「偽りの絆を乗り越えて」
シナリオの展開上(作者の趣味)、小刻みな投稿が続きます。
「…………ここは」
我が家の居間だ。
一体何が起きたんだ、まさか今までのことが夢だったなんてことはないだろうし。
「恐らくお前の持っていた赤いペンダントの中だ。そして私達はそのペンダントごとあいつに吸収されたらしい」
「アルテ、それにみんな……」
「抜かった、まさかお前から染み出していた負の匂いの原因があれだったとは……」
「……孔弌」
周りには皆がいた。
「ねぇ、さっきおじさん、ううん、時雨が言ってたこと本当なの? 僕がみんなに愛されるように創ってあるって……」
それが本当なら僕は……。
「………………それは、わからない。だが」
「だが?」
「自然とお前に惹かれていくのは、本当だ。それが奴の言っていた細工のせいなのかはわからないが……」
場の空気が沈む。
みんな何もわからなくなっている。
「私達のこの想いは、偽りのものなの……?」
晩霞の問いに誰も答えられない。
「…………ッ、ごめんね、みんな……」
いつの間にかそんな言葉が自然と僕の口から出てきていた。
「孔弌、泣いているのか?」
「……ッ……ゥ、だって……」
アルテの言うとおり、僕は自分でもわからないうちに涙を流していた。
でも僕だけじゃない、周りを見渡すと同じようにうっすらと涙を浮かべた顔や今にも泣き出しそうな顔が並んでいる。
「結局私達は、あの方の掌で踊らされていたと言うのですか。七百年前と同じように」
悔しそうにリエラが歯噛みする。
「わからねぇ、俺にはわからねぇよっ!」
セラが壁を思いっきり殴る。
「わらわ達は一体どうすればよい、どうなればよいのだ……!」
麗姫も悔しそうに叫ぶ。
「孔弌に惹かれる偽りの心……か」
「………………」
「涼夜、お前が今朝話していたのはこういうことだったんだな?」
「……あぁ」
「僕もう何もわからなくなっちゃったよ……」
何をするにも体に力が入らない。もう全部どうでもいいや……。
「……孔弌、お前までそんな事を言うと私達もどうすればいいのかわからなくなるじゃないか」
結局皆を、縛ってたのは、僕だったんだね。皮肉なことに縛りから開放するっていう鎖で……。
僕たちは、偽りの心で結ばれていた。最初から用意された家族だった。脚本を演じるための。
「最初から僕たちは家族なんかじゃなくて、偽りの仲……だったのかな」
「……孔弌」
「ん……何、テンちゃ――」
――パァンッ。
乾いた音が居間に響いた。遅れて頬に痛みがやってくる。
「……ボクはそんなのどうでもいい。きっかけは偽りでも何でも、今のボクは孔弌が大好きっ! 今のこの想いだけは絶対に偽りじゃない!」
「テンちゃん……?」
テンちゃんが僕に抱きついてくる。
「みんなもおかしいっ! ボクはそんなのがなくても絶対孔弌と仲良くなってた、一緒になってたっ! どうして迷うの!?」
「ボクと遊んでくれる優しい孔弌が好き、ボクを楽しませてくれる馬鹿な孔弌が好き、ボクを守ってくれるカッコいい孔弌が好き、ボクに皆でいる事の大切さを教えてくれる孔弌が好きっ!」
テンちゃんの大きな声が広い家中を満たす。
テンちゃんのこんなに大きな声を聞いたのは初めてだ。
「……孔弌」
「テンちゃん」
突然テンちゃんが顔を近づけてきて思いっきり抱きついてくる。
「お願い孔弌、ボクをまた一人にしないで、ボクも何があっても絶対側にいる。だから……」
「……孔弌、孔弌は一人じゃないんだよ」
「テンちゃん……?」
テンちゃんの行動力の前に僕は唖然とするしかなかった。
「だぁぁっ! んだよ、天奈の言うとおりじゃねーか。こんなことで悩むなんて俺らしくないぜっ!」
突然セラが壁に頭を打ち付ける。
「っしゃー、ほら孔弌、手ぇ出せよ!」
言われたとおり手を出すとセラが手を組んでくる。丁度腕相撲みたいな形で強く手を握る。
「例えどんな理由だろうとお前は俺の主だ。そして主を守るのは俺の使命。だが、それ以上に俺は一個人としてのお前の力になりたい」
セラに続いて秋月も手を組んできた。パァンと小気味いい音が響く。
「うん、天奈の言うとおりよく考えたら僕も兄ちゃんを理由なしで好きになったりなんてしてないよっ!」
今度はスザクが。
「ま、僕は確かに君の事をまだよく知らないけど、ここにいるのは本当に楽しいと思っている。これからもよろしく頼むよ」
「碧鮮……」
手を差し伸べてくる碧鮮と握手を交わす。
「ふふ、ふははっ! そうだな、奴の言うとおり私達がお前を好きになるようになっているのなら、むしろそれに感謝したいぐらいだ、お前と知り合えたんだからな」
アルテが近づいてきて
「だが、さっきの天奈とのあれはいただけなかったぞ? 私もあとで抱きつくからな」
「あ、あの、確かにきっかけは偽りの心だったかもしれないけど、今は本心だと思いますっ!」
アルテに続いてアロも僕の傍へと近寄ってくる。
「あなたの、好きな人の力になりたい!」
そして顔を真っ赤にして慌てて離れていく。
「……わらわは元々そなたに借りがあるからな」
「え、でも……」
「えぇい、いいからそなたはとにかく頷いておけ!」
「は、はい!」
「孔弌、もう悲しまないで。ずっと一緒にいるから」
「ありがとう、晩霞」
「私は、元よりしっかりとあなたの事を見極めてから僕となりました。もちろん、これからも仕えさせていただきます孔弌さん」
「うん、よろしくリエラ!」
「……孔弌」
「涼夜……」
それまで部屋の隅にいた涼夜が話しかけてくる。
「今朝もいった通りだ、俺は何があろうとお前と共にいる。
それにお前は俺達の心を縛っていたことに涙してくれた。お前を信じる理由はそれだけで十分だ」
「僕を認めてくれるんだね、涼夜……」
「あぁ、もちろんだ孔弌。それと今朝お前にした質問を覚えているか?」
「うん」
「あの言葉の通りだ。ここにいる全員が自分の宿命を乗越えた。そしてそうなったのはひとえにお前の心があったからだ。自分の意思は信じるんだろ?」
自分の、意思……。
「うん、偽りの心じゃなくて、本心からみんなに慕ってもらえてるんだって言い張れるような主になる!」
「あぁ、その意気だ。これからも頼むぞ」
パシンとタッチを交わす。
涼夜、ありがと……。




