん、本当にお邪魔していいの?」


 加殿さんは三津さんが瓜生野さんに振り回されているのでないかと心配したのかもしれない。


「ええ、大丈夫よ。ねえ?郷美」

「はい、歓迎します。私の家じゃないですけど」

「なに水臭い事言ってるの?私達家族じゃない」


 この言葉を受けて牧之さんは少しばかりぎこちなく笑った。その顔になんとなく見とれていると、加殿さんの顔が近くなった。前も言ったかもしれないけれど、この人は近い。別に嫌ってわけじゃなくて、むしろ大歓迎なのだが、そのーなんだーどぎまぎするのだ。いい匂いだし。


「ねぇ、だちのー。牧之さんと三津さんが家族ってどうゆーうこと?」


 加殿さんは俺の耳にこそばゆく細声をかける。思わず変な声が出そうだった。


「そ、そんなことより、だちのって誰だ?」

「だって本立野ってなんかくどいんだよ。そんなことより二人ってどういう関係なん?」


 俺は本当の事を言うか、それとも加殿さんをからかうか、一考してから口を開いた。


「知らなかったのかい?しょうがない教えてやろう。実はな…二人は結婚しているんだ」

「なんと!?結婚ですと!?」


 耳元で大声を出さないでほしかった。耳鳴りがひどい。


「結婚?お師匠は本立野くんと結婚するの?」

「ああ、そうだな。加殿さんがもう少し、いやかなりお淑やかな女の子になったら考えてもいいな」


 ちらちらと牧之さんの方を見ながら言ってみる。特に反応は無かった。代わりに瓜生野さんが口を開く。


「私みたいに?」

「ああそーだねー。そんなことより勉強会はいいの?」

「あ、そうだった。さーみんなー三津さんに続けー」


 瓜生野さんが三津さんと牧之さんの背中を押しながら高らかに言う。


「「おー」」


 俺と加殿さんは小さく手を上げながら声を上げた。


 そうこうして学校を出て歩くこと約十分。住宅街の一角に到着する。


「ここよ」

「おっきーねー」

「今日、親帰ってくるの遅いから、思う存分勉強しましょう」


 後半の言葉はいらなかったんじゃあないかと切実に思う。前半だけだったらなんか、ぐふふだ。それとご両親が帰ってくるのが遅くて助かった。三津さんの親、それすなわち師範代。会いたくない。


「さあ上がって」

「「「お邪魔しまーす」」」

「先に二階に上がってて。飲み物用意してくるから」


 そう言って三津さんと牧之さんがリビングと思わしき方へと進んでいった。

 残された俺たち三人はいそいそと階段を上り、いざお部屋へ。

 入室。


「「「お邪魔しまーす」」」


 瞬間、とっても甘い香りが俺を包んだ。

 二階にはここともう一つ部屋があるようだが、この部屋が二階の大半を占めているようで、結構な広さだった。視線を巡らすとベッドを二つ確認。ぐふふ。ダイブしてしまおうか。それとも、加殿さんと瓜生野さんを両脇に侍らせ一睡でもしてみようか。

 そんな事を考えながら視線をさらに巡らす。

 どうやら牧之さんと三津さんはこの部屋を共同で使っているようだ。クローゼットも二つある。さてどちらが牧之さんのだろうかと熟考する。右か左か…左か、右か…。


「ねえお師匠、あのクローゼット、どっちが郷美ので、どっちが小海のだと思う?」

「そんなのわかるわけないだろ。中でも確かめない限り」

「なるほど、お師匠は中を確認すればどっちがどっちのだかわかるってことだね」


 瓜生野さんが歩き出す。そのクローゼットに向かって。そしてなんの躊躇なく開きやがった。やりやがった。そしてガサゴソと漁る。それがほんの数秒続いたかと思ったら、おもむろに振り向き、子どもが何かを自慢するように、それを掲げた。


「黒のレース!こらまた最高だぜっ!すーはーすーはー…どうやらこっちが小海のらしいよ!二人とも!早く来なよ!」


 瓜生野さんはその黒のレースを嗅いだ後、まるで警察犬のようにそのクローゼットの持ち主を特定した。瓜生野さんが漁っている方が三津さんの。だとしたらその右がっ!

 俺は思わず足を動かした。そして非常に申し訳ないと思いながら、おっぴらく。

 そしてがさごそ。


 次の瞬間、それを触る。

 どうしようもなく柔らかく、滑らかな手触り。

 なんとなく、温かさみたいなものも感じた気がした。

 そして湧いてきたその感情をどうにか堪えるので手一杯になる。

 くそう、嗅ぎたい。

 顔にこすりつけたい。

 それかもうこのクローゼットに入りたい。

 そしてついでとばかりに三津さんのクローゼットもガサゴソ。

 あはははははははははははっ!こりゃ最高だぜっ!


 しかし、ふと冷静になる。

 この俺の手に持っている三津さんの水色パンツ。

 果たしてこれは本当にパンツなのだろうか。

 確かにこれはパンツだ。どう見てもパンツの形をしている。


 しかしパンツなのだろうか。


 いつの事だっただろうか。パンツについて調べたことがある。辞書やらどこかのサイトによると、パンツとは防寒および、残尿などで衣服が汚れるのを防ぐために着用されるもので、布の覆う面積は基本的に女性器から臀部、脚の付け根からへその下までを覆い隠すような形状、および丈になっている。ものだ。

 つまりパンツはこういう目的でもって、穿かれているのだ。

 しかし今、俺の手に収められているこの水色のパンツは、当然のこと誰にも穿かれていない。

 穿かれていないパンツ、果たしてこれはパンツなのだろうか。

 例えば、充電の切れた携帯電話。これは、それ自体は確かに携帯電話そのものであるが、充電が切れているため通話なんてことはできない。通話のできない携帯電話はもはや電話ではないだろう。他にはソケットに嵌められていない電球。確かにそれは電球で間違いない。しかし明かりが灯らない。もっと言うと、芯とシャーペンだ。シャーペンそれ自体では字は書けないが、芯を装填することで字を書くことができるようになる。

 これら二つが合わさることで初めてその機能を発揮し、そして初めてそれはそれらしくなるのだ。


 つまり、パンツをパンツ足らしめる要素これすなわち、誰かに穿かれている、ということとなるのだ。

 誰かに穿かれているからこそ、パンツは最大の機能、そして最高の魅力を発揮し、真のパンツとなり得るのだ。


 だとしたら俺がこの手に握っている水色のパンツは、パンツではない。


 そう思うと別段、顔に擦り付けてもいいのではないかと、もう既にそれを行っている瓜生野さんを横目で見やる。


「うわはははははははははっ!最高だぜっ!」


 瓜生野さんはいつものように阿呆になって声をあげる。

 しかしそれだけではなかった。

 彼女はそのパンツを頬から離すと、見ようによっては気味が悪いほどに口角をあげる。

 そして、被った。


「ぐわはっはははははははっ!ほんとまじ最高だぜっ!」

「ちょ!二人とも!二人が上がってきた!」

「「マジか!」」


 俺と瓜生野さんは今までに見たことのないような俊敏さでもってパンツを綺麗にしまう。そして何事もなかったような振りを極め込んで加殿さんの横に並んだ。若干荒い息が隠せてない気がするが、どうにか頑張る。

 そしてそれからすぐに扉が開いて二人が現れた。


「さあ、始めましょうか」

「「「おー!」」」


 俺と瓜生野さんは、上がった息を隠すように、両手を上げて、あからさまに声を出した。

 そんなわけで、彼女のクローゼットに掛けてあったスカートやらシャツやらは変な折り目なんてものは目に映らなかったのである。もしかしたらパンツに夢中になっていただけかもしれない。ま

 

あいずれにせよ、彼女たちのクローゼットは綺麗で、牧之さんが今穿いているスカートもきれいなのであった。


 そんな事を思い出しながら、再度、スカートを掴む手に力を入れる。

 そしてどこか何かを思い出しながら、さらに足を広げて、

 より低く、沈むように。

 どこかの筋が切れるような音がした気がしたが、気のせいだ。

 一つ、鼻から大きく息を吸い、肺に空気を溜める。

 そしてその肺が少し痒くなったところで、今度は口から、牧之さんにかからないように首を項垂れてからゆっくりと吐き出す。

 吐き終えてから歯を食いしばり、再び鼻から空気を吸う。そして適当なところで息を止める。ついでに体全体に力を、特に腹筋と腕の筋肉に力を入れる。

 顔を上げ、血走るほどに目を見開く。


 さあ、始めようか。


 幕開けだ。

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