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第39話  楠の下で


「行くぞ」


 木の葉の一声で、子供たちは、気を引き締めた。

 小守寮を出ると、立派な楠が日陰を作っていた。

 その下に、春人と、龍絵が立っていた。

 そして、龍絵の隣には、真っ白な狐が、二本足で寄り添うように立っていた。


「どうした、おまえら」


 木の葉が、目を丸くした。


「ゆいちゃん、ともちゃん、せなちゃん、久しぶりだね」


 龍絵が、嬉しそうに右手を振りながら、駆けて来た。

 その穏やかな笑みを見て、三人も、自然と頬が緩んで笑顔になった。


「うん、久しぶり。元気そうで良かった」


 瀬奈が、にこやかに返した。


「ほんと、久しぶりね。でも、どうしたの?落ち合うのは夜でしょう?」


 結花が聞くと、春人が声を上げて答えた。


「水の確保に、協力しに来た」


 子供たちは、目を丸くしたが、如何なる場合も、知世だけは、沈着である。


「ありがとう!とにかく座りましょう。立ち話は、体力を消耗するわ」


 子供たちは、円を描くようにして、楠の下へ腰を下ろした。

 初めに、春人が話し始めた。


「静花さんから作戦は聞いた。俺と龍絵は、確実に水が手に入る方法を知ってる」


「えっ、ほんと?」


 瀬奈が、期待に満ちた目で、龍絵を見つめた。

 西野小チームは、皆が同じ気持ちだったので、春人の話に期待した。


「樊籠小学校には、スーシ―ランドがある。母親に嘘をつけば、魔女ばあさんに誘拐されて、スーシ―ランドへ行ける。そこに、スシ・ポンドがある。校庭の半分ほどはある池だ。それを移動させた方が早い」


 西野小チームは、ポッカーンと大きく口を開けて、瞬きもしないで聞いた。

 春人は、六人の反応を確かめながら、木の葉に告げた。


「トイのやつ、地獄わさびを使ったんだぜ。妖怪殺しの一品は、魔女にも効く筈だって、実際に使って殺した」


 春人が、この場にいないトイを非難すると、木の葉が、立ち上がって瀬奈を咎めた。


「瀬奈、おまえだろ!どうせ、おまえが栽培したわさびだろ!」


 ことりと奏も、白い眼で瀬奈を見た。


「どうして危ないものばかり作るの?」


 奏が責めると、ことりが尋ねた。


「瀬奈、地獄わさびって何?聞いただけで、ぞっとするんだけど」


 三人に睨まれて、瀬奈は、素早く立ち上がった。

 そして、龍絵の後ろにさっと回ると、隠れるようにして座り直した。


「あげたのは、あたしじゃない!ゆいちゃん!」


 栽培したのは自分だと白状したようなものだが、ことりは、瀬奈を無視して春人に聞いた。


「魔女ばあさんを殺したのに、どうやってスーシ―ランドに行くの?」


 龍絵は小声で、「死んでないよ」と言って、質問に答えた。


「とー君は、三年前に亡くなってるから。魔女ばあさんを殺しても、魔女ばあさんは、死なないの。死んだ妖怪は、生きた妖怪を殺せない。殺しても生き返るんだよ」


「トイの父ちゃん、母ちゃんは、輝龍さんが殺されるより先に、悪い妖怪に殺された。その後、トイも殺されたんだ。けど、おばば様に時間を貰って生きてた」


 春人が、右ポケットから赤い小箱を取り出した。

 指輪を入れた箱かと、子供たちは興味を持ったが、衝撃的な真実を聞かされて、ことりを除く西野小チームは、打ちひしがれた。


「トイは、未練がなくなって、成仏した。この箱を俺に託して」

 

 ことりは、トイを知らないので、可哀想だなと客観的に思ったが、瀬奈は、一瞬で青ざめた。


「トイ君も死んでた」


 木の葉たちも、顔面蒼白になった。


 尊敬する大妖怪・輝龍の死だけでも、十分すぎるほど、心に大打撃をこうむった。この上更に、大事な友の死を、受け入れなければならない。

 魂が抜けたような顔をして、一斉に俯いた。

 沈黙が続く中、ことりが立ち上がった。


「僕は、トイ君に会ったことも、喋ったこともないけど、きっとトイ君は、幸せだったと思う。トイ君は、亡くなる前から、一人で頑張ってたんだ!だから、おばば様は、時間を与えたんだよ。君たちと出会って、トイ君は心強かったと思うし、楽しかったと思う。トイ君のお父さんも、強い妖怪だったと思うけど、僕の父さんも、すごく強い。父さんは、母さんの仇を討つ為に、仲間を裏切ったふりをして七区ななくに潜入してた。さっき知った話だけどね。内側から少しずつ分裂させていって、姉さんとランちゃんが過去から戻ってくる前に、七区を打ち滅ぼした」


 ことりは、一瞬目を閉じた。燃やされた手紙を思い出したのだ。

 騙されている我が子を知って、どう思ったのだろう。


「最後のつめは祠だ。ギュウジャッガンと、ワカチカを消滅させる。絶対、トイ君と、トイ君のお父さん、お母さんの仇を討ち取ってくれる!僕たちには、スシ・ポンドが必要だ!スーシ―ランドへ行こう!トイ君は、お盆の森に会いに来てくれる。だから、全力で森を護ろう!」














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