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 22話 ○ートぷらすハート。

「あはははは!知らなかったか、王竜?お前らみたいな度を超えた化け物が人間と契約を結ぶ時制限を受ける。そうじゃないと契約する人間が膨大な魔力に耐えられないからだ!!」


「な、なんだと・・・。」


バカみたいに笑う眼帯の盗賊と愕然とする王竜ルビア。


小さくなったその姿にかつつての威厳も圧力もすでになかった。


何よりもそう、自分の中に力を一切感じられなかった。


状況を打開する為に頭を廻らせるが絶望に近い考えしか出てこない。


敵の狙いを見誤り選択を間違えた。

人質を取られようと自分の絶対優位は動かない、そのおごりがこの状況を招いてしまった。


「くそっ!」


思わず声に出た。


とわはというと状況についていけず、言葉を失っていた。


いや、状況は分かっている。

どうしようもない事が分かっているからこそ言葉を失ってしまう。


「とわくん!ティウを連れて逃げて。」


悲痛に叫ぶエルクの声に茫然自失状態のままにとわはティウを見る。


「いいぜ。約束だからな。逃げられるなら逃げてみな。」


眼帯の盗賊は笑いながら掴んでいたティウを地面に落とす。


とわはルビアをチラリと見る。

自分の頭程の高さで飛ぶルビアが頷くのを確認して走りだした。


やるしかない。


とわの武器は木刀、それでも相手は人間で、人質だったティウは手を離れた。


もしかしたら、そんな希望はまだあった。



「フレア!」


とわのてに生まれた炎が小さい九つの矢となり飛ぶ、眼帯の盗賊を囲むように飛んだ炎の矢は男の剣の一振りで全てが消えた。


「燃え尽きろ!!」


眼帯の男の目の前でルビアが全力で炎を吐く。


炎はただ男の手に触れただけでその力を失った。


「うっあーーっ!!」


男に向けて木刀を振り下ろすとわ。


「っ!ダメだ!とわ!!」


ルビアの叫びは遅く、とわの体に横に剣の道が走る。


遅れて舞い飛ぶ血。


とわの膝が地面に落ちる。


「とわ!!」


「とわくん!!?」


「いやーーっ!!」


今までに感じた事のない痛みと傷口の熱さ、とわは自分が死ぬだろうと悟る。


急激に静かになっていく頭の中、一部分だけが熱を持つ。


とわは顔を上げて周りを見る。


心配そうに涙を流すルビアとエルク、泣きわめくティウ。


死ぬならそれはもう構わない。


とわはゆっくりと立ち上がる。


発動させた魔法が傷口を焼いていく。


「なんだ。まだ立てるかよ。お前は前座なんだぜ。俺は王竜を殺して英雄の力を手に入れる!!あはははは!」


「ふざけるな。」


死ぬのは構わない。


ならせめて守る。


この命全てを燃やしてでも。


「・・・とわ?」


とわを見つめていたルビアの目が大きく開く。

口元に浮かんだのは恐怖、だった。


そうだ、と思い出す。


この圧力はとわとルビアが出会った時に感じたもの。


とわは強く拳を握る。


「燃え、つきろ!」


小さく自分に対して呟く。


「とわ!!」


♬♪♪♪♩


「?」


ルビアの叫びと重なった謎の音。


まるでレベルアップの音みたいだとぼんやりした頭でとわは感じた。


そして、音の出所はとわが後ろポッケに入れてるスマートフォンだった。


『スキルプラスハートの使用条件を満たしました。チュートリアルを開始しますか?』


携帯から淡淡とした声が告げてくる。


・・・思わず誰もが止まった。


「えっ、何?」


『とわっち遅い。』


『はい!残念時間切れ!!一方的にチュートリアルをはじめるよ!!』


「えっ!?だから!何!?」


淡淡とした声に続くテンションの高い声に、思わず空気を乱されるとわ。


『プラスハートとは、絆を結んだ相手との特殊融合能力。』


『そ!今回はルビアとの契約で使用条件を満たしたんだよ!!あの!王竜の力が君のモノに!!さぁ、プラスハート起動!!』


「はっ!!?嘘だろ!?」


謎の声に一番驚いたのは眼帯の男だった。


慌ててとわに向けて斬りかかる。


それをバックステップでかわすとわ。


「ルビア!!」


伸ばした手を中心にピンク色の魔方陣に似たものが現れる。


「えっ!?えっ!?」


驚いているのはとわだ。

自分では回避動作も取っていないしルビアを呼んで手を伸ばしたりもしていないんだから。


見ればルビアにも自分と同じ紋章が現れていた。


伸ばした手の紋章とルビアの紋章が重なる。


とわとルビアの体を包む光。


「やらせるかっ!!」


再度剣を振り下ろす眼帯。

とわは恐怖から目を閉じそうになるが、自分の意志に反応しない身体は眼帯の男から目を離さない。


とわの視界が炎に包まれた。


突然発生した炎の渦が眼帯の男を弾き飛ばす。


炎の中でとわの口がニヤリと笑う。



とわは、残念な事に理解した。


炎の渦がゆっくりと薄くなっていく中で自分の体がキメポーズのような変な体勢で待機しているのを。

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