『そして』
「お前はさ、この戦争が終わったらどうすんだ?」
焚き火より明るい黄金色の髪の少年が、正面に腰かける同じ歳くらいの少年に問いかける。
「……先のことは考えていない。俺は魔族を滅ぼすためだけに生きてきた。それが終われば何もなくなる」
自分の太ももを枕代わりに眠る少女。彼らの頭上に広がる夜空と同じ色のその髪を優しく撫でる。そこで初めて彼は笑みを見せた。
「あん時から全っ然変わんねえな。まあ、そーいうとこがらしいよ」
混じりっけのない笑顔で仲間のことを語る少年と、髪色まで対照的な無愛想な少年。彼らは今、同じ火を前に未来の話をしていた。
人族と魔族の戦争の最前線に立つ者たちが、この3人の子どもだった。
大人たちが弱いのではない。強いて言えば、彼らは選ばれたのだ。戦わざるを得ない運命と言うものに。
ならばこちらが正しいのかもしれない。彼らは、選ばれてしまったのだ……と。
「家族を置いてここにいるオレが言うのも何だが……、最期を決めてても、アリスのことをもっと大事にしてやった方が良いと思うぜ? 一緒にいる時間てのをよ」
〈天眼の剣聖〉――クトラ=サラマンディアはお節介と理解しながらも思いを伝えた。いつもの彼には似つかわしくない真面目な表情で。が、すぐに照れくさくなって頭をわしゃわしゃと掻く。
「逆に聞かせてもらわないとな。クトラこそどうするんだ、この戦争が終わったら。きみのことだ、もう考えてあるんだろ?」
彼の心境を知ってか知らずか、苦笑を浮かべて問い返した。
「ん? そりゃあ、もちろん。オレはさ――」
死を覚悟しながら、それでも彼は未来を見据えていた。
後に英雄と呼ばれる少年――クトラ=サラマンディアはこの話をした翌日、魔王と戦い……死んだ。
皮肉な話だ。未来を語れなかった側が生き残ってしまったのだから。
そして――あれから2年の月日が流れ、少年は相棒と共に桃色の花弁が舞う光景を見ていた。
かつて友が語った夢を知るために、〈隻眼の銀狼〉――カムイ・スメラギは学園の門を叩くのだった……。




