未来への渇望と、
亜綺がこんな部隊に入りたい理由は十年前まで遡る。
亜綺の父は、十年前にいなくなった。都市が浮き上がったあの日、父さんは今のアーバンシティにはいなかった。たまたま出張で別のところにいた…ただそれだけで、父さんと私たちは永遠の別離をした。きっともう…死んでしまった父さん。
最後に繋がった電話は、きっと、一生忘れたくても忘れられない。
「…亜綺…、わかるか?無事か?
……今…、……街が、ビルが、…お前の住む都市が…浮かび上がって…地上から……切り離されていくよ………
父さんも、…そっちに行こうとしたけれど、もう間に合わないみたいだ……すまんな…ちょっと…そっちに行くには距離がありすぎたようだ………
あぁ…一体何が起きているんだろうな…街が、…街が、…浮かび上がっていくよ………ここから、よく、……見える…
…すごいな……あぁ……亜綺………おそろしいなぁ……」
私は戦慄した。地面が揺れていた。都市が…浮かび上がって…?じゃあ、この地震は地震じゃないの…?
私は当時小2だったけれども、大変な事態が発生したらしいことはわかった。そして、どうやら父とは…しばらく会えそうにないということを若干ながら理解した。
「ぱぱ…?ぱぱ…?え…?ぱぱ…!?」
「なぁ…亜綺…もしかしたら…もう二度と会えないかも知れないな……だけど、亜綺、お前はちゃんと生き延びるんだぞ…
…父さんとの約束だ…ハハ……父さんの分も……ちゃんと…母さんと、夏綺と…ちゃんと…生きて……く……よ……………」
あたしは涙が止まらなかった。何度も泣きながらパパ!?パパ!?と叫んでいた気がする。最後の方はだんだんと途切れて、最後には完全に切れてしまった。
都市が浮かび上がりきる前に、最後に何とか植物の電波障害をも乗り越え繋がった電話。地震かと思って身を屈め机の下で小さくなっていた時に届いた、父さんからの最後の電話。
あの日の都市は、まるでノアの箱舟のようにある意味残酷に、あの都市にいなかったものはことごとく切り捨てた。
都市は浮かび上がりきると、徐々にその場を離れ、あてのない移動を開始した。
これは最近わかったことだが、どうやら植物の密度のできるだけ低いところ(つまり植物があまり都市を攻撃しないところ)にいようとしているらしかった。これは空中都市にいたものには幸あれど、いなかった者に生き残る道はもう残されていなかった。
何度も地上の人々を助けようとする動きもあったけれど難しく、それが可能になった時にはもう、地上に生きる人さえ見つからなかった。
だからもう…父もとうに、父が予感した通り………死んでいるに違いなかった。
父がいなくなったことで一見家庭が暗くなることはなかった。
みんな強かった。一通り泣いてしまうと、それ以降泣きわめくようなことはしなかった。
「父さんとの約束、ちゃんと果たさなきゃね」
とむしろ母さんは仕事に精を出した。
ほんとうは、……悲しみを押し隠して。ぽっかりと空いた大きな穴があいたような……家族との会話に沈黙が訪れたわけではない、けれど消えてなくなりはしない…父さんとの思い出…物静かだったけれど、家族の中でとても大きな存在だった父さん……
もう十年前のことなに、今思い出しても目が潤む。
そこから今ある自然に対する恨み…
あたしが突破隊を志願しているのはこのためだった。
いつか自然を駆逐して、みんなで地上に帰り、できるなら父の骨も拾いたい。
「遅くなってごめんね…」
とか言いながら葬式を開くため…
あたしはまたページを繰る。
いきなり長くなったw
読みにくいの勘弁(>o<")




